(注:本稿は、2022年に初投稿したものの再録です。)
ベストセラー新書です。
いつも聞いているピーター・バラカンさんのpodcast番組にも著者の斎藤幸平さんが登場して、本書での主張のポイントをお話ししていました。
経済と環境問題とを関連付けた議論の視点は、宇沢弘文さんを想起させます。(本文中でも宇沢さんの主張に言及していました)
さて、本書で力説されている斎藤さんの主張ですが、まず基本的な課題認識はこういうものです。
この “地球環境の危機” への対応としては、「技術革新」がその解決策を提示するという「加速主義」「エコ近代主義」に代表されるような楽観的な考え方があります。
こういった考えを “閉鎖的技術” であると否定したうえで、さらに斎藤さんは「技術の意味づけ」をこう指摘しています。
“技術が想像力を奪う” というのは、インパクトのある指摘ですね。
さて、現下の世界において最大の課題である「脱炭素社会」を作り出す動きは、地方自治体レベルで芽生えつつあります。
2020年1月にバルセロナで発表された「気候非常事態宣言」は、具体的な行動計画も列挙されたマニュフェストです。そこには「経済モデルの変革」と題して、こう記されています。
そこで、書き留めておくべき本書での大切な気づき。政治経済学者ケイト・ラワースの指摘です。
いわゆる裕福な先進国(の富裕層)がちょっと我慢すれば、多くの発展途上国の貧困層の人々の生活水準を大きく改善させることができるということです。これはとても重要な事実だと思います。
そして、最後にもう一点。
この指摘にも希望が見えますね。
さて、本書を読み通しての感想ですが、流石に大いに話題になった著作だけあって、斎藤さんが発した “脱成長コミュニズムを目指す” というメッセージはとても刺激的なものでした。
あとは、「おわりに」での訴え、“3.5%” ですね。