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ウォーキング in パリ②【CAFE JOYEUX】〜世界多分一周旅フランス編〜

パリ散歩の続き。

一つ目の目的、オーダーメイドで注文していたブレスレットを無事受け取り、二つ目の目的へ。
2023年5月2日、春のいいお天気の日だった。

いいパリ


来たかったのは、とあるカフェ。
何かの本で紹介されていたのを数年前に目にして、ぜひ行ってみたいなと思っていた場所である。
そこは「CAFE JOYEUX(ジョワイユー)」というカフェ。


20代の頃、私は精神障害者の作業所(当時の呼び名)になっていたカフェで働いていたことがあり、自分にとってそういう障害者就労の場は身近な存在のため、日本だけでなく海外の障害者雇用の取り組みには興味がある。
パリにあるカフェJOYEUXの何にまず驚くって、その立地である。
シャンゼリゼ通り、それもルイヴィトンの斜め前だとか、オペラ通りだとか、とにかくどれも一等地にある。
自分にも少なからず過去に経験があるのだが、日本では障害者(とりわけ知的障害や精神障害)の施設を立ち上げようとする時、まず必ずと言っていいほど近隣住民に反対される。「日本」と一括りにするのは良くないな、当時私の働いていた町ではいくつか起こっていたし、数々の体験談を聞いた、という書き方が正しい。
猛反発にあい、結局施設を作るのを諦めたケースもいくつか知っているし、近隣住民や自治体に丁寧に説明し話し合いを重ねた結果、がんじがらめのルール(私のかつての職場では、警備員を配置するだとか、障害者は近所の公園に立ち入らないでくれとか、決められた通勤ルートしか通ってはいけないとかそういう馬鹿げたルールが20年近く前にはまかり通っていた。)を守ることを条件に設立されたりした。
最近は当時よりも、大阪の街の中のあちこちに障害者の施設を見かけるようになったものの、私の過去の経験から、パリの一等地に障害者が働くカフェがあることにまずびっくりした。
それと同時に、家賃が恐ろしく高いはずなのに、一体どうなっているのだろうという考えもよぎった。
助成金や、工賃の制度など日本とは異なる仕組みがあるのかもしれない。しかし、どうやって…。
いや。今回は客として純粋に利用してみようという気持ちで来たので、いったんそういう疑問は気にしないことにした。

店構えがまずオシャレである。
黒と黄色という、阪神タイガースファンの私の潜在意識のせいか一番好きなツートーンカラーを使っている。
一等地の角に、全面ガラスで開放感がある。日本の障害者の就労施設であまり見ない、というか、日本の私の知る大阪において、道路に面した外の席がある開放的でイケてるカフェ自体、そんなに存在していない気がする。あったとしても敷居が高くて入れない。これはヨーロッパと日本の違いかも知れないけど。


店内ももちろんオシャレ。
知らないカフェに行くときに困るのが、私がコーヒーを飲めないこと。しかし、ここのカフェはいくつも紅茶の種類を用意してくれていて(それだけで十分大好きになる)、種類ごとに並んだ紅茶のティーバッグのケースをレジで見せてくれて、そこから指をさして選ぶスタイル。分かりやすくて良い。
私はカモミールティーを選んだ。

誰にとっても視認性が良い
ランプシェードがイケている。
番号札と伝票は色違いのレゴブロックを使って識別しており、認識しやすく、かつ、かわいさもある。


私が障害者関連の何かに触れる時にいつも思うのは、日本の福祉の業界にはびこるオシャレじゃないイメージについてである。
福祉を専門に学んできた福祉業界の人間だけで障害者支援を完結しているのが、良くも悪くも日本の福祉が変わっていかない要因だと昔は思っていたし、危機感すら感じていた。
もっとデザインや、食や、音楽、いろんなジャンルに長けている、自由でグローバルな視点を持つ人が作る障害者支援になっていかないものか、見てみたいと思っていた。障害者の作業所が作るクッキーやパウンドケーキはどこもかなり美味しい。これは間違いない。計量から衛生管理までかなりきっちりとおこなっているから信頼できる。
だけどラッピングやパッケージがあかぬけないな、というのが私の正直な感想。そういう素朴さや温かみが好きな人もいるが、私はオシャレでイケてるなと思うクールなデザインのものを手に取りがちなので、ついついそう思う。


20年前から比べると、だいぶ福祉のイメージも明るくなり、福祉業界がオシャレにもなってきて、アートと福祉などの展開も広がってはきている。
福祉のイベントのチラシやポスターだけをとっても、センスのよさ、洗練度合いが昔と比べて劇的に変わったように感じている。
自分がアートだったりオシャレなものが好きだから、ついついそういう点に注目してしまうが、変わらない良さや昔ながらの良さや安心感を好む利用者がいることも理解しつつ、やっぱり洗練されてオシャレなものを見るとカッコいいなと思うので、あくまで私の好みの話ではある。
いつまでも障害者は施されるものという売りだけではなく、グッと惹きつける魅力をもっと上手にプロデュースして発信していくべきだろうなと漠然と考えていた。

だから大阪にもあるチョコレートショップ久遠の取り組みにも注目している。
ショコラティエとしてこういうオシャレなお店で働いてみたいと思わせるし、ここのチョコ食べてみたいって思わせる。

商品も店もオシャレだし美味しいし。こういうお店が増えるといいなと思っている。



フランスのCAFE JOYEUXも、障害者が働いていることを知っていても知らなくても、惹きつけられるセンスを感じた。

ダウン症のメンバーが働くこのカフェJOYEUXのロゴだが、ぱっと見ただけで、いわゆる「ダウン症ぽさ」を象徴するような表情のイラストをトレードマークにしているのが、強い。そしてもちろんオシャレなデザイン。
私が子供時代に流行ったサンリオのキャラクター「たあ坊」が、その後、「たあ坊は知的障害者を侮辱したデザインだ」と猛烈に批判の声が上がり、突然世間からたあ坊が消えたけど、結局過剰反応だったという出来事を思い出す。あれ、何だったのかな。

JOYEUXのオリジナルグッズ販売も手広く展開している。コーヒー豆や紅茶以外にもかわいい小物がいくつも並んでいた。グッズ販売からも収入を得ているのだろう。店員さんが着ている制服もかわいい。レジ横に並ぶケーキやクッキー類がどれも美味しそうだし、ランチもレベルが高そう。
これは間違いなく、それぞれの業界のプロが関わっている。
セルフブランディングに長けているカフェだと感心してしまった。(ついついそういう目線で見てしまう。)

フランス語が読めないのでいちいちGoogle翻訳を使って訳した。
「JOY」を一杯いかがですか?
ここで食べますか?それともお持ち帰り?


障害のあるスタッフに対して、タトゥーがガッツリ入った職員が時々フォローをしている。奥のキッチンから時折大きな笑い声が聞こえてくる。(私のかつての職場のキッチンでは、衛生管理の観点から作業中は私語禁止であった。)
麻痺が少し残っていて歩きづらそうにしている人が、ホール担当で、ゆっくり紅茶を運んで来てくれた。
レジは吃音のある男の子だったが、タトゥー姉さんが横について見守りつつ、ゆっくりと丁寧にレジをしてくれた。
シャツの裾が出た少しだらしない男性がホールの仕事をしていたら、お客さんの一人がシャツが出ていることを指摘し、直してあげていて微笑ましかった。
観光地ど真ん中にあるせいだろうが、片言の英語を話せるスタッフもいて英語で話しかけてもらって、びっくりした。

なんというか不思議な空間である。

効率や適材適所を考えがちな現代社会において、本人の適性よりも希望を優先しているような職場だった。
この点について私は少し考え込んでしまった。
その人の得意なことを生かす、適材適所を優先して考えることで、成績が上がったり、強みになったり、売り上げに繋がる反面、自分の本当にしたいことがやれないこともあるだろう。自分にできること、得意なこと、やりたいことが一緒とは限らない。
「苦手なことから逃げずに挑戦する」という考え方と「下手だけどやってみたいから挑戦する」というスタンスの違い。
うーん、まとまらない。
ついついこういうことを考えてしまう。
今日はただのお客さんとして来たのだった。紅茶が冷めてしまう。
なんだかぼんやりとまとまらない考えが浮かんだ。
しかし、黄色と黒のJOYEUXがあまりに居心地が良くて、今はそれは考えなくていいや、どうせ自分は仕事を辞めて世界を多分一周する旅に出ているし、今は好きなことしかやっていないんだから、考えるのはまたの機会にしよう、のんびりしよう…などと思ったりした。

(この後、ポルトガルのリスボンと、フランスのボルドーにもJOYEUXの支店があったため両方に立ち寄った。それぞれ違っていて、その違いも興味深かったし、ボルドーに住む友達イザベラともう一度この件について考えて話し合ったりしたのはまた、後日に。)

さて。パリで行きたい場所には行けたし、満足。夜行列車に乗るためにそろそろ観光散歩を切り上げることにした。

パリには世界遺産のサンジャックの塔があり、ここを拠点として、スペインのサンティアゴ・デ・コンポステーラまで続く巡礼路に続いている。
一応ここのヤコブにもご挨拶。


Austerlitz駅19:36発のSNCFの寝台列車で、7:06着のRodez駅まで110€(16000円くらい)。
Rodezからは、Conquesに移動してまた毎日ハードに歩き続ける旅を始めるので、ここは横になれる移動手段をとった。宿泊費と交通費と両方合わせていると思えば、納得している出費。
見知らぬ女子2人と同室のコンパートメントだったが、アメニティーもついていてちょっぴり得した気分。
20時前でまだ昼間のように明るいフランスの風景を車窓から見ていた記憶だが、いつの間にかすぐに眠り、何なら眠り続け、最高に熟睡できた状態でRodez駅に着いた。

ピンクの夜行列車
意外と良かったアイマスク(3つめ)
JOYEUXでテイクアウトしたチョコチップクッキー。
ソフトな巨大チョコチップクッキーが、クッキーの中で一番好きである。
こないだまでコーラ30円のインドにいたのに、
コーラ430円の世界に突入して嘆く。
Rodez駅到着


Rodez駅について、バス停でバスを待ちながらパンを食べて、バスに乗り込んだ。これは週に3本くらいしか走っていないスクールバスに乗せてもらっているので2€(300円)で1時間かけて山道を進む。

4年前、その日は祝日でスクールバスがなく、タクシーで1万円くらいかけて逆ルートでコンクから帰ってきたのを思い出した。


そう4年前。
今から戻るコンクという村で歩き旅をいったん中断し、コンクで令和を迎えていたのである。
あの時は毎年恒例の4~5月にカミーノを歩きに来る旅をこれからも続けられると思っていたし、変なウイルスのせいでそれが叶わなくなるなんて思ってもいなかった。
その場所に4年後に戻ろうとしている。
もうそれだけで、少し感動している自分がいた。


綺麗な森を抜けるスクールバス


この続き↓



これから続きを歩こうとしているルピュイの旅については、こちらのマガジンにまとめています。

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のりまき
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