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本音に気づく会話術 (西任 暁子)
(注:本稿は、2021年に初投稿したものの再録です。)
最近はこういった “How To”系の本は滅多に読まなくなったのですが、著者の西任暁子さんの評判を聞いて手に取ってみました。
タイトルには「会話術」とありますが、前半のかなりの部分は「聞き方」についてのアドバイスが続きます。このあたりは、いろいろな本でも言われていることの重複ではありますが、それでもなかなか実践できていないところですね。
たとえば、
(p95より引用) 私たちはよかれと思って、様々な受け答えをします。たとえばアドバイス。女性は話を聞いてほしいだけなのに男性はアドバイスをしがち、 と言われますね。
アドバイスそのものは悪いものではありません。ただ、アドバイスという手段は 「解決」のニーズは満たしても、「共感」のニーズは満たせないもの。だから相手が共感を求めている時は、アドバイスをしても、残念ながら喜んでもらえることはないでしょう。
この指摘は私にも大いに心当たりがありますね。
そして、“聞く要諦”として西任さんはこうまとめています。
(p106より引用) 本音を聞く時は無理をしないこと。相手の意見を否定せず、評価せず、同意もしない。相手がそう考えているという事実をただ受け取りながら、感情とニーズを想像し、たずねていく。
で、次のステップとして「本音を伝える」方法の章へと移っていくのですが、このあたりからちょっと納得感が薄れていきました。
事実と感情とを分け、そのプロセスから「本音(真のニーズ)」を捉えていくというプロセスは理解できるのですが、具体的な伝え方として、①観察→②感情→③ニーズ→④リクエストの順に口に出していくというのは、少々乱暴のような気がします。
「聞く」行為は自分(私)の行為なので、自分主体に進められますが「話す・伝える」行為は相手に対するものです。
したがって、相手がそのプロセスに乗る準備ができていないと、むしろ「話し手の独りよがりな伝え方」と捉えられる恐れがあるように思います。
特に、章末の「謝罪」への適用例として示されているやりとりは、正直、私の経験に照らからいえばあまり上手な進め方ではないですね。
例示は「約束を忘れていた」というこちら側に100%非があるシチュエーションなので、そこで、相手のニーズや感情をひとつひとつ確かめながらそれを共有化していく会話というのはいかがなものでしょう。
もちろん、そういったプロセスで「謝罪」と「継続的な関係性の維持」を目指せるケースもありますから全否定はしません。が、できれば、もう少し状況の異なるいくつかの現実的なケースを示した方がいいですね。
あと、もう一点、説明のあちらこちらに「心の深海に潜って・・・」というフレーズが登場します。
著者としては、イメージを理解するのに良かれと思っての表現なのだと思いますが、私にはかえって “意味不明寮なマジックワード” のように聞こえてしまいました。
こう感じるのは私だけかもしれないので、著者には失礼な物言いになるかもしれませんが、ちょっと手に取る読者を選ぶ著作のように感じましたね。