マエカワはなぜ「跳ぶ」のか (前川 正雄)
(注:本稿は、2012年初投稿したものの再録です)
以前参加していたフォーラムの事務局から頂いた本です。フォーラムのコーディネータであった野中郁次郎氏が監修されています。
舞台は、ハイテク企業「マエカワ(前川製作所)」、著者は同社顧問の前川正雄氏です。
「独法」と名づけた少人数の自己完結ビジネスユニットの複合体経営で発展したマエカワですが、最近のプロジェクトの大型化に対応し、業界ごとの「一社化」に組織を変えました。とはいえ、幹となるユニークな経営スタイルは不変です。
マエカワでは米国流の分析的・論理的な企業経営に与しません。分析よりも、今いる「場」を俯瞰的に感得し、その中で不連続な変化を志向するのです。この「不連続性」の実践を、著者は「跳ぶ」と表しているようです。
そういった姿勢は、個々の構成員たる社員に浸透させなくてはなりません。
感覚知は論理的な伝達には馴染みません。生身の人間同士の経験の共有、同じ「場」での共存が不可欠なのです。
このあたりの主張は、「分業制度の弊害」という章でも触れられています。
経験の共有を重視するスタイルは、マエカワの人材育成方法にも表れています。
いくつかの企業では、新人社員の育成を先輩社員にサポートさせるチューター制をとっていますが、マエカワの先輩社員は、中途半端な若手・中堅社員ではありません。
形式的な「定年」は定めているものの、希望すれば70~80歳でも働き続けられるマエカワならではの「匠」の育成方法ですね。