フットボールの社会史 (JR. F.P.マグーン)
「訳者まえがき」によると、本書は、1938年に刊行された「History of Football from the Beginnings to 1871」の翻訳とのこと。
内容は、フットボールの歴史をやさしく解説したものというよりは、文献を渉猟しての学術書に近いものです。(とはいえ、あくまでも新書レベルですが)
この点、著者もこう語っています。
本書では、数々の文献(法令であったり文学作品であったり)を引いて、蹴球の歴史を綴っていくのですが、その中にはこんな紹介もありました。
エリザベス朝期のシェイクスピア作の戯曲「間違い続き」での蹴球に関するくだりです。
こういう手荒い仕打ちの比喩に用いられるように、当時の蹴球はとても荒っぽい競技だったようです。
実際、怪我する方はもちろん亡くなった方も出たようで、好ましからぬ競技としてしばしば法令をもって禁止されもしました。
さて、サッカーやラグビーといった近代的蹴球ですが、これらは旧時代の蹴球から直接発達したものではありませんでした。
とはいえ、「蹴球」は、母国イングランドにおいても乗馬や競馬といった上流階級のスポーツとして発展したものではなく、基本は庶民のスポーツでした。その底流には地域に根ざした民衆のエネルギーが脈々と流れている競技なのです。
サッカーが、熱狂的なサポータ同士のぶつかりや、国同士の戦争にまで至るのもさもありなんという気がしますね。