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#音楽 記事まとめ

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楽曲のレビューやおすすめのミュージシャン、音楽業界の考察など、音楽にまつわる記事をまとめていきます。
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2023年8月の記事一覧

エドマール・カスタネーダが弾くハープは、ハープを遥かに超えていた

アイリッシュハープの演奏とレッスンをしているKIKIです。 先日4年ぶりに来日した、ニューヨークで活躍するコロンビア出身のハープ奏者、エドマール・カスタネーダを聴きに、Blue Note Tokyoへ行って参りました。 彼のマジックのような演奏にはいつも圧倒されていて、来日の折には足を運んでいます。 エドマールは毎回違う共演者を連れて来てくれるので、どんな楽器との対話になるのかがいつも楽しみです。今回はトロンボーン、ドラムとのトリオでの来日公演でした。 エドマールがライブ

『感覚は道標』セルフライナーノーツ

happy turn くるりオリジナル・メンバーの3人には、1990年代オルタナティヴ・ロック以外にも、音楽的に共通する参照点が幾つかある。 くるり結成前後は、3人とも古典R&Bやブルース、ファンクなんかを好んで聴いたり、演奏していた。 もっと若い頃には、1980年代ポップの影響も受けていただろうし、ビートルズやフー、ローリング・ストーンズをはじめとする1960年代ブリティッシュ・ロックは3人共通の大きなリファレンスである。 くるりはそもそもシンプルなロック・トリオな

90年代を駆け抜けた、日本発グランジロック・バンドの秘話。ペリカンキング(PELICAN KING)、河崎雅光へのインタビュー。

ペリカンキング(PELICAN KING)は1994年に、ヴォーカル/ギターの河崎剛士、 ベースの河崎雅光、ドラムスの古川哲矢によって結成されたロックバンドです。グランジを彷彿とさせる重くノイジーなロックサウンド、美しいメロディー、そして切なさや焦燥感が漂う日本語詩が魅力。そんな彼らが1998年〜2001年にかけてミディからリリースした作品が、各配信プラットフォームにて一挙解禁となりました。そこで、今回はそのベーシスト、河崎雅光氏にインタビューを行い、その活動の軌跡を振り返っ

BUDDHA BRAND『人間発電所~プロローグ』(1996)

アルバム情報アーティスト: BUDDHA BRAND リリース日: 1996/5/22 レーベル: Cutting Edge(日本) 「50年の邦楽ベスト100」における順位は73位でした。 メンバーの感想The End End  まずサウンドに対する感想から。  ローが気合の入った太さで、嬉しい。タイムストレッチしたギターのデジタルな揺らぎも遂に登場してくれて、嬉しい。デジタルディレイに恐らくリバーブなどの”馴染ませる”手間が加わっていなくて、声がそのまま複製されたよう

Jeff Rosenstockインタビュー

KKV Neighborhood #181 Interview - 2023.08.25 インタビュー、構成:与田太郎 ジェフ・ローゼンストックの新作『HELLMODE』がまもなく発売となる。90年代中旬から2000年初頭にかけてティーンネイジャーだった彼はUSインディーが大きく花開き、同時にグランジ、オルタナティブがメイン・ストリームになった時代にバンドを始めている。その後も華やかなシーンを目指すというよりはもっとローカルでアンダーグラウンドな、よりDIY色の強いスカやパ

書籍紹介『東欧グルーヴ・ディスクガイド』(音源付き)

 この度、DU BOOKSから初の自著『東欧グルーヴ・ディスクガイド 革命前夜の音を求めて』を刊行することとなりました。多くの反響をいただいた一方、「東欧グルーヴ」って何?という方や、新しい情報あるの?という既に知り尽くしているマニアの方もいるかと思います。  今回、本を買おうか迷っている方のために、内容を紹介すべく記事を書いてみました。 商品ページはこちら。 ちなみに、ディスクユニオンの店舗かオンラインで購入すると、 特典のMIX CDと別冊ディスクガイドがもらえます。

Death Gripsについて

Zach Hill、MC Ride、Andy Morinの3人によって2010年にアメリカはカリフォルニアのサクラメントにて活動を開始させたDeath Gripsは、ヒップホップとパンクを主軸に様々なジャンルの要素を乱雑に繋ぎ合わせ、人間の本質的な破壊衝動を呼び覚ますカオティックでサイケデリックな作品を発表し、熱狂的なファンを生み出し続けている。 2011年4月に自主リリースされたMixtape『Exmilitary』は瞬く間に広がり、2012年4月にメジャーレーベルである

大滝詠一『暑さのせい EP』全曲解説

2023年8月30日に8cmシングル『暑さのせい EP』が発売された。 「暑さのせい」がポカリスエットのCMソングになったことと、8cm短冊シングルが35周年を迎え「幸せな結末」の8cmシングルが2023リマスターで再発されたことなどがあり、今回の『暑さのせい EP』の発売につながったと思われる。 SpotifyやApple Musicなど各種サブスクリプションサービスでも配信されている。 本記事では8曲9トラックのバージョン違いについて解説する。楽曲そのものの音楽的な

「"Resistance & The Blessing"のイメージ、その宇宙的断片」Text by Y.D (夢中夢)

world’s end girlfriend "Resistance & The Blessing" (Release:2023/09/09) LP/CD/DL  https://virginbabylonrecords.bandcamp.com/album/resistance-the-blessing Spotify/AppleMusic/Streams  https://linkco.re/rAz8g4Cv 「"Resistance & The Blessing"

藤井風のWORKIN'HARDでちょっと泣いた

 いきなりだが、正直に告白する。藤井風に対し少しだけ行き詰まりを感じていた。もっと言えば若干飽きてきていた。  デビューアルバム「HELP EVER HURT NEVER」から「Grace」まで、破格の才能をまざまざと見せつける楽曲と歌唱力、演奏力。さらにMVでの演技力やライブパフォーマンスも含めた総合的な表現力、どれをとっても異次元なのに。 スピッてない曲が聴きたい! 藤井風の既発曲は、サウンドのバリエーションは多彩だがメッセージは一貫していた。どれも煩悩や執着との闘い

マンブルラップとは何か

近年のヒップホップでよく使われる言葉「マンブルラップ」について書きました。記事で触れた曲を中心に収録したプレイリストも制作したので、あわせて是非。 マンブルラップへの悪感情今年のヒップホップにおける話題作の一つに、Lil Uzi Vertのアルバム「Pink Tape」が挙げられる。2010年代半ば頃にDJ Drama周辺から登場して頭角を現していったLil Uzi Vertは、フィリー出身ながらThe RootsやState Propertyといったブーンバップ寄りのスタ

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「籠り」は終わり、外へ跳び

1ヶ月半ぶりくらいのnote。 この間、色んなインプットとアウトプットを繰り返した。最近になってそろそろ、今感じていることを書いてもいいかなと感じ始めた。多分今日は、この1ヶ月半で知り得た知識の話と、それに伴う自分の感想、今後の展望みたいなことを語ることになるだろう。 それでは。 アーティストが集まる場を作って前回(と言っても1ヶ月半も前のことだけど)のnoteで、銀座にある「アロフト東京銀座」のライブプロデュースを本格的に始めると書いた。 毎週金曜日(7月は土曜日だ

【Eras Tour予習用】 曲の内容をざっくり紹介

2024年2月に開催されるテイラー・スウィフトのEras Tour来日公演に参戦される方向けに、セットリストに含まれる曲の歌詞の内容をざっくりと紹介してみます。 この記事は「テイラーの曲は好きだけど歌詞の内容までは知らない」「有名曲なら知っているけど知らない曲も結構ある」という方に向けたものです。 テイラーのソングライターとしての真髄は歌詞にあるといって差し支えないでしょう。ライブでの演出も歌詞の内容に合わせたものになっているので、なんとなくでも知っておけたらきっと更にラ

八ヶ岳 標高1300mでレコーディングするということ

 この記事は、ぼくが2016年にプロデュースしたフルート奏者・木ノ脇道元さんとサックス奏者・大城正司さんのハイレゾ収録アルバムについて、管楽器専門誌『パイパーズ』2017年7月号にご掲載いただいた記事原稿をもとにほんの少し改稿したものを、『パイパーズ』編集長・佐藤拓さまのお許しを得て公開するものです。とてもマニアックでしかも奥深い管楽器音楽文化を開拓してこられた雑誌『パイパーズ』も2023年4月号で残念ながら休刊となりました。おおくの管楽器奏者のアルバムプロデュースを手がけて