昭和史の人間学 (半藤 一利)
(注:本稿は、2023年に初投稿したものの再録です。)
会社の近くにある図書館の新着書の棚で目についた本です。
著者の半藤一利さんは私の好きな作家のひとりで、今までも「戦争というもの」「日本のいちばん長い夏」 「昭和史をどう生きたか」等をはじめとして何冊か読んでいます。
本書は、半藤さんの共著も含めれば100冊近い著作の中から “昭和史を彩る人物” を評したくだりを採録したもので、登場する人物は半藤さんが注目した “昭和史のキーパーソン” ということもあり政治家や軍人がほとんどの割合を占めています。
それらの人物評はまさに半藤さんの歴史観を写したものでとても興味深いのですが、特に印象に残ったところをいくつかを覚えとして書き留めておきます。
まずは、 “戦犯” といえば必ずと言っていいほどに登場する人物。
陸軍代表は辻政信大佐です。
ノモンハン事件で大敗しても、なお彼の強気の姿勢は全く変わることなく、陸軍中枢でその悪しき影響力を発揮し続けました。
ともかく、
ということです。
もちろん「失敗」という事象のみを持ってその人に恒久的な評価を下すべきではありませんが、しっかりとその「失敗の要因・責任」を明確にすることは必須でしょう。
この点をあやふやにして事を運ぶのは、何も戦時中の陸軍に止まりませんが。
もう一人、太平洋戦争における軍人を語るのなら、海軍の山本五十六大将に触れないわけにはいきません。
半藤さんが紹介している彼に関する数あるエピソードの中からひとつ書き留めておきます。
そして、半藤さんはこうも語っています。
こういう観点から本書に採録された人々を見ると、極僅かな「許すべからざる生き方の人」によって、圧倒的多数の人々の人生が無残なまでに蹂躙されたことに改めて大きな憤りを感じます。
ただ、そういう一握りの人の声を通らせていた要因の一端は私たち自身にもあったことは認めざるを得ず、それゆえに、私たちは、そういう状況に今後二度と向かわせないよう努めなくてはなりません。
また悲劇が繰り返されそうな危惧を感じる今なればこそです。