(注:本稿は、2021年に初投稿したものの再録です。)
かなり以前になりますが、本川達雄さんの代表作「ゾウの時間 ネズミの時間」を読んでいい刺激をもらいました。そのとき以来、久しぶりに本川さんの著作です。
本書は、「生物多様性」についての本川さんの講演内容をもとに編集されたものとのことです。
まず本川さんは “生物多様性の大切さ” が理解され辛い要因として、現代人の思考様式を指摘しています。
なかなか面白い指摘ですね。
さて、本書のテーマである「多様性」ですが、本川さんによると、その “生みの親” はメンデルとダーウィンだったとのこと。
面白い着眼ですね。これも、なるほどとの気づきです。
本書では、最終章で「生物多様性との向き合い方」に関する本川さんの考え方が開陳されています。
「生物多様性」の重要性を「遺伝資源の維持」という観点から説く考え方はよく見られますが、この考え方に立つと「遺伝資源から生じる利益配分」といった「南北問題」が絡んできます。本川さんは “生物学者” の立場からこういった「正義論」に立ち入ることは避けています。
本川さんは「生物多様性」の価値をこう指摘しています。
そして、私たちの抱いている “豊かさの概念”の転換 を求めているのです。
あと、蛇足ですが、最後に“多様性”とは別に「ダーウィンの進化論」の意義について触れているくだりを覚えとして書き留めておきます。
「進化論」は生物学にとって、新しい科学的方法論をもたらしました。
“なぜ”と理由を問うことが、「生物学においての科学的姿勢」として認められたということです。