ナイフをひねれば (アンソニー・ホロヴィッツ)
(注:本稿は、2024年に初投稿したものの再録です。)
少し前に、アンソニー・ホロヴィッツの作品を初めて読みました。彼の代表作として評価の高い「カササギ殺人事件」ですが、ストーリー展開のテンポがあわないこともあり、正直、私にはあまり響きませんでした。
とはいえ、ホロヴィッツはともかく当代の人気作家ですから、私ごときが一冊読んだだけでどうこう言うのはあまりに烏滸がましいということで、改めて手に取ってみたのがこの作品です。
ネタバレになるとまずいので内容には触れませんが、確かに、こういった「犯人当て」にフォーカスし、その他の装飾を捨象したコンセプトのミステリーも面白いですね。
起こった事件自体はありふれた姿形をしていますし、物語も、ひとつの事件が起こったあと、重ねてあれこれと奇を衒ったエピソードが発生するわけではありません。
探偵役の主人公が、淡々と容疑者たちから証拠集めを行って、最後、アガサ・クリスティ原作の映画作品のように鮮やかに “謎解き” を披露するという極めてオーソドックスなスタイルです。
ただ、その伏線の織り込みと回収が抜かりなく、さらにそれらの解釈が緻密で納得感十分であることは十分感得でしましたし、そのあたり、とても “丁寧なプロット” のもとに書かれた作品だという印象を受けました。
なるほど、アンソニー・ホロヴィッツが実力派の人気作家であることは首肯できますね。