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ぼくは人生の観客です (私の履歴書) (小田島 雄志)

(注:本稿は、2020年に初投稿したものの再録です。)

 日本経済新聞・読売新聞への連載に加筆した小田島雄志先生自伝的エッセイです。

 今から40年以上前ですが、大学の一般教養課程の授業で小田島先生のシェイクスピアの講義を履修した経験があります。
 ちょうどそのころ、小田島先生の訳による桑名正博さん・岩崎宏美さん出演のロックミュージカル「ハムレット」が上演されていて、その話題もお話しされていたように記憶しています。
 穏やかなまん丸のお顔そのままに、温和で話し上手な先生でした。

 さて、本書の第一部は日本経済新聞に連載された「私の履歴書」の採録です。

 1955年、文学座の「ハムレット」を観た小田島さんは、日本シェイクスピア協会の会長でもある中島文雄先生にこの上演の情報が入っていないということに気づきました。本場イギリスでは考えられないことだそうです。

(p51より引用) そこで大げさに言えばそこにぼくの道があると思った。シェイクスピア・アカデミズムと芝居の現場の懸け橋になろうと。結局は象牙の塔より現場の方が居心地がよいことになってしまったけれど。

 このときの“目標”は、その後、国学院大学、津田塾大学を経て東京大学で講師・助教授・教授を務めアカデミズムの世界に軸足を置きながら、文学座に入りシェイクスピア全戯曲の完訳を手がけるなど演劇の現場に深く入り込むことで、まさにそのとおり実現させたのです。

 本書の第三部は「観客歳時記」と銘打った章で、2004年から2011年までの小田島さんが観た演劇の寸評がズラッと並んでいます。

 年間に365本以上の観劇を記録している小田島さんの眼鏡にかなった作品が紹介されているのですが、残念ながら私が演劇らしいものに接したのは、はるか昔、日比谷の日生劇場での劇団四季による「ジーザス・クライスト=スーパースター」を友人に誘われて観に行った程度です。
 その時も転寝をした記憶があるぐらいなので、小田島さんの解説に“共感”することもできず、誠に申し訳ないのですが、書かれている内容にはちょっとついていけなかったというのが正直な感想でした。

 でも、大いに刺激は受けましたね。それほど面白いのであれば、機会をつくって何かの舞台を観たいという気持ちにはなりました。

 ともかく、小田島さんの “演劇愛” が迸った著作ですね。



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