ルポ 食が壊れる 私たちは何を食べさせられるのか? (堤 未果)
(注:本稿は、2023年に初投稿したものの再録です。)
いつも利用している図書館の新着本リストで目に付いた本です。
堤未果さんの著作は、かなり以前に「ルポ 貧困大国アメリカ」を読んだことがあります。
本書は、通勤途上の書店でも平積みされていて、テーマも今日的で身近なものだったので気になっていました。
予想どおり興味を惹いたところは数多くありましたが、その中から特にこれはといった部分をいくつか書き留めておきます。
まずは、遺伝子工学の現在の到達点「ゲノム編集食品」「細胞培養」「合成生物」の作成の実態です。
肉・魚・野菜・・・、様々な実例が並んでいます。
何ともショッキングな現実ですね。
「ゲノム編集」は「遺伝子組み換え」と異なり “自然界で起きる変異と同等”、すなわち「品種改良の一形態」とされて “規制緩和” の方向にあります。そして、これらのテクノロジー主義者たちが推進するビジネスモデルの根源は「特許」により一握りの企業に独占されているのです。
さらに「ここまでやり始めたのか!」と驚きを禁じ得ない事実。
そう、そのとおりだと思います。
「リンを含む穀物」は大量の化学肥料により育てられているのです。リンによる汚染は「牛や豚」が悪いのではなく「人」のせい、すなわち「管理方法・飼育方法」が悪いのですが、そういう「畜産の工業化サイクル」からの離脱は解決策のひとつとして掲げられません。
そして、さらに企業家や研究者たちは、“歪で非本質的な解決手段の探求” に踏み込んでいく・・・。
悲観的観測ですが、“自然の摂理” により “人知の限界” を知るときが近づいてきているように思います。
さて、本書を読み通しての感想です。
ともかくレポート全編を通じて痛感したことは、「一握りの投資家」「株主重視・効率化第一の資本家」の、“自らの富を得る” ことに最大の価値を見出す思考の狭隘さです。それは “愚かさ” でもあり “高慢さ” とも言えるでしょう。
その “愚考” と “愚行” が地球という生態系のエコシステムをバラバラに分断させている姿を、堤さんは、「食料」という切り口からヴィヴィッドに描き出しています。
まずは、本書を “基点” として、現在起こりつつある営みの意味付けを確かめていきたいと思います。次の世代への責任としての “食の持続可能性” の実現のために、私たちが支えるべき対象を誤らないように。
いくつかの対策は、人々にひと時の夢を抱かせるように見えて、結局のところ取り返しのつかない “生態系破壊” をもたらすかもしれませんから。
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