電話交換手たちの太平洋戦争 (筒井 健二)
(注:本稿は、2013年に初投稿したものの再録です)
8月、毎年この時期には「戦争」関係の本を1冊は読むようにしています。
今回選んだのは、元NTT職員の方が書いたドキュメンタリーです。
本書のプロローグには、こう記されています。
主人公はこの“電話交換手”たち。
本書では、全国各地の彼女たちをめぐる11のエピソードが紹介されていますが、それらの中から印象に残ったくだりを書き留めておきます。
昭和20年6月28日深夜から29日未明にかけて、舞台は岡山電話局です。
この空襲で岡山城天守閣は焼け落ち、岡山市内は一面焦土と化しました。犠牲になった方々は1,737名にのぼったとのことです。
そして、もうひとつの悲劇。
8月15日の無条件降伏を過ぎた20日、南樺太の真岡町はソ連軍の侵攻を受けていました。そして、真岡郵便局で電話交換業務に従事していた9名の交換手は、ソ連軍の猛攻の中、自決の道を選んだのでした。
その遺体を確認した局長田中康助の言葉。
さて本書を読み通しての感想です。
率直な印象をいえば、ドキュメンタリーというには取材の深さが今ひとつ、また、表現についても深みという点で物足りなさが残ります。
ただ、国防の一翼を担う通信業務に携わっていた若い電話交換手にスポットライトをあて、彼女たちの業務遂行への使命感とそれを圧倒する戦争の悲劇とを扱ったテーマの着眼はユニークで、またとても重いものがあります。
多角的な視点で改めて「戦争の罪悪」を考えるには、興味深い著作だと思います。
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