プレップ 法学を学ぶ前に (道垣内 弘人)
(注:本稿は、2015年に初投稿したものの再録です)
友人の薦めで、中学校からの共通の友人が書いた本を読んでみました。(こういうことでなければ、手に取らないジャンルの本です)
薄ぼんやりと思い出す今から35年(今からだと45年)以上前、当時大教室で星野英一教授から教わった法学の入り口に改めて立ち戻ったような感覚ですね。ただ、私の場合は、情けないことに、それ以降、「入り口」から半歩ぐらい中に入ったところで立ち止まってしまいましたが・・・。
さて、本書の目次はこうなっています。
第1章 法学における議論の特徴
第2章 法解釈の諸方法
第3章 法の体系と形式
第4章 法の適用
第5章 法の担い手
第6章 判決の読み方
第7章 必要なツールと参考になる本
どの章もコンパクトで、初学者を強く意識した分かりやすい語り口で著されています。
たとえば「第6章 判決の読み方」。
実学としての法律の学習においては「判例」の学習が不可欠ですが、著者はこの「判例の重要性」についてこう解説しています。
まずは、「事件(紛争)の解決」以外の「裁判」の意味の説明です。
この裁判所による解釈が「判例」として尊重されるのですが、特に最高裁判所で示された法解釈は、裁判の世界では制定法の条文そのものと同程度の価値を示すことになるのです。
この点について、著者は「民法416条」の条文を実例として丁寧に解説していきます。
この第2項の解釈において、「当事者」は誰か、「・・・とき」とはいつかといった点を明確にしたのが「大正7年8月27日大審院の判決」であり、それ以降、下級裁判所も戦後の最高裁判所もこの判決にしたがって民法416条を運用しているとのこと。
したがって、「民法416条2項」も法解釈の実体は、以下のように解されると説明は続きます。
こういう、補足説明を条文に直接記述するような具体的な説明手法は、著者ならではの工夫であり秀逸ですね。
あとがきによると、本書は、東京大学法科大学院の入学予定者に対する授業資料がその元となっているということです。なるほど、分かりやすさが格別なのは十分に理解できるところです。
ただ、“法科大学院”の入り口でこういったレベルの知識付与が必要だとすると(自分のことを棚に上げてではありますが、)正直なところちょっと寂しい気がしますね。
とはいえ、確かにここまで法学学習の最初の入り口にまで遡った “超入門書” は珍しく、とても貴重だと思います。
今春(2015年当時)、法学部を卒業した上の娘には完全に手遅れですが、法学部2年生の下の娘に勧めてみましょう。さてさて、どんな感想を持つでしょうか・・・。