注文の多いインド料理店 in 下呂温泉
21時にお腹が空くという現象は私によくありがちなのだが、田舎の方の町を旅している時は致命的である。
ごはん屋さんは閉まってるし、コンビニもない。
いやコンビニがあったとしても、旅に来てコンビニの弁当を食べるほどわびしいものはないし。
普段はコンビニ弁当と友達のくせして旅では他人のフリをしたい私。
下呂温泉の夜21時過ぎに開いている店はほぼなさそうだし、どうしよう。
朝から飛騨牛を食べて、高山で飛騨牛クレージーモードで食べ歩きまくって、お腹が空かないからと言って夜に何も食べずに温泉に入って「みんなが晩ごはんを食べている隙に、わーい、独り占め!」と露天風呂を独占してはしゃいでいたが、21時に腹が減るとは。
ある程度、予想していたけども、やっちまった。
色々と下呂温泉中をぐるぐる歩いてみたものの、どこも閉まっていて、Google先生に聞いてみたが大体20時半にはほぼ飲食店は閉まっていた。
22:30までやっているらしいカフェバーのようなところに行ってみると、
「今日は20:30に閉めたのよ」と言われ、何でもいいから簡単なものを…ギブミーサムシング...白ごはんだけでもプリーズ…とすがってみたが、ダメだった。
花火が終わってみんなそれぞれの宿に帰っていく。
こんな時間に晩ごはんを作ってくれる日本人がどこにいるっていうのだろう。
トボトボと半ば諦めて歩いていたら、目の前にネパール人がいた。
「今もお店やってるよ、大体24時くらいまでは開けてるよ。ずっと開けてもいいよ。オネエさん、何か食べてく?」
やたらとフレンドリーに言われた。
インド料理屋の前にて。
捨てる神あれば拾うネパール人あり。
日本国内を旅してる最中、ごはんを食べる時にインド料理屋をチョイスすることはまずない。その土地の名物料理とかもしくはそこの名物の肉を食べたいというポリシーがあり、インド料理を食べたい口にはならない。
しかし今夜はそうも言ってられないくらい腹ペコなため、よし、今宵は岐阜にてインドカレーでも食べようと気持ちを切り替えて店に入った。
どこからどう見てもよくある本場の人がやっているインド料理屋、その名も「オム・ガネーシャ」だ。
そして客は私1人。
いつものパターンである。
ナンだけになんにしようかなーとカレーとナンのページをめくってびっくり。
こ、これ、本当にここで食べられるの?というバラエティーに富んだ品揃え。
ガパオとかはまだ分かる。同じアジアだし、それによく見りゃ看板にアジアンダイニングカフェと書いてある。
しかし、スパゲッティー?
タコス?
ガンバス・アヒージョ?
スペイン語やし。
「スパチー」って聞いたことないぞと思ったら、オムガネーシャの伝統料理と書いてある。そんなに伝統のある店だったとは知らなかったし、疑わしいがそこは許そう。
土鍋に生パスタとホワイトソースとチーズを入れて焼き上げたグラタンをスパチーと呼んで、インド料理屋の伝統だという。
めちゃくちゃ美味そうやん。
一体どういうことなんだいオムガネーシャ。
まるでインドのバラナシにあるモナリザ・カフェのように多国籍料理が並んでいる。
あそこもカレーとともに、イスラエル料理もあればパスタもあってオムライスやチャーハンもあった気がする。
そういう意味ではこの店こそが本場のインド料理屋らしいと言えばらしいかもしれない。
おーっと、うどんセットだと?
やってくれるじゃないか。
和食にも手を出すわけね。
ネパールダルバードセットとうどんセットを並べるとは度胸がある。
カレーうどん限定らしいがいい度胸をしている。
もうここの店のメニューを見ているだけで楽しい。
そして、そして!
岐阜県名物けいちゃんもあった!
嬉しい。
実は、諦めてはいたが今日はけいちゃんを食べたい気分だったのである。
昨年の旅のタイムループとして今回また同じ日程で飛騨地方を旅していたが、下呂温泉という昨年行かなかった場所を旅していたことでタイムループ中だったことをすっかり忘れていた。
昨年の朝ごはんは宿で極上の卵かけごはんとけいちゃんを食べていたのだった。
けいちゃんと、ここにきてこんな予想外の場所で出会えるとは。
なんとかこの日のうちにけいちゃんを間に合わせてきたなんて、タイムループ感がある。
メニューを読む。
とんちゃん
けいちゃん
マトンちゃん
ジンギスカン鍋で
焼きながら
お召し上がりください。
嘘だろ。
下呂市が発祥とも言われる岐阜県飛騨地方の郷土料理けいちゃん(鶏ちゃん)を、ネパール人コックがジンギスカン鍋を使って作るというのか。
そしてとんちゃんは豚肉だろうと思うが、マトンちゃんって、勝手にアレンジしすぎ。
マトンちゃんか、けいちゃんかで悩んでここは岐阜県下呂温泉、けいちゃんでいくことに決めた。
けいちゃんについてはこちら
けいちゃんとはみそ味の鶏肉炒めである。
しかし、インド料理屋のけいちゃんなので、カレー味だったりするのかもしれない。少しドキドキする待ち時間。
「ごはん、つけときますねー!」と勝手に白飯好きを見破られて追加される。
「なんか飲むー?」と聞かれたのでついついいつものインド料理屋の癖でラッシーを頼んでしまった。
けいちゃんにラッシーを合わせて飲む人なんて、もしかしてほとんどいないんじゃないか。
そう思いつつ、寒くて冷えた体にキンキンに冷えた濃厚なラッシーをすすった。
寒い寒いと凍えていたら、ネパール人の店員さんが温かいスープをサービスでくれた。
「かぼちゃのスープだよ。材料全部、飛騨の地方の野菜だよ。」とのこと。
美味い!
かぼちゃスープにガーリックがたっぷりとクミンとかが入ってそうな全然辛くないけど強烈にスパイスを感じる味。
おい、オムガネーシャ、やるじゃないか。
美味いしポカポカあったまるしで一気飲みしてお代わりをした。
「ねぇ、もしかして、けいちゃんにもスパイスを使ったりしますか?」と私が聞いたら、「まさか!けいちゃんはちゃんとした伝統のけいちゃんですよ」と答えてくれた。
何がまさかなのかよく分からないが、伝統をやたらと大事にする店ではあるらしい。
この店は川に面したお店で、「さっきここで花火バッチリまん前で見れたよ。すごいよ。次ここで花火見たらいいよ。ここだと寒くないし、美味しいし。」と店員さんが私にそう言って笑っていた。
私は窓から見える川がガンジス川のような気がして仕方なかった。
川の近くの町は何となく落ち着くし好きである。
そしてけいちゃん登場。
21:30に1人で食べる量ではない気がする。
じっくりジンギスカン鍋で焼きながら食べていく。
こちらのけいちゃんにはインドテイストのスパイスは入っておらず、ちゃんと味噌としょうゆの味がついた、けいちゃんだった。
カレーに合いそうなライスとけいちゃんとラッシーとスパイシーなかぼちゃスープ。
異国から来た人が異国のその土地の郷土料理を作って出してくれるって、何かいいなあとしびれた。
またガーリックたっぷりのかぼちゃスープをお代わりして、ペロリとけいちゃんを平らげて、最高のディナーとなった。
そして、締めにチャイを飲んだ。
スパイスたっぷりで美味しい。
次にここに来た時は、ここでマトンちゃんか、スパチーか、普通にカレーを食べてもいいなあという気がしている。
半ば諦め気分で、妥協で選んだインド料理屋だったが、楽しい店員さんがいて、ちゃんとした飛騨の郷土料理も出すけど、どこかインドなテイストのお店。
そして窓からはガンジス川。
こんなにバラエティーに富んだメニューを提供している日本のインド料理屋に行ったことがない。唯一無二のお店。
今回も、想定外におかしくて素敵なお店との出会いであった。
なぜか掲載保留中の「オムガネーシャ」の食べログ↑
続く…
今回の飛騨の旅は、ハッシュタグ飛騨タイムループ旅でまとめています。