信州戸隠紀行 2023秋~① 戸隠古道と夕陽
千曲市の森将軍塚古墳をあとにして車で1時間、向かったさきは、長野市戸隠。渋滞が予想される長野市内を避け、上信越道の信濃町IC経由で戸隠入りしました。
時刻は15時半、すこしずつ夕方の気配が漂いはじめています。この時間からの参拝は考えていません、”逢魔が時”に差しかかりますからね。それでも、車で通過越しに戸隠神社中社の様子をちらりと見ると、たくさんの人が参拝していました。日曜日だし、やっぱり人気なんだなぁ。
戸隠神社を訪れるのは2年ぶり。30歳過ぎから通いはじめて、かれこれもう6回くらい来ているかも。長野県内とはいえ車で3時間近くかかりますが(東京からの所要時間と変わらないという不思議)、何度訪れても飽きない自然の美しさと気持ちよさに魅せられ、定期的にお参りするようになりました。
すこしだけ、戸隠神社について説明を。
日本神話で有名な、天岩戸開きの伝説。ちから自慢の神さまが投げ飛ばした岩戸が、はるか信濃の地まで飛んできて出来たのが、霊山戸隠山といわれています。なんと九州から長野まで飛んできた!
戸隠神社はその戸隠山の麓にあり、創建2千年を超える歴史を刻んでいます。現在は五社からなり、御祭神もそれぞれです。
奥社 (天手力雄命)
中社 (天八意思兼命)
宝光社 (天表春命)
九頭龍社 (九頭龍大神)
火之御子社 (天鈿女命)
一社だけなにやら毛色がちがうと思われた方は、なかなかの神話通ですね。
平安時代末期には修験道の霊場として栄え、また、神仏習合の時代は戸隠山顕光寺という名で比叡山・高野山とならび「三千坊三山」とよばれるほどに繁栄したそうです。
しかし明治維新後の神仏分離政策により、寺か?神社か?どちらか選択を迫られ、神社を選びました。僧たちは還俗して神官となり(そんなことができるんですね!)、戸隠神社となって現在に至っています。
◇ ◇ ◇
神社へのお参りは明日ゆっくりするとして、今日は美しい夕陽がみられるとうわさの夕陽展望苑へ。明日のためにとっておきたかった体力(おもに脚力)を少しだけ消耗して階段をのぼると、
うわ~、これは幻想的な眺め!
暑さのせいでモヤがかかっていますが、それもまた良しと思える美しさです。標高1000m~1200mの戸隠は、例年であればもう紅葉は終わり雪が降ってもおかしくない高原地帯ですが、ことしはかなりゆっくりペースなのだそう。
うしろの方で遊んでいた親子連れが帰り、一気に静かになった展望苑を散策すると、ここにもまた、ため息が出そうな美しさがありました。
どうやら日暮れまでもう少し時間がありそうなので、この展望苑のほかにもう一か所、気になっていた『一之鳥居』へ行ってみようと思います。(もちろん車で)
これまで何度も戸隠へ来ているけれど、そういえば見たことがなかったような? 一之鳥居といえば参拝者がかならず通る玄関口ですからね、気になります。
ところで、今回の旅で大活躍しているのが、戸隠観光協会が発行しているこちらのマップ。
全体の位置関係がわかり、なおかつ歩きの所要時間もこまかく書かれているので、計画をたてるのにとても便利。旅に出るまえの妄想タイムでも、ずいぶんとお世話になりました。笑
では、マップの一番右下にある一之鳥居へ行きましょうか。
善光寺から戸隠神社奥社までつづく祈りの道、戸隠古道。修験者も歩いたといわれる約25kmの道を2日間かけて踏破する「戸隠古道大ウォーク」なんてイベントが、ちょうど一週間後にあるそうです。ひたすら登りの遠足は、わたしにはちょっとキツイかな。
一之鳥居に着いたようですが、えーと、鳥居はいずこ?
近くにあった案内板を読んでみると、江戸時代の善光寺地震で石の鳥居は倒壊、明治19年にようやく木造の鳥居が再建されたものの、それも傷みがはげしく昭和60年に取り壊された、とありました。
38年遅かった・・・残念。
現在は江戸時代の石材や基礎が残るのみですが、古くから神領の入り口として参拝のひとびとが通った場所なんだと思いをはせると、感慨深いものがあります。
しばし、ぼんやり。
16時半、いよいよ陽が落ちました。
今日の宿は中社近くの宿坊です。
実は戸隠には宿坊が多数あります。神社だけど宿坊、これも神仏習合時代のなごりでしょうね。
そしてお楽しみの夕食!
戸隠といえば蕎麦が有名ですが、こちらのお宿で出される夕食も蕎麦会席。あれもこれも蕎麦が使われている、蕎麦好きにはたまらない献立です。
高級だとか珍しい食材が使われているわけではありませんが、この土地で育ったキノコや野菜を使って愛情たっぷりに作られた料理は、どれもとても美味しい。そして力があるのがよくわかります。
新そばのそばがきはフワフワ、りんごの天ぷらは甘くて幸せ、蕎麦のアイスクリームも香ばしくて美味しい。けれどどれか一つ選ぶなら、やっぱり手打ち新蕎麦!これはもう文句なしに最高。
しかもこの日いただいた蕎麦は、献納そばという貴重なもの。
戸隠では晩秋にそば祭りが開催されますが、その年職人みずからの手で育て収穫したそばをていねいに打ち上げ、まず最初に戸隠の大神さまへ献納するそうです。
わたしがいま口にしているのは、そのお下がりということですね。なんてありがたい。すべての食べ物をとおして土地の力をしっかりといただきました。ごちそうさまでした。
つづく
ー次回は、五社めぐりスタート
お楽しみに!
お気持ちありがとうございます。大切に使わせていただきます。