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読むまちづくり

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2020年5月の記事一覧

30年目のステイホームを終えて

 西暦2050年、ある一人の男性がメディアの脚光を浴びることになった。  2050年の春、西賀茂の山裾の道路で、男性が倒れているのを、地元住民が発見。男性は、長いひげに、白い布をかぶっただけの質素な姿で、見ように寄ってはタイムスリップしてきた縄文人、あるいは伝説の仙人のようであった。男性は空腹と遭難で弱っており、彼を発見した住民はすぐに通報し、病院に搬送された。翌日、意識を取り戻した男性は、当初ひどく怯えた様子であったが、徐々に落ち着きを取り戻し、身元を供述し始めた。その結

「にぎわいの創出」とは「共地性と共時性の演出」だよねっていう話。

 まちづくり活動をする人々はしばしば「にぎわい」という言葉を好んで使います。「にぎわいの創出」というのが、事業の目標として設定されることさえあります。ではこのにぎわいとはなにか。辞書的には、「人出が多く、やかましいさま」であると説明されます。まちづくりに関して言うと、「ある特定の場所で、同時に多、数の人が、特定の財を共同利用している様子」と説明できそうだと考えています。これを格好良く言えば「共地性(場所を共にしているっぽさ)と共時性(時間を共にしているっぽさ)」と言えそうだと

「集めることで何かを強制する」という権力が、非集で見える化した、という話。

 最近、「あ、なるほど」と思ったことがあって。それは、学校というものに期待されてきたのは、「勉強すべき情報を発信するという機能」ではなくて、「勉強を強制する機能」なんだ、ということで。  例えば、勉強すべき情報を発信するという機能だけなら、オンラインビデオ授業で配信したっていいわけです。で、それだと、教養系のYouTuberとの差異はどこなの?別にYouTuberでいいんじゃないの?って話になります。話の下手な先生の授業を聞くくらいなら、YouTuberの話の方がわかりやす

「元通り集まってほしい」勢力と「集まりから自由になりたい」勢力との政治闘争が始まる予感がするという話。

 なんともアクセス数を稼げなさそうなタイトルですが、本文を読み返して、まあこういうタイトルが実態だよなと思ったので、こうしました。アクセスいただき、ありがとうございます。 非集環境で注目されたビデオ通話 疫病の影響で、様々な問題解決に当たって「集まる」という手段を抑制せざるを得ない状況を、僕は「非集」と呼んで注目してきました。  一方で、非集状況とはいえ、人々はなんらか他人と意思疎通を求めてきました。その中で期待をもって注目されたのは、オンラインビデオ通話という装置でした

「コミュニティにしかできないこと」とはなにか。あるいは「それをいかにやっていくか」。

非集時代に入り、コミュニティの本質を考える時間が増えた 今回の疫病騒ぎがまちづくり分野において示唆的だったのは、我々が様々な問題解決や価値創出にあたって、いかに「集まる」ことに依存してきたか、ということでした。その「集まる」という手段を抑制せざるを得ない状況を、僕は「非集」と呼んで注目してきました。  そんな非集の環境で、「コミュニティにしかできないことはなにか」という疑問が僕の周囲であがっていて。面白いなと思ったので、一度考えをまとめてみようと思いました。 コミュニティ

「いや別に怒ってないし」というのがすでに怒っているやん、という話。

 こないだ、検察庁法改正案が話題になってまして。  で、タレントの方々も意見を表明してたんですけど、そのことが炎上してたりするんですね。その現象について西澤千央氏がこう分析しています。 「悲しい」とか「辛い」と言われると「そうだよね~」と憐れみのような、若干上からものも言えますが、「こんなのおかしいですよね」と声を荒げられると、怯んでしまう。それは、たとえが正しいか分かりませんが、かわい~となでていた犬に急に吠えられたような感覚かもしれない。人々は芸能人が「怒」を表明する

水質に問題はなくても、パイプが腐っていると、水は飲んでもらえない。

 僕の住んでいる京都市には、こんな商品がありまして。  京都市が技術の粋を集めて作った水道水を缶に詰めて腐らないようにしたので、備蓄飲料としてご自宅にどうぞ、というわけです。これは災害対策であると同時に、京都市の水道事業のプロモーションでもあるわけです。  京都に限らず、日本の水道水は生でも飲める、みたいなことをよく聞きます。それでもちょっと不安だから、やっぱり沸かして飲んでます、みたいなこともまた聞きます。この不思議な矛盾は一体なんだろうと。  思うに「京都市の水道水

「自分を責める」感情という、華麗なる不可能犯罪トリックの話。

 「自分はなんてダメなんだ」みたいに、自分を責めた経験は、誰しも一度や二度はあるものと思います。その意味ではごくありふれた感情のあり方なのですが、この自責ってやつ、よく考えると面白い感情で。  というのも、自分を責めなきゃいけないような場面って、ただでさえ何か望ましくない事が起こっているはずなんですよね。なのに、その上で自分を責めるって、どういう了見なんだろうかと。泣きっ面に蜂を自分でやるのはなぜなのかと。  これ、思ったんですけどね。「自分はダメだ」と自責するとするじゃ

「ボランティア活動促進政策」としての「起業支援」の話 − 続・地域おこし協力隊講座

 以前、地域おこし協力隊制度には感情労働としての側面があるという話を書きました。今回はその続きです。  地域おこし協力隊制度には、起業支援政策としての側面があります。しかし、前回も記したように、地域おこし協力隊の少なくない人々が、起業や経営のノウハウがないこと、資金不足を悩みとして語っています。つまり、立ち上げたい事業のイメージはあるけど、そのためのノウハウはあんまりない、ということらしいです。  考えてみれば奇妙な話で。例えば本気で起業の成功を支援したいなら、もっと「ビ

大学の講義をオンライン化してみた感想、中間まとめ。

 疫病騒ぎで「非集」が要求された結果、僕が勤める大学では、4月からオンライン授業化を進めています。「非集」についてはこちらを参照のこと。  先日、第4回目の講義を終えまして、運営がだいぶ安定してきたので、いま時点での印象をメモしておこうと思います。  ちなみに、大学が始まる前はこういう想定をしていました。  さて、僕が担当しているのは2クラスで、どちらも15人程度の少人数演習です。基本的にどちらも同じ内容で、1年生向けには入学者用コンテンツをオプションでつけますが、2年

「ソフトなまちづくり」の「ハードな工学」の話。

 先日、某・建設コンサルタント会社の新入社員研修で話題提供しました。主に橋梁や道路といったハードの建設を得意とされる会社だそうで、そのため社員も工学屋さんが多いそうなのです。しかし、これからの建設コンサルは、地域住民との参加や協働といった「ソフトのまちづくり」も知っていなければならない、ということを、新入社員には伝えたい!というご依頼で、白羽の矢が立った次第です。  さて、ハード系まちづくりは、橋梁や道路といった、具体的な成果物が目に見えるので、何がどうなれば成功か、わかり

「やりたいこと」は十分な資本がインプットされた結果生じるアウトプットなんじゃないかな説。

 よく「自分のやりたいことを見つけましょう」みたいに言いますよね。しかし、「自分の好きなことってなんだろう」と戸惑う人も少なくないんじゃないかと思います。僕もそうですし。で、それはなんでやろ、と考えた「やりたいことの見つけ方」を書いてみます。  例えば都内の一等地に広い土地を持っているとするじゃないですか。ビルとか建てたら年に何億か生み出すような。とすると、そりゃなんらか活用したくなりますよね。これがいわゆる「やりたいこと」なんですよね。  つまり、資産がしたいことを生み