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坊っちゃん殺人事件 (内田 康夫)

(注:本稿は、2022年に初投稿したものの再録です。)

 かなり以前に読んだ内田康夫さん“浅見光彦シリーズ” ですが、このところ、私の出張先が舞台となった作品を、あるものは初めて、あるものは再度読んでみています。

 今回は “松山” です。

 ネタバレになるとまずいので内容には触れませんが、この作品の導入部でも、馴染みの場所が登場しました。
 岡山駅前のレンタカー屋はともかくとして、松山に入って、まずはホテルがあるという松山城の西南あたりの一角。愛媛新聞社や市役所は、松山空港からのリムジンバスのルートなので何度も通っています。さらに道後温泉にある「子規記念博物館」は、先の松山出張でちょっと空き時間があったので寄ってみたばかりでした。

 さて、この作品ですが、“浅見光彦シリーズ” の中でもかなり異色の部類ですね。

 珍しいことに、浅見光彦が一人称で記した体の文体で、正直なところ少々 “品のない語り口” が目立ちます。
 また、途中の推理や行動にも稚拙な雑味があって浅見光彦らしくありません。犯人が、物語にはほとんど登場していない人物であることも、いかにも粗雑で安直ですね。

 さらには、登場人物のプロットをはじめとして作品としての仕立て方も必要以上に夏目漱石の “坊っちゃん” を意識しているように感じられて、そのワザとらしい作為がかなり目ざわりでした。

 マンネリを避けようとしたチャレンジ精神は素晴らしいものではありますが、その読者に向けた内田さんのサービスも、今回は残念ながら逆目に出たようです。



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