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決断力 (羽生 善治)

 著者の羽生善治(はぶよしはる)氏は、1970年生まれの将棋のプロ棋士です。1996年2月、谷川浩司王将を4勝無敗のストレートでやぶって王将位につき、25歳で史上初の7冠王(名人・王将・竜王・王位・棋聖・棋王・王座)という偉業を達成しました。

 私は、将棋は駒の動かし方ぐらいしか分からないのですが、勝負の世界で若くして王座についた羽生氏の「決断」についての本ということで手にとってみました。

 羽生氏ならではという興味を惹いた記述を1・2、ご紹介します。

(p18より引用) 「これでいけるだろう」と判断する基準が、私の場合、甘いらしい。可能性を人よりも広く持っているのかもしれない。

 「甘い」という言い方に、羽生氏の思考スタイルの柔軟性や可能性を感じますね。
 また、

(p89より引用) これ以上集中すると「もう元に戻れなくなってしまうのでは」と、ゾッとするような恐怖感に襲われることもある。

 との感覚は、到底、私たちで経験することはないでしょう。

 逆に、以下のコメントのように、羽生氏でもそう(私たちと同じ)かと思う点もあります。(もちろんレベルは段違いでしょうが・・・)

(p56より引用) 経験を積み重ねていくと、さまざまな角度から判断ができるようになる。・・・
 しかし、判断のための情報が増えるほど正しい決断ができるようになるかというと、必ずしもそうはいかない。・・・経験によって考える材料が増えると、逆に、迷ったり、心配したり、怖いという気持ちが働き、思考の迷路にはまってしまう。

 その他、将棋ならではという面白い気づきがありました。
 判断の迷路に入った際の、「相手に手を渡す」という対応です。

(p37より引用) 指し手が見えない、つまり「これがよさそうだ」という手が一つも見えない場面も非常に多い。そういうときは、どうするか?

 こういったときは、“敢えて相手の選択に身を委ねて、その他力を逆手にとる方法”があるそうです。

(p37より引用) たとえば、ある場面で、Aという手を指すと、相手にA’で返される。Bという手を指すとB’で返ってくるという場合に、最初にAやBを使ってしまうと、相手に返されてしまう。そこで、第三のCという手を指しておいて、相手に先に選択させる。

 これも確かに“ひとつの決断”ですね。常人にとっては、切羽詰った状況でこの手を採るのはなかなか難しいと思いますが、なるほどという感じがします。

 あと最後に、私が、これは心しなくてはと思ったフレーズをご紹介します。

(p171より引用) 何かに挑戦したら確実に報われるのであれば、誰でも必ず挑戦するだろう。報われないかもしれないところで、同じ情熱、気力、モチベーションをもって継続してやるのは非常に大変なことであり、私は、それこそが才能だと思っている。

 羽生さんらしい、蓋し「至言」ですね。






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