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Photo by
y_kayon
【ショートショート】「猫たちの囁き」 /武器屋の餌付け
「武器があるから戦争がなくならないんだ」
武器屋である私はよく皆に言われる。
陰口だけでなく、面と向かって言われることも。
昔からの家業を継いだ。
「武器がなくなれば身を守れなくなる。大切な仕事だ」
昔から父は私にそう言い聞かせていた。
しかし、もしかしたら自分にも言い聞かせていたのかもしれない。
私の目標は武器屋がこの世界からなくなること。
この世界が武器を必要としない世の中になること。
こんなことを考えている武器屋はおかしいだろうか。
ニャ~
いつも来る野良猫たち。
お前たちも以前は飼い主がいただろうに。
兜を逆さにした器に餌を盛り付けた。
武器は使い方一つで武器ではなくなる。
今は武器が必要かもしれない。
しかし武器が不要になったとき、剣は料理用ナイフに、盾は強固な外壁に、爆弾は岩盤を穿つ道具に変化させることもできる。
武器の存在が悪いのだろうか。
本当に変わるべきは物ではなく人間の心だよ。
家を失った猫たちの囁きが聞こえたような気がした。
(410字)
終
こちらの裏お題に参加させて頂きました!
よろしくお願い致します🙇