(注:本稿は、2021年に初投稿したものの再録です。)
いつも聞いているpodcastの番組に著者の福岡伸一さんがゲスト出演していて、本書の内容を紹介されていたので気になっていました。
福岡さんの著作は、いままでも代表作「生物と無生物のあいだ」や「動的平衡ダイアローグ」をはじめ何冊か読んでいます。
本書は、福岡さんがダーウィンの足跡をたどりガラパゴス諸島を訪問したときの紀行文です。
本書で紹介されているような “ガラパゴス諸島の生態系” が今日でも観察できるのは、ガラパゴス諸島が欧米列強の支配下に置かれなかったことが大きな要因でした。
エクアドル政府がどういう意図で領有権を主張したのか、その理由は明確に伝わってはいませんが、ともかく「生物学」にとってはこの上ない幸いでした。
そして、それから190年ほど時が経って、福岡さんが出会ったのはガラパゴスの島々の自然とそこに生きる生物たち。
本書は、“ピュシス(本来の自然)” と遭遇した福岡さんの喜びがそのまま溢れ出したエッセイです。
読む前は、ガラパゴスの自然を材料にした福岡さんならではの「生物や生命に関する論考」が紹介されていることを予想していたのですが、そういった “ロゴス” 的な話題はほとんど語られていません。
せいぜい、「ガラパゴスに棲む生物の人を恐れない性質」の理由を考察したくだりぐらいです。
ということで、ここでも原因解明の結論にまでは至っていません。
やはり、ガラパゴスで感じるべきは、根源的な “生命” そのものなのでしょう。
本書の最後に福岡さんはこう語っています。
ガラパゴスから贈られたメッセージ、まさに “生命の啓示” のようですね。
生命海流 GALAPAGOS 福岡 伸一 朝日出版社