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煮炊き物|冬瓜の煮物

乃木坂しん」店主の石田伸二による食材エッセイレとレシピの連載「煮炊き物の12カ月」の第5回目は「冬瓜の煮物」です。

梅雨が明け、毎日のうだるような暑さと食材たちの変化が、夏本番へと気持ちも身体も連れていってくれる、今日この頃です。毎年の事ですが、この時期に自転車通勤をしていると、朝の日差しで、顔と腕がやけてくるので、いつもお客様に「どこに遊びに行ってたの?」と言われます。本当は出勤やけなんですけどね(笑)。

皆様こんにちは、乃木坂しん店主の石田です。いつもnoteを読んでいただきまして、本当にありがとうございます。

毎月の献立で使った食材のなかから煮炊き物について書かせていただいております「煮炊き物の12カ月」の7月(もたもたしていたら8月になってしまいましたが)は、「冬瓜(とうがん)」の煮物を紹介しようと思います。魚介類やお肉などいろんな食材と組み合わせても相性が良い、自分は毎年必ずこの時期には使っているお野菜の一つです。

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カリウムが豊富で夏にぴったり

まずは、いつもお客様に聞かれる名前ついてからお話していきます。

なぜ夏が旬なのに”冬の瓜”と書くのか疑問に思われる方が多いと思います。これにはちゃんと理由がありまして、冬瓜はしっかりとした皮のおかげで保存性が高く、夏に収穫した果実が冬まで貯蔵できるのです。冬まで食べられる瓜という意味で「冬瓜」と書くそうです。

もともと熱帯地方が原産ということもあり、日本での主な産地は沖縄、愛知、神奈川、岡山と関東以南で暖かい場所が多いのが特徴です。

次に原産地ですが、インドやジャワ島などの東南アジアといわれています。日本での栽培は平安時代にまとめられた『本草和名』に「カモウリ」として記載があることから、この時代にはすでに栽培されていることがわかります。

ちなみに『本草和名』は、日本現存最古の薬物辞典とされているとおり、冬瓜は古くから生薬としても使われていて、種子は冬瓜子(とうがし)、皮は冬瓜皮(とうがひ)という名前で使われているそうです。

栄養価で見てみると、冬瓜の95%は水分でできており、栄養価はさほど高くないという見方もできますが、それでもカリウムは比較的多く含まれています。カリウムは、むくみの解消や高血圧に効果があるといわれています。

またカリウムは、汗とともに流れ出る物質でもあり、暑い夏には不足しがちです。冬瓜のカリウムをしっかりとって暑さを乗り切りたいですね。

皮が緑で艶やか、中はぎっしり
詰まってみずみずしいものを

自分は、子どもの頃に冬瓜を食べた記憶があまりなく、馴染みのない野菜でしたので、料理人になってから触れるようになりました。それからは、夏には必ずみるお野菜で、毎年煮炊きをし続けています。

最初に教えてもらった炊き方は米のとぎ汁で下炊きをしてから出汁にかえ、干し海老と一緒に炊くやり方でしたが、今は下炊きはせずに、そのまま出汁から炊き始めて干し海老も入れずに炊いています。

人によっては皮を包丁でむくのではなく削りとったり、むいた皮目に重曹をすりこんで炊くことでキレイな緑色を大切にして炊かれる方もいらっしゃいますが、自分はそこまで気にせずに、仕上がりの食感と味の方に気を付けて炊いています。

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冬瓜は、初めは触ると痛いほどの白い毛に覆われていているのですが、熟していくうちにその毛が落ち、表面に白い粉がかぶったようになります。これが完熟のサインです。

ただ、スーパーなどに並んでいるものの中には、ふいた白い粉を拭き取ったりしているものもあるので、そういういった場合は、緑色の鮮やかでツヤのあるものを選んでください。

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カットしているものなら、切り口が真っ白でみずみずしい感じがあって、種のところまでしっかり詰まっているものを選ぶとよいと思います。

冬瓜は大きいので、一度にすべてを使いきれないと思います。その場合は、ある程度の大きさにカットしてワタと種の部分を切り取ってからキッチンペーパーとラップでくるんで、冷蔵庫で保存してください。

それでは、冬瓜の煮物の作り方をご説明していきます。

材料
冬瓜ーー10切れ(5cm✕5cm)
出汁ーー600cc
塩ーー小さじ1
味醂ーー大さじ1
薄口醤油ーー大さじ1


1.  冬瓜を5cm角の大きさに切り出してから薄く皮をむきます。

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2.  むいた皮面に格子状に包丁で浅く切り目を入れておきます。

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3.  鍋に切り出した冬瓜を入れ、そこに出汁を入れてから落し蓋し火にかけます。まずは強火でかけ、沸いてきたら弱火にしてゆっくり炊いていきます。

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4. 20分ほど炊くとだんだん果肉が透明になってきます。それが火がとおってきた目安です。一度竹串などを差して火のとおりを確認してから、調味料(塩、味醂、薄口醤油)を入れて、そのまま弱火で20分ほど炊いて仕上がりです。

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5. 炊きあがったらそのまま冷まして、味をしっかり含ませてください。

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炊きあがったとうがんは、そのまま冷たく召し上がっていただいても結構ですし、温かくして餡かけなどに仕立ててもおいしく召し上がっていただけると思います。

しっかりお出汁を含んでやわらかい冬瓜の身の食感と、皮面の少し硬い部分に格子状に包丁を入れたことで、ホロホロと口のなかでほどけて、食感のアクセントにもなっているかと思います。

ぜひ、ご自宅で試してみてださい。

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次回のnote更新は支配人・飛田の「ひと・もの・ことで命を吹き込む」の第4回です、お楽しみに!

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編集=江六前一郎

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