日本史はこんなに面白い (半藤 一利)
「週刊文春」誌や「文藝春秋」誌の編集長を歴任した作家の半藤一利氏が、16人のゲストの方々と日本史上の人物やエピソードをテーマに語り合った対談集です。
対談相手の方々もそれぞれ一家言ある強者(つわもの)なので、興味深く読み進めることができました。
語られる説は、語るご本人の思い込みもあるものですからすべてが真実であったかといえば疑問符がつきます。しかしながら、各人の知識と想像力を駆使した仮説構築力には素直に感心してしまいます。
そういった仮説の中で、たとえばというものをひとつ。
作家の井沢元彦氏が考える「秀吉の朝鮮出兵の背景」についてです。
(p77より引用) 信長と違っていたのは、天下統一を完成したがために、それまで雇っていた傭兵が20万人ぐらい余っちゃったことです。・・・
ぼくは、これが秀吉が朝鮮へ出兵して大失敗した、最大の理由だと思うんです。・・・そこにはもっと現実的な経済上の理由があった。要するに時代は違うけど日露戦争のときと同じで、軍事バブルで拡大した人員のリストラをどうするか。その解決策が、海の向こうへ出ていくことだった。
全部で16ある本書の対談の中で、私が特に面白く感じたのは、日本の戦中・戦後期を舞台にしたものでした。
特に、元外交官の多賀敏行氏との当時の米国の「暗号解読力」や日米の「翻訳水準」に関する話題、作家の北康利氏との「白洲次郎が活躍した戦後憲法誕生にかかるエピソード」等です。
また、エッセイスト鴨下信一氏との対談でのやり取りも印象的でした。
第二次大戦から朝鮮戦争直後の日本に対して、
(p228より引用) 鴨下 やっぱりこの国はあのころから変わったんですよね。それにしても、敗戦直後の話というのはエアポケットですね。書かれていないこと、いわれていないことがたくさんある。
半藤 日本人はみんな嫌なんでしょうね、負けたときの話というのは。
鴨下 そのためにいっそう誤解と漏れ落ちが多くなった。せめていまのうちに、自分が覚えていることぐらいは伝えておきたい。わずか数年でしたけど、経験した者にとっては、あれはほんとうに長くて不思議な時代でしたから。
ただ、半藤氏自身一番楽しかったのは、評論家の川本三郎氏との対談だったのではないでしょうか。
「チャンバラ映画」の往年の名優たちが次々と登場して、それにまつわるお二人の薀蓄がぶつかり合っていました。
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