わたしが正義について語るなら (やなせ たかし)
(注:本稿は、2014年に初投稿したものの再録です)
昨年(注:2013年)お亡くなりになったやなせたかし氏の著作です。
やなせ氏といえば、漫画家としてかなり以前にテレビで何度も拝見していた以外では、小学校の音楽の教科書に載っていた「手のひらを太陽に」の作詞をされていたのかと思うぐらいです。
もちろん、アニメ「それいけ!アンパンマン」の作者としては有名ですが、実は私、アンパンマンのアニメは一度も見たことはありません。
本書を案内しているコメントには、「絶対的なヒーロー『アンパンマン』の作者が作中に込めた正義への熱い思い」と書かれていますが、私のように「アンパンマン」に関する基礎知識がなくても、やなせ氏の思いは十分に伝わってきます。
まず最初に語られているのは、やなせ氏の「正義」についての様々な考えの原点についてです。
それは、自らが当事者であった「戦争体験」であり、それに伴う「飢え」の記憶でした。21歳で従軍したときの“正義”であった「軍国主義」は一夜にして「民主主義」に取って代わられました。
やなせ氏は、正義の相対性を指摘するとともに、「人」についても「絶対的な悪人」はいないと考えています。そして同時に「絶対的な正義のヒーロー」も否定するのです。
やなせ氏の思う「正義の人」は弱い人です。
そして、「正義の人」には「覚悟」があります。
「愛」と「勇気」ですね。
この気持ちは、「アンパンマンのマーチ」の歌詞にある “そうだ おそれないで みんなのために 愛と 勇気だけが ともだちさ” というフレーズにこめられているのです。
「歌詞」といえば、やなせ氏の作詞した「手のひらを太陽に」にまつわる話も興味深いものでした。
この歌は、やなせ氏がマンガの仕事がなくなって途方に暮れていたときに作った歌とのことです。
とても興味深いエピソードですね。
でも、ご自身では「自分を励ます歌」とお話しされていますが、そのあとの歌詞「ミミズだって オケラだってアメンボだってみんな みんな生きているんだ友だちなんだ」には、やなせ氏の優しさが溢れています。決して「自分のための歌」ではありません。
さて、本書、やなせ氏のお人柄が滲み出た素晴らしい内容だと思いますが、最後に本書の中で特に印象に残ったフレーズを書き留めておきます。
ひとつめは、
そして、もうひとつ、
「アンパンマンのマーチ」の最後の歌詞は、“いけ! みんなの夢 まもるため” でした。