二枚腰のすすめ (鷲田 清一)
(注:本稿は、2020年に初投稿したものの再録です。)
久しぶりの鷲田清一氏の著作です。
本書は、読売新聞に連載されている「人生案内」の問答を再録したものを幹に、エッセイ的な小文を加えたつくりです。
そもそもが新聞の「読者からの相談投稿」が起点なので、それこそ様々なジャンルの俗事が取り上げられています。
ただ、相談内容と鷲田氏の回答とが “ピッタリ” と対応しているものは稀ですね。ほとんどが確信犯的な “すれ違い” です。
それは、ひとつには、回答者がより本質的な問題を認識して、それに対する処方箋を提示しているからでしょう。
鷲田氏が人生相談の回答者を引き受けた経緯については、最終章の「二枚腰のすすめ」の中にこう書かれています。
ここから思うに、鷲田氏の回答のズレの多くは「問いの再設定」によるものなのでしょう。
しかしながら、相談者からみて、「悩んでいるのは、そんなことじゃないんだ」「『考え方を変える』とか『アングルを退く』とか言われても・・・」と返されるケースも間違いなくあるように思います。
といったアドバイスがいくつかの相談に対する回答として示されていますが、これは難しいですね。むしろ、それができないから悩んでいるのでしょう。
大変です、人生相談の回答という仕事は。私には絶対無理だと痛感しましたね。