Study.com のサイト、Joseph Conrad の Lesson に次の一文を見つけました。
この文章を頭に入れてこのノベッラ、あるいは本投稿の記事に取り上げた同ノベッラからの引用箇所を読むと、コンラッドがこの作品で描こうとしていることの核心部分を認識し易くなります。すなわち、この作品が読み易くなります。
前回の記事(120回目投稿)において読んだのは、Jukes が友人に宛てた手紙に書きつけた船長の決断とそれに満足した苦力たちの 「めでたしめでたし」の後日談でした。
しかしその手紙において Jukes は、自身が生き残りはできないと諦め、ほとんど気を失う事態にまで陥ったこと、船長の揺り起こしと励ましで何とか気力を取り戻したことには触れていません。今回の投稿、追加回 と題した記事に於いて、このような生死の境にあった時の様子が描かれている部分 Chapter IV, pages 40 & 44 を読み直すことにします。
この記事で取り上げ示す文章がかなり長くなりますが、内容がおもしろいので、途中で終了できずこのようになりました。ご容赦ください。
1. 嵐の中での船員たちの「あきらめ」と、「あきらめ」への抵抗。
船と共に海に命を終えると覚悟したジュークスは、意識を失う寸前にまで衰弱します。迫りくる死を避けるすべがないと受け入れたジュークスの頭には、一瞬の間に過ぎ去ったものの、子供の頃の、父、そして母の姿が浮かび上がるのでした。そんなジュークスを胸に抱え上げ揺り起こしたのが船長のマクファアでした。
Jukes が Captain MacWhirr に揺り起こされ生気を取り戻しつつあったのですが、その一方、この二人とは別の場所の状況が次の引用部分です。船橋の下の通路部分、ここは海水の塊の直撃からは護られた、シェルターのような場所です。
2. 庶務担当船員の目の前に展開した中国人苦力たちの悲惨な戦い。
明かり(電球)を取りに行くと決心した彼はマンホールを手探りで開き転落するように石炭留置庫に転がり落ちます。そこも真っ暗闇の空間です。海のざわめき、海水が船体を叩き付ける音、台風の風が作る音、揺れに応じて船室内を転がり移動する様々な鉄や木材の破片におののき乍らも石炭留置庫と下層船室を隔てる鉄の扉のかんぬきを外すことに成功します。
3. 操舵室には二等船員が一人。正気とは思えない言葉を発します。
このような悲惨な状況を目にした庶務担当船員 boatswain は、この様を何としても船長に伝えねばと、船長がいるであろう船橋に向かいます。
操舵室に1人でいたこの二等船員が、このノベッラの終わり部分で、船長に解雇を言い渡され一人で先に下船さされることになる男です。
4. Study Notes の無償公開
今回の再読対象は Chapter IV の一部分でした。この部分に対応するStudy Notes は118 回目 "Typhoon" を読む Part 5 と題した記事に公開済みです。
今回の一部再読に合わせて当該 Study Notes の内容に見つかった誤りの訂正(訂正部は明示、 pages 16, 22に各一か所)と少々の文章加筆を行いました。