#02 悲しい時は香水を嗅ぐ
行きたくなかった中学校の通学路を澄ました顔で歩いて、おばあちゃん家に向かう。
途中のひんやりとした空気。
それに、金木犀の匂い。
好きじゃなかった、全部。金木犀も。
18歳の1人で暮らす日々は荒れていて、鮮やかで、楽しくて、寂しかった。
今となっては、曖昧で確かなものじゃないけれど、あの時の感覚は全部覚えてる。
友達がくれた香水が金木犀の匂いだった。
その友達も同じ香水を付けていて、嫌いだった金木犀の匂いが一気に落ち着く匂いになったのをずっと覚えてる。
私はその香水を今も、使わずに大切に宝箱にしまってる。
悲しい時だけ腕に少し付けて眠るの。
今日みたいな日に。
でも、どうやら香水には期限があるみたいだよ。
いつか忘れてしまうのかな。
20代半ばになってもまだ大人は何か分からないし、
眠れない夜は続くけれど、
大切な思い出を、まだ大切に思い出せるなら
今日も生きていけるような簡単な人間で良かったと自分を好きになれる。
おやすみ。
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特別な匂いってある?