著者の池田潔氏自らのパブリック・スクール在校の体験をもとに、その教育方針やそこから窺えるイギリス社会の特質を記した著作です。
第1刷発行は1949年、敗戦後の日本に英国流個人主義主義思想を紹介しベストセラーになったとのことです。
日本でいえば中学から高校に相当するパブリック・スクールですが、その教育方針は、長きにわたる伝統に培われ極めて厳格だったようです。
パブリック・スクールは全寮制でした。そこでは集団生活の規律が最優先されました。そのため、このような寮生活にうまく順応したものもいれば、自らの個性の強さゆえに適応できないものもいました。
寮生活には功罪がありました。が、これは、パプリック・スクール特殊な状況ではないというのが著者の見方です。イギリス社会に普遍的に見られる性向だとの指摘です。
以上のようにイギリス社会を否定的に評しながらも他方、著者はこうも語ります。
このあたりは、阿川弘之氏がイギリスをもって「大人の国」と評したことと合い通じるものがあります。
さて、著者は、パブリックスクールの校長もつ絶対的な権限を例に、当時のイギリス社会の特質についてさらに論考を進めます。
パブリック・スクールの存在はイギリス社会の古来からの階級制の一側面であり、その伝統を墨守することに必ずしも同意するものではありませんが、他方、その特権に伴う義務(ノブレス・オブリージ)を当然のこととする姿勢がある限り、まだ良しとされるのでしょう。
最後に、若者に対する教育における万国共通の要諦、すなわち、教師が教えるべきものは何かという点についてです。
パブリック・スクールでの教育の使命は、この「人としての姿勢」を生徒の全生活を通して教え込むことでした。
規律は、自由を享受する礎であり、勇気は、自由を守る城壁なのです。