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こんな日には、「だいじょうぶだよの歌」を歌う。

大人になったって、わたしはやっぱり新年度が苦手なんだなぁと改めて思う今週。心がざわざわとしていて、なんだか落ち着かない。

息子は2年生に進級して、クラス替えがあった。
保育園から仲良しの子と、一年で仲良くなった子達とは別のクラスになり、息子によれば何より先生がとっても厳しい人になったのだそうで、あまり人としゃべることなく帰宅したという、3日め。

「2年生って、厳しすぎる」と帰るなり言っていた。
昨日からかなりストレスを感じてそうな様子なので、まっすぐ帰宅できるようにしたら、ソファで2時間も昼寝をした。

よっぽど疲れていたのかなんなのか。
普段は寝付きの悪さがピカイチで、昼寝なんてしてるのを見たことがないので超珍しい。

新しい先生は一日じゅう
「絶対〜〜しちゃいけない」ばかり言うのだと、息子が言う。
絶対にしゃべっちゃいけない、立っちゃいけない、こぼしちゃいけない。さわっちゃいけない。

息子は人より、強迫観念が強いところがある。
「絶対」〇〇しろ、とか、するな、といわれたら、それをしなかった場合、した場合を極度に恐れるところがある。

たとえば、言っちゃいけないといわれている悪い言葉(バカとかしね、とか)を
口に出すことはもちろん、
ふと頭の中に浮かぶことさえ息子は恐れていて、その文字が浮かび上がってきたときには毎日何度も両手の人差し指を空に向け、必死で悪い言葉を飛ばしているのを母は知っている。

一種のチックのようなものだけど、彼にとっては不安を飛ばすための、おまじないなのだ。 

一年の終わり、同じクラスの女の子ママに
「娘が、クラスで中指を立てたりしない優しい男の子はそうちゃんだけだって、いつも言ってます」と話しかけられた。

ふざけることは大好きだけど、みんながそういうことをするときは、息子はたぶん、中指が間違って飛び出てしまわないように、強くこぶしを握っていたはずだ。

昨日も今日も、彼の頭の中は絶対にしちゃいけないことでいっぱいで、ずっと緊張しながら座っていたのだろう。

とはいえ先生だって最初にビシッとしめておかねば、小2男子たちが調子にのりはじめたら手遅れなんだろうなぁと思う。


うちのなかで「絶対」という言葉を使わなくなったのはいつからだっただろうか。

小学校入学を目の前にした去年の今ごろ、
わたし自身がなにかと口うるさくなっていた時期に、書きとめた息子メモがある。

確か、あれも春のはじめで、不安になるくらい風が強かった夜のこと。
パジャマ姿の息子がわたしの右手に巻きついて、ぶら下がるようにしながら
こんな言葉をつぶやいた。

ぼく、にんげん以外がいいなあ。

だってにんげんって、
はやくおきがえしなさい、
じゅんびしなさい、
おかたづけしなさいばっかでしょ。

ねこだったらいいなあ。
そうしたらまいにち、すきなひとのうでをペロペロなめたりするだけでしょ。

息子の言葉メモより


この子はいつだってこうしてわたしの腕にぶら下がって、ただ頭をなでてほしいだけなのだった。

親の役割とはなんだろう。
寄り添うこと、教えること、手伝うこと、伴走すること、導くこと。

先生がしてくれることは、先生にお任せして。
うちでは、「だいじょうぶ」で満たしてあげることにしようと、あのときに思った。

息子が赤ちゃんの頃から歌っている、
「だいじょうぶの歌」というのがある。

だいじょうぶーだーよー
だーいーじょーうぶーだよー
だーいーじょーうーぶーだよー♪

歌詞はだいじょうぶだよ、だけ。
単調なメロディーで頭をなでながらこれを繰り返す、歌ともいえないようなものだけど、
息子がやわたし自身が不安で心配なときにはいつもこれを歌ってきた。

まだ赤ちゃんだった息子を沐浴していた頃
いつも決まってお風呂の中で泣くので困り果て、ふとこの歌が口をついて出てきたのだった。

昨夜眠るまえ、久しぶりにこの歌を歌った。
息子もわたしも、やっぱり不安なのだった。
大変大げさだとは思うけれど、神さま、どうかこの子を見守っていてくださいという気持ちでいっぱいだった。

「この歌きくと、なんか赤ちゃんみたいなきもちになる」「ぼく、この歌だいすき」

息子は眠そうな声で言った。
そして延々と続くだいじょうぶを聞くうちに、わたしの右肩におでこをくっつけてすうっと眠った。

だいじょうぶ、きっとだいじょうぶ。
そのままの君で、だいじょうぶ。
こわがらなくっても、だいじょうぶ。

新しいものに囲まれてどうも心が落ち着かない春の夜だけど。
きっと、あなたも。


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