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66回目 "Midnight's Children" を読む(第18回)。もう一押し「芸術といえる小説」とは何かについて考えます。

まだ読了とは言えないものの、終わりが近づいてきてこの小説の全体像、その評価に関心が向いてきます。前回の投稿において「芸術と言える小説」という時それが何を指しているのか、それが取り上げる話題の重さではとまでは書いたのですが、その続きです。


1. この小説の読み方を解説するかのような小論を読む。

ラッキーなことに ”Midnight's Children -- Salman Rushdie | Kinnu" と題されたこの小説の「サマリーと読みどころのアドバイス」と言える記事が見つかりました。Mumbi Mwewa 氏の文章です。今の私に持って来いの小論であったので取り上げてみます。原文はここにあります。

この小論は、次の通り 見出しが 11 項目、各項目の文章が 10 行前後でなる簡潔なものです。加えてこの小論には、この小説・インドの文化の一部を象徴する見事な写真が大きなスペースをとって配置されています。写真だけでも一見の価値があると思います。

The novel's importance
Key themes
Historical context
Intellectual and cultural context
Plot
Narrative structure
Key characters
Literary devices
Symbolism
Critical readings
Influence

ここに Key themes と題された文章の一部を取り上げてみます。

[原文] One of the most significant themes in *Midnight's Children* is the matter of identity. Rushdie navigates questions of both individual and national identity, inextricably linking Saleem's sense of self with the larger story of India's independence.
Consequently, the novel raises questions about how we understand and interact with our own history, and the extent to which one's environment shapes one's sense of self.
[和訳] 「真夜中の子供たち」における重要な主題の一つはアイデンティティ(個人ないし国それぞれの固有性)の問題です。ラシュディは個人のものと国家のもの、その両方に関する議論に読者を誘い込みます。この議論にあってラシュディーはサリームの自己分析をインドの独立というもっと大きな物語に複雑に絡み合わせます。
  結論を述べるならば、この小説は自分たちの歴史をどう理解し、その歴史に私たちはどう反応するのか、影響されるのかという問題を問いかけるのです。更に人々が置かれた周囲環境がその人々それぞれをどのような人間に作り上げるのかに当りどこまで影響を及ぼすのかという問題をも問いかけるのです。

上に取り上げた「主題」なんかを考えてみると、芸術であるために必要な中身の重さが少しは具体性をもって頭に浮かぶようです。この小論の全体を読むと、この小説はこのような角度からこう理解するのだなという具合に、この小説の理解を深めることができます。

自分では気付かなかった観点が幾つもある訳ではないものの、それらを文章にして表すにはこのような英文を書かねばならないのだなとため息がでました。


2. Study Notes の無償公開

"Midnight's Children (40th Anniversary Edition, a Vintage Classics paperback)" の Episode 'A wedding' (Pages 565 - 588) に対応する私の Study Notes を公開します。いつも通り、A-4 用紙に両面印刷すると A-5 サイズの冊子ができるように調整しています。

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