知のトップランナー149人の美しいセオリー (リチャード・ドーキンス 他)
(注:本稿は、2020年に初投稿したものの再録です。)
「セイラー、ドーキンス、ピンカー、ラマチャンドラン、ジャレド・ダイアモンド…知の巨人たちが愛するエレガントな科学理論とは何か?」という“謳い文句”に釣られて手に取ってみました。
分厚い本ですが、ひとつひとつの項は数ページ、それが149人分という作りです。
本書の編者ジョン・ブロックマンが主催すウェブサイト「エッジ」にて、「2012年の鋭い問い」として示されたのが
“あなたのお気に入りの、深遠で、エレガントで、美しい説明は何ですか?”
という投げかけです。
それに対するレスポンスは、それこそ多種多様ですが、それらの中から私が興味を感じたものを書き留めておきます。
まずは、スタンフォード大学レオナルド・サスキンド教授(物理学)。
同じような趣旨のことを、ヨハネス・グーテンベルグ大学トーマス・メッツィンガー氏もアインシュタインの言葉として書き記しています。
その他、私がなるほどと首肯した考えを並べてみましょう。
ハワード・ガードナー(ハーバード大学教授)は「個人の大切さ」というタイトルの章で「人類学者の有名な言葉」として以下のフレーズを紹介しています。
アンドリュー・リー(南カリフォルニア大学准教授)は「情報が不確実性を少なくする」という章で、「情報化時代は1948年にクロード・シャノンによって作られた」と語りました。
クロード・シャノンは、アメリカの電気工学者・数学者で情報理論の考案者です。シャノンは「情報とは、不確実性を少なくすることだ」と考えました。
確かに、「0」と「1」だけで、あらゆる情報を正確に伝達・蓄積できるという技術は「エレガント」と言えるでしょう。
PZマイヤーズ准教授(ミネソタ大学)の言葉も大いなる気づきを与えてくれました。
「科学」は “過去のストック” ではなく “未来志向のプロセス” だというのでしょう。人々に将来への期待を抱かせ、それに向かう意欲を湧き上がらせる素晴らしいメッセージだと思います。
ランドルフ・ネシー教授(ミシガン大学)が「自然淘汰が生み出すシステムの複雑性」を説明している項で紹介しているジョン・スコット・ホールディンの言葉は、福岡伸一氏の説く“動的平衡”のコンセプトを思い起こさせます。
ニコラス・A・クリスタキス(ハーヴァード大学)の「お気に入りの説明」は、万人にとってとても身近な現象についてでした。
なるほど、小さな「不思議」のタネが、人ぞれぞれの様々な興味・関心の枝を広げていき、そこに新しい発見という見事な花をつける・・・、
“科学”を学ぶということは、誰もが可能性として持っている素晴らしい成長のプロセスなのですね。