ミツバチの会議 なぜ常に最良の意思決定ができるのか (トーマス・D. シーリー)
(注:本稿は、2014年に初投稿したものの再録です)
以前、書評で採り上げられていたので興味を抱いて読んでみたものです。
「ミツバチの会議」というタイトルは、何とも気になるいいネーミングですね。
本書のテーマは、ミツバチが新しい巣を作る際の「集団としての意思決定プロセス」を解明することです。
著者が発見したそのプロセスは、なんと「直接民主主義」ともいえるものでした。
主役は「探索バチ」です。ミツバチの社会の構成員のほとんどは働きバチですが、新たな巣を作らなくてはならない時期になると、その中のごく一部が探索バチとなって巣作りに適した場所探しの活動を開始します。
探索バチは、あちらこちらを飛び回り、空洞の容積・出入り口の大きさ/向き/地上からの高さ等の基準に基づいて、いくつもの巣作り場所の候補を捜し出してきます。そして、その中から、最適の住処を絞り込んでいくのです。
分蜂群が、あたかも “ひとつの意思決定体” として機能しているというのです。これは驚きですね。
さて、この意思決定のプロセスは、探索蜂のダンスによって行われます。
この活発なダンスの影響で、その候補地の支持者(支持バチ?)が増えてゆくというわけです。
さて、本書では、興味深い実験により「ミツバチ分蜂群の意思決定プロセス」を解き明かしているのですが、最高に面白いのは、このミツバチ分蜂群と霊長類の脳の意思決定メカニズムとを比較して、その根本的類似点を指摘しているところです。
ここでは、ミツバチは “ニューロン” に相当します。
こういったプロセスにおいて最善の意思決定がなされるのであれば、いわゆる「リーダー」の存在意義は一般的な了解とはちょっと変わったものになります。
この意思決定過程においては、集団の内外からの「圧力」が機能することはありません。主張者の主体的かつ積極的な活動と支持者の事実に依拠した冷静な判断とが、集団の意思を一つにまとめていくのです。
自然界が魅せる見事な自律的機能の仕組みのひとつですね。
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