ドラマ『新宿野戦病院』にハマってました
『新宿野戦病院』
そのドラマは、去年の9月に最終回がオンエアされた。
録画した番組は、見終わったあといつも削除してるのに、これは削除したくない、と残してしまった。HDDの残量が少なくなり、未来の自分が困るとわかっていて。
宮藤官九郎作品。
ドラマが好きな人なら、
この7文字を見ただけで「あっ、これ見よう」となるはず。
久しぶりにドラマに「ハマった」。そのハマり度合いが、自分でもすごいとわかっていた。ドラマの放送が終わったあと、そのドラマの本を購入したのなんて初めてのこと。つまり、ドラマの脚本。
脚本を読んで、あのシーンこうだったな、と脳内再生するのはけっこう楽しいということがわかった。
まだドラマを見ていない方のためにちょっと説明すると。
舞台は新宿歌舞伎町。街の中にある病院「聖まごころ病院」は、病院の看板の「外科医」にだけ線が引いてある。
医師も看護師も少々クセのある、個性的な人ばかり。
あまり儲けにならない患者も断らずに診ているせいか、存続が危ぶまれている。
救急車で搬送されてくるのは、ケンカして殴られ、頭から出血した人、心を病んでいる若者など、歌舞伎町の現実を反映している。
クドカンさんの描くドラマの世界の現実は、本物の「現実」の延長線上にある。見ていると、これは以前ニュースで見た、あの件についてだな、とわかる。
シナリオ本に書かれていたけど、このドラマのテーマは「平等」
お金がある人、ない人、日本人と外国人、生活保護が必要な人、ホームレス、ホスト、パパ活する女性など、登場人物の一人ひとりに背景がある。
幸せになる権利は誰にでもある。言葉だけを聞くと、世の中、そうであってほしいし、その一方で、そんなの現実的にあり得ないとも思う。一人ひとり少しでも差をなくして、「平等に」なんて、本当にできることなのか。
笑えるシーンは、ドラマというよりコントを見ている感覚に近かった。
命に関することで笑いをとる。これが成立しているシーンは何回もあった。「生と死」にかかわることでおもしろいって、そう簡単にできることではない。
笑わせるだけじゃない。見終わったあと、もやっとしたものが残り、考えさせられる回もあった。
軍医で、アメリカで生まれ育ち、日本人よりはっきりと自己主張するドクター、ヨウコ・ニシ・フリーマン。
演じているのは小池栄子さんで、この役、岡山弁と英語を話すという変わった設定。どちらかひとつだけでも大変なのに。
このドラマ、主人公はヨウコだけではないと思う。
もう一人の主人公は、高峰亨。経済的には何の不自由もない家に生まれた。ポルシェを持っていることが自慢。
第1話では、患者の血を見るのも苦手だった。医師免許持っているのに血が苦手なのは、亨が美容皮膚科医で、外科医のように切ったり縫ったりしないから、らしい。
でも、ヨウコが聖まごころ病院に来たことによって、亨は影響を受け、変わっていく。
運が悪ければ自分も死ぬかもしれない過酷な環境で、ヨウコは医師としての経験を積んでいた。そのせいか、病院に患者が運ばれてくると、治療すべきところがどこなのかを瞬時に判断する。
ヨウコの目を通して見えてくる、日本の病院や繁華街、家庭環境の良くない未成年の少女を取り巻く、不公平で理不尽で、時にやるせない現実。
でも、ドラマを見終わったあと、決して暗い気持ちだけにはならなかった。
病院が舞台のドラマでおもしろくて、しかも考えさせるドラマって、なかなかないと思う。まだ見てない人には、ぜひ見てほしい。