著者の猪瀬直樹氏自らがtwitterで紹介していたので読んでみた本です。
舞台は「総力戦研究所」。日米開戦直前に設置された政府の公式組織です。昭和15年9月に公布された「総力戦研究所官制」には、その設置理由が以下のように記されています。
研究生として召集されたのは、官庁・軍部・民間から33名。30歳台の各界中堅メンバが「模擬内閣」を組織し、現実をほんの少し先取りする時間経過で対英米戦に関する議論を重ねたのです。
東條英機は首相に就任する前、陸相のとき、総力戦研究所の「閣議」を傍聴していました。彼が研究所の議論に関心を抱いていたことは間違いありません。
研修生たちの出した結論は、「日本必敗」でした。
アメリカによる対日石油輸出禁止により日本が南方進出を決めたときから、すでに結果は明白だったのでした。日本の国力に関する“事実”(データ)は、判断者が誰であろうと当然の如くひとつの結論に誘うものでした。
11月5日の御前会議で、鈴木(貞一)企画院総裁は「数字」を並べ「インドネシアから石油を取ってくれば、対英米蘭戦争に進んでも日本の自給体制は保持しうる」と説明しました。
齢93歳、鈴木氏の回想の言葉です。何とも情けない・・・、その結末を思うに「憂鬱」といった個人の感情の問題ではありません。