見出し画像

80歳の壁 (和田 秀樹)

(注:本稿は、2023年に初投稿したものの再録です。)

 今、書店の棚には和田秀樹さんの著作が何種類も平積みされていますね。

 どの本も、急速に進展する高齢化社会における我々の生き方のヒントを説いたものです。
 おそらくそれらの内容の8割9割は同じようなメッセージが語られているのではと想像しますが、別段、それが悪いというわけではありません。しっかりしている本であればあるほど、著者の主張は不変のはずですから。

 本書ですが、巷に溢れる和田本の中からまずは何を読もうかと思っていたところ、通勤途上に聴いている茂木健一郎さんのpodcast番組で、ちょうど著者の和田さんが本書の紹介をしていたので、とりあえず「この本から」と思い手に取ったものです。

 第一章は、80歳を越えた高齢者を対象とした医療のあり方がテーマ。
 その中で「検査数値重視の弊害」が取り上げられています。
 例えば「高コレステロール」。私も検査でコレステロール値が高かったので、毎日、処方された薬を飲んで数値を下げています。

(p68より引用) なぜ医師は、血圧や血糖値やコレステロール値を下げようとするのか?
 答えは、アメリカ型の医療原則を適用しているからです。

 アメリカ人の死因の第1位は心筋梗塞で、血圧や血糖値やコレステロール値を下げることが長寿につながります。ところが日本人の死因の第1位はガンであり、アメリカとは事情も病気の構造も違っています。それなのに、わざわざアメリカ型を取り入れている。これもおかしな話だと思いませんか?しかし、それが日本の医療の現状なのです。

 和田さん曰く、「コレステロールは免疫細胞の材料となるため、コレステロール値が高いほどガンになりにくいという調査データもある」とのこと。そうだとすると、コレステロール値を下げることは動脈硬化には効果的であっても、かえってガンのリスクは高まることになりますね。
 もちろん、私は医療関係の知識は何も持ち合わせていない素人なので、この和田さんの指摘が医学的に正しいものか否かについては判断することはできません。
 とはいえ、こういった綜合的・俯瞰的な考え方は、“臓器別診療” 重視の視点からは生まれ難いものでしょうし、ある程度の年齢になったら「手術はしない」「薬は飲まない」という和田さんの価値判断や基本姿勢が表れた指摘だと思います。

 第二章以降は、高齢者専門の精神科医として長年高齢者医療に携わっている和田さんからの多彩なアドバイスが紹介されています。

 私、80歳に届くにはまだ少々時間があるのですが、とはいえ「初老」といわれても不自然ではない年恰好になってきました。
 和田さんが言うように、“適度な運動” に努め、“嫌なことは我慢せず、好きなことをする” ・・・、そろそろそういう準備をし始めましょうか。ただ、そのための(金銭面は言うに及ばず)身体的な原資を振り返ると、なんとも心もとないのです・・・。



この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?