民主党政権 失敗の検証 - 日本政治は何を活かすか (日本再建イニシアティブ)
(注:本稿は、2013年に初投稿したものの再録です)
会社の近くの図書館の「本日返却された本」の棚でたまたま目に付いたので読んでみました。
「日本再建イニシアティブ」は船橋洋一氏が理事長のシンクタンクで、福島第一原子力発電所事故に関し、民間人の立場から事故の検証を行った「民間事故調」の母体として有名です。
さて、民主党が掲げた政権運営の中核は、ご存知のとおり官僚依存のガバナンスを政治家に取り戻す「政治主導」でした。
この点の評価については、まずはじめに、まさにそのものズバリの表題である「第2章 政治主導」において整理されています。
たとえば、「政治主導」の具体的な表れとして実施された「事務次官会議の廃止」についての総括です。
この点については、「各自の手動操縦技術の限界を十分に認識しないまま、セーフティーネットでもある官僚による自動操縦のスイッチを全面的にオフにしてしまった」という民主党議員のコメントが当を得ています。
結果、民主党が声高に訴えた「政治主導」は、かえって自らの能力不足を露呈する結果となったのでした。
この傾向の揺り戻しで、菅政権・野田政権と進むにつれ官僚との関係修復が図られ、結局のところ、旧自民党政権におけるガバナンススタイルと大同小異の姿に落ち着いてしまったのです。
自らに実務遂行能力が欠如しているにも関わらず、それを補完すべき「官僚」を全否定してしまう。「外交」面での民主党はさらに稚拙でした。
鳩山氏が惹き起こした普天間移設問題での迷走は言うに及ばず、今後の日米関係のあり方といった基本戦略に関しても「対米追従外交」から「対等な日米関係」へと唱えるだけで、そのグランドデザインと具体的打ち手についてはほとんど詰められていなかったようです。
さて、その他、本書では民主党政権自壊の要因を様々に取り上げ、分析・評価していますが、結局のところ、ひと言でいえば、「民主党は、あらゆる面で、政党としての『政権統治能力』を欠いていた」ということのようです。
これは、「基本理念を同じ価値観として有する支持基盤を、地道なプロセスを経て構築する」という政治家として極めて基本的な行動すら行っていなかったことと同値です。
これでは、そもそも「民主党の基本理念」とは国民のどういう意思に基づいていたのかという疑問に行き着いてしまいます。
この民主党議員の述懐は、「政治主導を唱えつつも政治家たり得なかった自分たちの姿」を的確に言い表していますね。
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?