見出し画像

121回目 "Typhoon" by Joseph Conrad を読む(Part 8 追加回)。船の甲板上を大量の海水が暴れまわる中、堅固な突起に掴まり耐える船員たちの様子を読み直す。

Study.com のサイト、Joseph Conrad の Lesson に次の一文を見つけました。

The characters of Joseph Conrad's work often struggle with good vs. evil, disillusionment, and despair - the great majority meeting death by their own hand or those of others. 
[和訳] ヨセフ・コンラッドの作品の登場人物はその多くが善と悪、幻覚・認識の誤り、あるいは悲嘆・あきらめとの間の綱引きに苦しみます(二つの選択肢を前に決断を迫られるとの意味か)。登場人物の多くが自分の手で、さもなくば自分以外(の者とは限らないもの)の手で命を落とします。

Lesson on Joseph Conrad, at Study.com

この文章を頭に入れてこのノベッラ、あるいは本投稿の記事に取り上げた同ノベッラからの引用箇所を読むと、コンラッドがこの作品で描こうとしていることの核心部分を認識し易くなります。すなわち、この作品が読み易くなります。



前回の記事(120回目投稿)において読んだのは、Jukes が友人に宛てた手紙に書きつけた船長の決断とそれに満足した苦力たちの 「めでたしめでたし」の後日談でした。

しかしその手紙において Jukes は、自身が生き残りはできないと諦め、ほとんど気を失う事態にまで陥ったこと、船長の揺り起こしと励ましで何とか気力を取り戻したことには触れていません。今回の投稿、追加回 と題した記事に於いて、このような生死の境にあった時の様子が描かれている部分 Chapter IV, pages 40 & 44 を読み直すことにします。

この記事で取り上げ示す文章がかなり長くなりますが、内容がおもしろいので、途中で終了できずこのようになりました。ご容赦ください。



1. 嵐の中での船員たちの「あきらめ」と、「あきらめ」への抵抗。

船と共に海に命を終えると覚悟したジュークスは、意識を失う寸前にまで衰弱します。迫りくる死を避けるすべがないと受け入れたジュークスの頭には、一瞬の間に過ぎ去ったものの、子供の頃の、父、そして母の姿が浮かび上がるのでした。そんなジュークスを胸に抱え上げ揺り起こしたのが船長のマクファアでした。

[原文 1-1] "Jukes! Mr. Jukes, I say!"
  He had to answer that voice that would not be silenced. He answered in the customary manner: "… Yes, sir."
  And directly, his heart, corrupted by the storm that breeds a craving for peace, rebelled against the tyranny of training and command.
  Captain MacWhirr had his mate's head fixed firm in the crook of his elbow, and pressed it to his yelling lips mysteriously. Sometimes Jukes would break in, admonishing hastily: "Look out, sir!" or Captain MacWhirr would bawl an earnest exhortation to "Hold hard, there!" and the whole black universe seemed to reel together with the ship. They paused. She floated yet. And Captain MacWhirr would resume, his shouts. "… . Says … whole lot … fetched away. … Ought to see … what's the matter."
[和訳 1-1] 「ジュークス。ジュークス君。私だぞ、返事しろ!」
  彼(ジュークス)、この声には返事を返すしかありません。返事するまで呼掛けは終わりそうにないのですから。そのように攻め立てられたかれはお決まりの言葉を返しました。「はい、船長。」
  苦しみの終焉の速やかならんことを願う声を誘い出す嵐に打ちのめされていた彼、ジュークスだったのですが、そんな彼の気力が、この直後、試練と命令ばかりを発するこの専制者に向けた反攻を開始しました。
  マクファア船長は自身の部下である彼、この船員の頭を自分の腕でしっかりと支えて、大声を上げている自分の口元に引き寄せます。神秘的な光景です。ジュークスは直ぐにも船長の心配を無用だと伝えたいのです。「良く見ていてください、船長!」と船長の言葉に割り入るように声を出します。船長も大声で心からの励ましを返します。「しっかりしろ、ここのところは、頑張るのだぞ!」 真っ暗な世界が船もろとも一体となって回転したかと思えました。二人は一瞬言葉を停止しました。回転したと思えた船ですが、まだ浮かんでいたのでした。助かったのです。マクファア船長は、すぐさま大声での呼びかけを再開しました。「・・・誰かが言っている。何もかも全てのものが海に持って行かれたと。・・・見回りして確認だ。被害の内容を把握せねばならんのだ!」

Lines between line 38 on page 39 and line 10
on page 40, "Typhoon", the attachment pdf file

Jukes が Captain MacWhirr に揺り起こされ生気を取り戻しつつあったのですが、その一方、この二人とは別の場所の状況が次の引用部分です。船橋の下の通路部分、ここは海水の塊の直撃からは護られた、シェルターのような場所です。

[原文 1-2] Directly the full force of the hurricane had struck the ship, every part of her deck became untenable; and the sailors, dazed and dismayed, took shelter in the port alleyway under the bridge. It had a door aft, which they shut; it was very black, cold, and dismal. At each heavy fling of the ship they would groan all together in the dark, and tons of water could be heard scuttling about as if trying to get at them from above. The boatswain had been keeping up a gruff talk, but a more unreasonable lot of men, he said afterwards, he had never been with. They were snug enough there, out of harm's way, and not wanted to do anything, either; and yet they did nothing but grumble and complain peevishly like so many sick kids. Finally, one of them said that if there had been at least some light to see each other's nose by, it wouldn't be so bad. It was making him crazy, he declared, to lie there in the dark waiting for the blamed hooker to sink.
[和訳 1-2] このハリケーンの有りっ丈の力がこの船を打ち付けました。甲板上の全ての物、設備装置は持ち堪えられなくなりました。船員たちは船橋の下の部分、船の左側通路に避難しているも心を動転させ混乱状態に落ち入っていました。そこの後方の壁にあった唯一のドアですがそれは閉じられていました。周りは真っ暗で冷たく、惨めな空気が充満しています。船が大きく揺れ動く度に全員が真っ暗な場所で声を揃えてうめき声を上げました。すごい量の海水がこの場所の周囲を駆け回り発する音が鳴り響いています。この海水は、ここに居る人間を頭から包み込もうとしているようです。庶務担当船員は不機嫌ながらも声を上げ続けていました。彼が後日に語ったところによると、彼に経験したことが無い程に酷い、理屈に合わないことを言う一団の連中に向かい寝込んでしまわない様に声を掛け続けたのでした。船員たちはこの避難所に居る限り身の安全は保てました。そんな訳で彼らは如何なる作業もそれに取り組むのを嫌がりました。それでも体調を壊した子供のごとく不平を漏らしぐずぐず悲しむことだけは止めません。そうこうしている内に一人の男がたとえ少しでも明かりがあれば、お互いの顔・鼻ぐらいは見えて、気持ちが和むだろうなと言い出しました。彼は声を大にして、この場に真っ暗な中で横になったままで、この惨めな船の沈むのを待っているのでは気が狂ってしまうと宣言したのです。

Lines between line 11 and line 24 on
page 40, "Typhoon", the attachment pdf file

[原文 1-3] "Why don't you step outside, then, and be done with it at once?" the boatswain turned on him.
  This called up a shout of execration. The boatswain found himself overwhelmed with reproaches of all sorts. They seemed to take it ill that a lamp was not instantly created for them out of nothing. They would whine after a light to get drowned by--anyhow! And though the unreason of their revilings was patent--since no one could hope to reach the lamp-room, which was forward--he became greatly distressed. He did not think it was decent of them to be nagging at him like this. He told them so, and was met by general contumely. He sought refuge, therefore, in an embittered silence. At the same time their grumbling and sighing and muttering worried him greatly, but by-and-by it occurred to him that there were six globe lamps hung in the 'tween-deck, and that there could be no harm in depriving the coolies of one of them.
[和訳 1-3] 「そこまで言うなら、外に出たらどうだよ。ジッと待たなくとも直ぐに死ぬことはできるぞ。」と庶務担当船員が言い返しました。
  この言葉が、しかし、批判の叫びを呼び起こしました。庶務担当船員は様々な非難の言葉に圧倒されることになりました。船員たちは電灯の一つ位を直ぐに用意できないのは船側の責任問題だと感じたようでした。どんな理屈かは不明ながら、海に飲まれて命を落とすというのだから明かり位は在ってしかるべきだと泣き叫びました。彼らの不満申し立ての不合理なことは明らかでした。なぜなら、ランプを入手するにしても、それがある物置部屋はこの船の船首近くにあって、誰に行かそうとそこまでは行けると思えないのでした。庶務担当船員は非常に悩むことになりました。彼はそんな役目を自分に押し付けようとする行為そのものが理屈に合わないと思いました。それでも自分をなじるような言葉を投げつけられたのでした。とうとう彼は腹を立て、黙り込むことにしたものの、その場から逃げ出すことを考え始めました。その一方、船員たちの不満の声、ため息、独り言を前にして心の奥では彼らの心情に心苦しさも感じていました。やがていろいろ考えを巡らせている時にあることに気付きました。倉庫兼用の船室には6台ばかりの電灯のがぶら下がっていることを思い出したのです。そこから一台位なら持ち出しても、苦力たちは我慢できるだろうと判断しました。

Lines between line 25 and line 38 on
page 40, "Typhoon", the attachment pdf file

[原文 1-4] The Nan-Shan had an athwartship coal-bunker, which, being at times used as cargo space, communicated by an iron door with, the fore 'tween deck. It was empty then, and its manhole was the foremost one in the alleyway. The boatswain could get in, therefore, without coming out on deck at all; but to his great surprise he found he could induce no one to help him in taking off the manhole cover. He groped for it all the same, but one of the crew lying in his way refused to budge.
  "Why, I only want to get you that blamed light you are crying for," he expostulated, almost pitifully.
  Somebody told him to go and put his head in a bag. He regretted he could not recognize the voice, and that it was too dark to see, otherwise, as he said, he would have put a head on that son of a sea-cook, anyway, sink or swim. Nevertheless, he had made up his mind to show them he could get a light, if he were to die for it.
[和訳 1-4] ナンシャン丸には船体を横切る方向に延びる石炭貯留庫が設置されていました。この貯留庫は必要時には貨物置場にも転用できるように鋼鉄製のドアを経て船前方の下層船室と繋がっていました。この航海にあっては石炭貯留庫は空でした。この石炭貯留庫の天井部にあるマンホールが丁度(船員たちが避難し寄り集まっていた)甲板階の通路に位置していました。すなわち、この庶務担当船員は(目指す下層船室に)後方甲板に出る危険を全く冒さずして行き着けるのです。それなのに驚いたことにマンホールの蓋を引きあける作業を手伝おうという船員が一人もいません。彼は手探りでこの蓋の方に移動し始めたところ、進路を阻む位置に居た船員が場所を譲るのを拒否したのです。
  「何をバカな。皆が欲しがる明かりを取りに行くというのに。」と、彼はこのバカな男を憐れむかのごとき歎声を上げました。
  別の方向から誰かがそいつの頭に袋を被せてやれと彼に提案しました。しかし残念ながらその声の主がどの船員なのかは判りません。暗くてバカな船員の居場所も不明でした。庶務担当船員が後で言うに、そうでなければその声に従い、このくそったれ男の身体の上に載っている頭に袋を被せてやるところだったとのことです。袋に頭を突っ込んで海に沈む成り海に浮かぶ成り、どちらでもご随意にという訳です。そんな邪魔建てにもめげることなく、彼は、命の危険があるとも、明かりを取りに行って彼らにその勇気を見せつけてやるぞと決心を固めました。

Lines between line 39 on page 40 and line 12
on page 41, "Typhoon", the attachment pdf file


2. 庶務担当船員の目の前に展開した中国人苦力たちの悲惨な戦い。

明かり(電球)を取りに行くと決心した彼はマンホールを手探りで開き転落するように石炭留置庫に転がり落ちます。そこも真っ暗闇の空間です。海のざわめき、海水が船体を叩き付ける音、台風の風が作る音、揺れに応じて船室内を転がり移動する様々な鉄や木材の破片におののき乍らも石炭留置庫と下層船室を隔てる鉄の扉のかんぬきを外すことに成功します。

[原文 2-1] He pulled back the bolt: the heavy iron plate turned on its hinges; and it was as though he had opened the door to the sounds of the tempest. A gust of hoarse yelling met him: the air was still; and the rushing of water overhead was covered by a tumult of strangled, throaty shrieks that produced an effect of desperate confusion. He straddled he legs the whole width of the doorway and stretched his neck. And at first he perceived only what he had come to seek: six small yellow flames swinging violently on the great body of the dusk.
  It was stayed like the gallery of a mine, with a row of stanchions in the middle, and cross-beams overhead, penetrating into the gloom of the sides, a bulky mass with a slanting outline. The whole place glared: the ship lurched to starboard, and a great howl came from that mass that had the slant of fallen earth.
[和訳 2-1] 彼はかんぬきの鉄棒を外しました。重い鉄のドアが蝶番に支えられ回転します。彼には嵐が鳴り響かせる狂乱音を聞く為にドアを開いたとつい勘違いするほど、その音に圧倒されました。一瞬の巨大音、荒々しい叫び音が彼を迎えます。 空気は静止しています。頭の遥か上方を飛び越え跳ね廻る大量の海水が作り出したこの空間、そこには更に首を絞められ苦しみながら絞り出されるかすれ声の叫びが溢れる一大騒乱が覆い被さり、その騒乱は絶対絶命の危機に付きものの心的な混乱を引き起こしていました。彼はドアの開口部、その幅いっぱいに両足を広げ踏ん張るように立ち、他のことはともかく、まずは首を上方に精一杯引っぱり上げました。この為にここに来たのですから。6本の黄色い小さな明かりが点灯しているのを確認しました。それらのすべては巨大な黒色の胴体の上で、風に激しく揺り動かされています。
  この胴体は炭鉱の中に出来た大通路のようにどっしりと静止しています。その中程には幾つかの柱が並んでいます。これら柱の上には何本もの梁があるのですが、その両端部分までは通路の両サイドの壁に近い辺りが暗いために見ることはできません。この場は傾きがある周縁部でなる暗い胴体の集団です。周囲全体が鈍い光を出しました。船が右側に大きく傾きました。すると時を経ずしてこの土砂崩れ部のごとき傾斜面を持つこの暗い集合体から巨大な唸り音が発生しました。

Lines between line 15 and line and line 29 on
page 42, "Typhoon", the attachment pdf file

[原文 2-2] Pieces of wood whizzed past. Planks, he thought, inexpressibly startled, and flinging back his head. At his feet a man went sliding over, open-eyed, on his back, straining with uplifted arms for nothing: and another came bounding like a detached stone with his head between his legs and his hands clenched. His pigtail whipped in the air; he made a grab at the boatswain's legs, and from his opened hand a bright white disc rolled against the boatswain's foot. He recognized a silver dollar, and yelled at it with astonishment. With the precipitated sound of trampling and shuffling of bare feet, and with guttural cries, the mound of writhing bodies piled up to port detached itself from the ship's side and sliding, inert and struggling, shifted to starboard, with a dull, brutal thump. … …
[和訳 2-2] 木材の破片が近くを勢いよく掠め跳びました。分厚い板切れと彼には思えた、そんなものも突然近くに現れ言葉に尽くせない程驚かされ、首をすくませられました。次には足下を一人の男が横倒しにされて滑り過ぎました。背中を下に滑っていました。その両目は見開いていました。両腕を空中に差し伸べ何かしようとしていたものの無駄でした。もう一人の男が大きな石が転がり下るように上下に弾みながら通り過ぎました。両足の間に頭を差し入れ、更に両腕を添えて頭を護っていました。ピッグテイルに整理した髪の毛は鞭の皮ひものごとく宙に揺れていました。この男は庶務担当船員の脚に絡みつきました。自分の身体から1ドル銀貨が転げ落ちたのに気付いて驚くと同時にそれに向かって叫び声をあげました。沢山の重い足取りの音や素足が床を踏み叩く音、そして喉の奥深くから発する太い叫び音、これらが混ざり合ってなる騒めきの中、よじれて絡み合った何人もの身体の一団が船室の左側壁の縁から動き出すや、スピードを上げて反対側に滑って行きました。誰が力を加えたのでもないのに動き出したのです。彼らは苦しみもだえていたのですが、船室右側壁にぶつかるまで止まりません。酷く打ち付けられたであろう鈍い音が聞こえてきました。

Lines between line 30 and line 40 on
page 42, "Typhoon", the attachment pdf file


3. 操舵室には二等船員が一人。正気とは思えない言葉を発します。

このような悲惨な状況を目にした庶務担当船員 boatswain は、この様を何としても船長に伝えねばと、船長がいるであろう船橋に向かいます。

[原文 3-1] At first he thought he had left the alleyway in the very moment of her sinking. The bridge ladder had been washed away, but an enormous sea filling the after-deck floated him up. After that he had to lie on his stomach for some time, holding to a ring-bolt, getting his breath now and then, and swallowing salt water. He struggled farther on his hands and knees, too frightened and distracted to turn back. In this way he reached the after-part of the wheelhouse. In that comparatively sheltered spot he found the second mate.
  The boatswain was pleasantly surprised--his impression being that everybody on deck must have been washed away a long time ago. He asked eagerly where the Captain was.
[和訳 3-1] あの甲板上の通路部分を出発した当初、あの時点で、彼(庶務担当船員)は、いよいよこの船が海底に沈む時が来たのだと判断していました。船橋に昇る階段はもぎ取られなくなっていて昇れません。次には船の後方甲板に乗り上がってきた海水の量が巨大で、彼の身体を高みまで浮きあがらせました。ようやくにして腹ばいの姿勢になった彼は輪っか付いたボルトに、かなりの時間ジッと捕まっていました。この間、何度となく息が出来なくなって苦しみ海水も飲み込みました。その後には四つん這いになって苦しみに耐えました。恐怖感に襲われ、もと来た場所に戻るにも恐ろしすぎました。そうこうしている内に彼は謀らずも操舵室の後ろ側に辿り付きます。そこはごく狭いものの比較的海水の攻撃から護られた場所ですが、そんなところに一人で取り残されている二等船員に気付きました。
  この庶務担当船員にはうれしい驚きでした。それまでに彼が考えていたのは、デッキに居た船員たちはその全員が、ずっと早い時刻に海に持って行かれたことだろうと言うものだっただけに驚いたのです。彼はこの男に早速船長の居場所を知らないか期待で胸を一杯にして尋ねます。

Lines between line 14 and line 24 on page
43, "Typhoon", the attachment pdf file

操舵室に1人でいたこの二等船員が、このノベッラの終わり部分で、船長に解雇を言い渡され一人で先に下船さされることになる男です。

[原文 3-2] The second mate was lying low, like a malignant little animal under a hedge.
  "Captain? Gone overboard, after getting us into this mess." The mate, too, for all he knew or cared. Another fool. Didn't matter. Everybody was going by-and-by.
  The boatswain crawled out again into the strength of the wind; not because he much expected to find anybody, he said, but just to get away from "that man." He crawled out as outcasts go to face an inclement world. Hence his great joy at finding Jukes and the Captain. But what was going on in the 'tween-deck was to him a minor matter by that time. Besides, it was difficult to make yourself heard. But managed to convey the idea that the Chinaman had broken adrift together with their boxes, and that that he had come up on purpose to report this. As to the hands, they were all right. Then, appeased, he subsided on the deck in a sitting posture, hugging with his arms and legs the stand of the engine-room telegraph--an iron casting as thick as a post. When that went, why, he expected he would go, too. He gave no more thought to the coolies.
[和訳 3-2] この二等船員は床に全身を床に横たえていました。獲物に跳びかかる機会を狙って生垣の茂みに身を潜めている小動物のようでした。
  「船長だと? 海に持って行かれたよ。我々をこのような目に陥れたあげく、そのままにして。」この船員も狂ってしまったのです。彼、庶務担当船員の判定に依る限りでは狂っていたのです。彼の情報は棚上げです。船員の全員が一人、また一人とおかしくなっていくのでした。
  この庶務担当船員は甲板を這うようにしてこの場を後にし、強い風の中に出て行きました。誰かほかの人に回り逢えると思ったからではなく、只々『この男』から離れたかったのだと、後で彼は説明しました。仲間から締め出された男は厳しい環境の中にでも出て行くということわざ通りに、彼はこの場を離れたのでした。このような経緯があったからこそ、この庶務担当船員はジュークスと船長の二人を見つけた時には大変喜びました。この二人に合流した時点の彼にはあの下層船室の状況・動向は余り重要で無くなっていました。加えて、この天候状況の下では彼の話が十分に相手に聞き取れるとは言えないのでした。そんな中ながらも、彼は何とか中国人が船室で一定の場所に留まっておれず、定まった場所からは引きはがされ、私物入れの木箱と共に宙を舞っていること、彼自身はこの状況を伝えたくてここまでやって来たのだということだけは聞いてもらいました。この船の船員たちについては、問題はありませんと伝えると、彼は肩の荷を下ろせたと言わんばかりに甲板の床面に座り込み、その両腕と両脚は機関室の電報設備の支持台に絡ませて身体を休めました。この支持台は鋳鉄で作られていて郵便ポストの様でした。もしもその支持台までが海に持ちされれるのであれば、自分も一緒だろうなと覚悟していました。ここまでに至った時にあっては、あの苦力たちのこととなると、彼の頭からすっかり消え去っていました。  

Lines between line 25 on page 43 and line 2 on
page 44, "Typhoon", the attachment pdf file


4. Study Notes の無償公開

今回の再読対象は Chapter IV の一部分でした。この部分に対応するStudy Notes は118 回目 "Typhoon" を読む Part 5 と題した記事に公開済みです。

今回の一部再読に合わせて当該 Study Notes の内容に見つかった誤りの訂正(訂正部は明示、 pages 16, 22に各一か所)と少々の文章加筆を行いました。

この記事が参加している募集