東妻蛍

読書記録とたまに掌編程度を書いたりなど。 小説自体はエブリスタとかにもアップしてます。

東妻蛍

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最近の記事

【掌編】猫だったらよかったのに

いつぞやの超妄想コンテストに投稿したもの。  「ネコ」という動物がおります。知らない人はほぼほぼいないでしょう。では「ネコ」はなんで「ネコ」というか。これは知っている人もまあまあいるでしょう。よく寝るからです。寝る子と書いて「寝子」としたところから「ネコ」の名前は来ているんでございます。  「ネコ」、これが可愛らしい。寝ているところもまあ素晴らしい。大変に可愛らしい生き物でございます。小さいものから大きくなるものまでおりますが、押し並べて可愛らしい。もちろん異論は認めます。

    • 【掌編】救いはこの世のどこにある

      エブリスタ超妄想コンテスト【あと一回】落選。毒親家庭の話なので注意してください。 「頼む由佳里。一度だけチャンスをくれないか」 「いやよ。前そう言われてそっち行った時も嫌な思いしたもの。もう私はあの女に会わない方がいいのよ」  今まで私を苦しめたものを実家とも母とも呼びたくなかった。本当は父とも連絡を取りたくなんてない。家を、私を顧みることがなかった男なんて口も聞きたくない。しかし何か一つ連絡手段を残しておかないとあの人たちは厄介な手段をもってでも私に接触しようとするだろう

      • 【掌編】あなたはカエルの王子様

        エブリスタ超妄想コンテスト「雨上がり」落選。供養供養。  傘も持っていない日に通り雨だなんてついていない。そう思っていたのだけれど、まさか王子様に出会えるなんて。ちらりと横目で隣に立つ男の子の様子を伺う。しかし同時に男の子がこちらを見たので慌てて目線を下に向けた。変に思われただろうか。でも目が合ってしまったらもっと好きになってしまうような気がした。今まで誰を見たって、どれだけ世間で人気があるアイドルを見たってこんな気持ちになったことなんてなかったのに。  男の子は同い年くら

        • 【掌編】夫婦のさだめ

          選外佳作にいました……びっくり(24/10/10追記) 「小説でもどうぞW」に投稿したんですけど、「小説でもどうぞ」と規定が違うの見逃していてページ数規定失敗してたのでもう駄目だと思いまして供養……。お題は「さだめ」でした。 「はい。今日は今週の夕飯の献立ドラフト会議を行っていきたいと思いまーす!」 「ちょっ、なんで今言うの! もう一通り決まってます!」 「えー。まあちょっと付き合ってよ。ね?」 「せめて買い物に行く前に言いなさいよ。さっき一緒に行ったのに」  どうも夫は

          【掌編】キャンバスの如き世界

          第36回小説でもどうぞ「アート」落選作品。供養供養。 「最近、子供に声かける不審者が出るって。心配ねえ」 「へえ。怖いね」  僕は成人男性だからきっと関係ないが、一応注意しておこう。そんなことを考えながら朝食を終えて二人分の皿を洗う。 「じゃあ今日も出かけるから」 「あんたも気をつけなさいよ」 「大丈夫だよ。行ってきます」  母の心配性も困ったものだ。不審者が出るというのは気味が悪いが、もう息子は三十路手前。危険なことなんてないだろうに。  のんびりと公園まで歩く。ずっと暮

          【掌編】キャンバスの如き世界

          【掌編】私のお父さんは名人です。

          公募ガイド第35回「小説でもどうぞ」【名人】に投稿し、落選しました。供養。 「望奈、今日の参観日で作文を読んだのよ」  傑作だったと笑う妻に微笑みかけ、温かいお茶を二人分淹れる。当の娘は今日の参観日できっと張り切りすぎたのだろう。僕が帰宅するまでに寝入ってしまったらしい。ちらりと望奈の寝室につながるドアに目をやるとその眼差しがよほど寂しそうに見えたのだろうか、妻はクスリと笑みをこぼした。 「そんなによかったのなら、僕も聞きたかったな」 「ええ。あなたにこそ聞いてほしかった」

          【掌編】私のお父さんは名人です。

          【掌編】黒尽くめの彼女

          エブリスタ超・妄想コンテスト「黒」に投稿しました。そして落選。百合風味。  可愛い格好が好きだ。自分のことを表現できるような気がするから。ピンク色で襟元にはフリルもリボンもついたブラウスに短めのスカート。裾にはレースも忍ばせて。よし、今日の格好もばっちりきまっている。ああ、少し無理に勉強してでも私服オーケーの高校にしてよかった。 「志! いつまでも鏡の前でニヤニヤしてないの。遅刻するわよ」 「え……あーっ! 何でもっと早く言ってくれないの!」 「まさか身だしなみを整えた後に

          【掌編】黒尽くめの彼女

          賞レース、とんでもないミスしてた

          昨日、公募スクールの課題を執筆していて気づいたんですけど、原稿用紙5枚換算って2000字ってわけではなくて400字詰め原稿用紙5枚に収まるようにって意味ですね……今まで全部やらかしてました。なんで気づかんかったん。 つまり私は規定違反をしていたわけで、そりゃ選ばれるはずないわ。何してるんですか。 しかし昨今はオンラインでの申し込みがメインなわけで、規定文字数、ページ数が賞レースごとに表記が揺れるというのはなんとかならないものなんでしょうか。 いやーーーーー、本当にやらかし

          賞レース、とんでもないミスしてた

          【掌編】運命の相手、とは

          恋人が自分以外の「何か」に夢中になっている時って一体どうすればいいんでしょうね。 「今度の日曜、ちょっと会えないかも」 「え、なんで」  恋人である駿斗にそんなことを言われてスマホを取り落とす。日曜はデートの約束をしていたのに一体どうして。  肩を落とした私を見て、駿斗は言葉を探すように視線を彷徨わせた。こういう時の駿斗は理由を詮索されたくないと思っていることくらい知っている。しかし引くわけにはいかない。日曜は遊園地に行く予定だった。そのために仕事も調整したし、土曜日に美容

          【掌編】運命の相手、とは

          文を書く上で成長したと思うこと

          元々長めの文章を書くのが苦手でした。それこそ書きたい題材でも2000字が精いっぱいとかよくあったり。 でもここ最近、文字数制限に苦労することが増えたというか。 先日アップしたファンタジー掌編も2000字そこそこのつもりで書き始めたら書きたい内容が膨らんでいって気づけば5000文字オーバー。まあそれでも短い方だとは思いますが。 (書きたい内容から必要となる分量が推測できないのはむしろ下手なのではとか思ったりもする) 今度エブリスタの公式コンテストにアップしたいと思って書いて

          文を書く上で成長したと思うこと

          【掌編】魔法使いの勘違い

          「旅」をテーマにしたファンタジーSSです。続けられるものなら続けたい。  魔物たちの動きが活発になるという赤い月の輝く夜、私は運命の出会いをした。……そう信じていたのだけれど。いや、まだ信じていたいのだけれど。現実というのは時に非情なものである。 「もうさ、よくない? 一回家帰りたいんだけど」 「ダメですよ! 貴方、世界救うんでしょうが!」  私が探し求めていた勇者様はどうやら相当なダメ人間らしい。飽きっぽくて実家大好き。そして面倒なことは大嫌いときた。逆になんでこの人はわ

          【掌編】魔法使いの勘違い

          【掌編】生きるということ

          小説でもどうぞに投稿した作品です。  母が死んだ。突然のことだった。  病気も何もしたことがない、健康な母だった。そんな母の命を奪ったのは、自動車事故だ。青信号で横断歩道を渡っていた時に、信号無視の車に横から突っ込まれた。医者が言うには即死だったらしい。  新聞には小さく記事が載ったが、すぐに忘れ去られてしまうよくある事故。そんな呆気ないもので、母は命を奪われた。  母の亡骸を前にして、父も自分も嘆き悲しんだ。でも、私に果たして嘆くような権利はあるのだろうか。年齢を重ねても

          【掌編】生きるということ

          【掌編】校舎裏であなたと

          小説でもどうぞに投稿した作品。これも第何回かも失念。  桜が咲くにはまだ少し肌寒い季節だ。思い返すのは長いようで短かった三年間。私たちの高校生活は今日幕を閉じる。 「いやー、花の高校生活、なんもなく終わったんだけど」 「花の……って言い方、ババアじゃん」  卒業式もクラスでのお別れの挨拶も終わり、既に人もまばらになっている。学校に残っている卒業生はほとんどおらず、在校生達も部活に精をだしている。そんな中、体育館裏で土を掘りながら、隣でわたしと同じようにシャベルを抱えた晶子に

          【掌編】校舎裏であなたと

          【掌編】人に騙されやすい父の話

          小説でもどうぞに投稿した作品。第何回かもお題も失念しました。 父は昔から騙されやすい人だった。人を疑うということを全く知らない人だった。  友人に騙されて、投資話で貯金を失ったことがある。兄弟に唆されて祖父母の財産の相続放棄もさせられた。父の友人が借金をする際の連帯保証人になったことで家を失ったことすらある。散々な目に遭ったにもかかわらず、父はそれでも一度信頼した人のことを最後まで信じ抜く人だった。  借金の連帯保証人になった時が一番悲惨だった。毎日のように借金返済の追い込

          【掌編】人に騙されやすい父の話

          【掌編】だからあなたにありがとう

          第31回「小説でもどうぞ」に応募したものです。供養代わりに。 「やあ、久しぶりだね。元気だった?」  ベンチに座ってスマホを眺めていた俺の横に腰かけた男はにこやかにそう声をかけてきた。気安い口調だったがこちらとしては男に一切見覚えがない。ただ湛えられた笑みが白々しいものに見えて不快感を覚えた。ただでさえ社内の雰囲気が悪くて息も詰まるほどだというのに、せっかく見つけた誰もいないスペースでこんな奴に絡まれるだなんて全くついていない。  そう。ここ最近、社内の空気は最悪だった。今

          【掌編】だからあなたにありがとう

          愛の証明とは(読書記録2)

          『夏の終わりに君が死ねば完璧だったから』 著者:斜線堂有紀 KADOKAWA  何の問題もなければ単なるボーイミーツガール、青春の一ページとして終わっていく恋物語であったはずなのに。立ち塞がる一つの障害が二人の関係性に名前をつけさせてくれない。 以下ネタバレを含みます。  二人の関係性が純粋で美しいものであるが故に大金に目が眩んだ周囲の言動がより醜悪に映る。もちろん主人公である江都からもそう見えているのだけれど、本人は本人で「自分は三億円の価値があるから弥子さんが好きな

          愛の証明とは(読書記録2)