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デザインと経営を考える
「デザイナーになりたい。」
そんな希望を持って、大学を卒業した僕は社会へ出た。
しかし、実際にはプライベートでバンド仲間のデザインを手伝うことがあった程度で、デザイナーとしてのキャリアを築くことはありませんでした。
ディレクターやプロデューサーとして、いろいろなクライアントのWebサイトやデザインを支援する仕事に関わる中でデザイン経営というものに出会い、一般的にイメージするようなビジュアルを作るデザイナーとは異なるデザイナーの道もあるのかもしれないと、諸々学びながら実践してきました。
このnoteではそれらを通じて理解を深めてきたことがデザインと経営に関心のある方の何かの役に立てばいいなと思いまとめてみました。
1.デザインってなんだろう
デザイン経営という言葉もだいぶ広まってきたので、耳にしたことのある方も多いのではないでしょうか?
きっと「デザイン思考?」「ブランディング?」「デザイナーを経営者に抜擢?」あたりのキーワードを思い浮かべるのではないでしょうか。
いきなりデザイン経営について掘り下げていかずに、まずはデザインという言葉を定義することからしていきましょう。
Design is a solution to a problem. Art is a question to a problem.
デザインは課題解決する方法。アートは問題提起するもの。
この言葉は「美大のハーバード」と呼ばれるロードアイランドスクールオブデザインのプレジデントであり、MITメディアラボでも副所長を務めていた有名な日系アメリカ人グラフィックデザイナー ジョン・マエダ氏がデザインとアートの違いについて語ったものだが、僕の中でのデザインの定義に一番近い言葉のため引用させていただいた。
デザインは課題解決の方法だ。
デザインで解決されたもの
デザインは僕らの生活を取り巻く、ありとあらゆるところで活用されていて、気づかないうちに生活を豊かに便利にしてくれている。
これを書いている僕の書斎にもちょうどデザインされてるなーと感じたものがあったので、この2枚の写真を少し観察いただきたい。
![](https://assets.st-note.com/img/1665315670576-sZj33JUyqt.png?width=1200)
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どちらも鉛筆なわけですが、
パッと思いつくところだけでいくつもの課題を解決している。
細くなった
→人の手で持ちやすくなって書きやすい真っ直ぐになった
→削りやすい表面を加工
→清潔感が出た
他にも、ペンケースの中でかさばらないようになったとか、規格統一することで鉛筆削りやキャップといった便利な付属品を使いやすくするみたいなこともあるだろう。
このように、僕らの身の回りにはデザインによって課題解決されたものが溢れかえっている。
2.経営資源としての3つのデザイン
デザインについてもう少し掘り下げていきたい。
デザインという言葉は日本語では1つの表現だが、英語では3つの綴りで表現される。
そして、同じ読み方だが、異なる意味を持っている。
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design:見た目のデザイン「意匠」
すべて小文字のデザインは見た目のデザインのことを指す。
商品やサービスの魅力を伝えるためのデザインであり、ターゲット層が予め明確なので完成後の改善は大規模な見直しタイミング以外では原則ないものだ。
Design:操作性のデザイン「利用」
頭文字のみ大文字のデザインはデジタル上で目的に到達しやすく、操作性を向上させるためのデザインを指す。
いわゆるユーザーインターフェイスのデザインが該当するわけですが、ターゲット層・利用環境が多岐に渡ることやサブスク型のプラットフォームで利用されることが多いため、完成後も常に改善されるもの。
DESIGN:広義のデザイン「設計」
すべて大文字のデザインは事業やビジネスの課題解決のプロセスを担うデザイン。
誰がどんなシーンで利用するか、価値や体験を設計していくもの。
デザイン思考を活用して事業を生み出したり、改善していくこともこれに該当する。
この3つのデザインを見ると、「DESIGN」を活用することがデザイン経営のような気がしてくるが、私の解釈ではそうではない。
この3つのデザインを「経営資源」として活用していくことこそが、デザイン経営なのだと僕は解釈している。
3.社会の変化とデザイン投資
お次は社会の変化から、なぜ現在の経営にデザインが必要とされるのか?
イノベーションの歴史から見ていこう。
![](https://assets.st-note.com/img/1665322529747-LqfHbu2rLb.png?width=1200)
第一次産業革命
機械化で大量生産が可能となる。
蒸気機関車や車もこの時代に発明された。
第二次産業革命
電気が登場によって、さらに生活が便利に。
日本がモノづくりの国として大きく成長したのがこの時代。
第三次産業革命
パーソナルコンピュータからソフトウェアの時代が到来。
ハードウェアとソフトウェアの融合により生み出された発明の1つとして、スマートフォンが登場して産業構造が大きく変化し始めた。
第四次産業革命
あらゆるものがインターネットにつながるコネクティッドの時代。
ハードウェアとデジタルを融合したビジネスでデータやAIが活用されはじめ、そこで開発された革新的なプロダクトを広めるために、激しい競争が生まれて、顧客体験の質がビジネスの成功に影響を与えるようになっているのではないかと考えている。
インターネット登場からここ20年で、上記のような目まぐるしいテクノロジーの進化が起きており、これまでの常識を覆すゲームチェンジが起きているのだろう。
余談になるが、ゲームチェンジは僕の好きな音楽を取り巻く環境で何度も起きていて、わかりやすい例なので具体例として紹介しておこう。
ゲームチェンジ1:ウォークマンの登場
これまで家で聴くものだった音楽を持ち運ぶことが当たり前に。
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ゲームチェンジ2:iPodの登場
所有している音楽すべてを持ち歩けることが当たり前に。
↓
ゲームチェンジ3:サブスク型音楽配信サービスの登場
音楽は所有しないものに。
デザイン投資が市場競争力を高める
このようにゲームチェンジが起きると従来のビジネスで関わっていたプレイヤーが今まで通りでは戦っていけなくなる。
だから、顧客(人)を中心に考えて、市場から選ばれるようにデザインを投資する企業が増加してきているのではないか。
具体的にはこの2つの取り組みをすることで、企業の競争力を高めている企業が多いのだろう。
そして、この取り組みを推進するには先ほど紹介した3つのデザイン資源を組み合わせることが必要だ。
![](https://assets.st-note.com/img/1665324729420-UQoQvtlrAo.png?width=1200)
実際に欧米ではデザインへの投資をする企業が、高いパフォーマンスを発揮しているとデータでも証明されている。
![](https://assets.st-note.com/img/1665324944352-0TLzFBxtwu.png?width=1200)
4.最後に
2018年に経済産業省・特許庁が発表した「デザイン経営」宣言という資料の中で政府として推進しているデザイン経営について明記されているため、僕の解釈も加えながら要点を紹介して、おしまいとする。
デザイン経営の役割
![](https://assets.st-note.com/img/1665326283100-N5c52cJLlZ.png)
・ブランド構築に資するデザイン
・イノベーションに資するデザイン
先ほど、社会的な変化から求められている2つの取り組みとして紹介したデザインのことですね。
僕のほうではさらにもう1段階掘り下げた解釈をしていて、この資料で語られているデザイン経営の役割は、「両利きの経営」に近い考え方へ落とし込まれているのではないかと考えています。
![](https://assets.st-note.com/img/1665326558994-OTv2o9FjwI.png?width=1200)
ブランド構築に資するデザインは価値を磨きあげて「深化」させる手段として活用し、イノベーションに資するデザインは新たな価値を生み出すことによって「進化」させる手段として活用されていくことで、企業価値を高めて競争力を向上させることにつながっていくのではないか。
デザイン経営」の定義
![](https://assets.st-note.com/img/1665327253165-MjavAZsP9q.png?width=1200)
ここまで散々語ってきたが、この資料ではデザイン経営の必要条件として、
経営チームにデザイン責任者がいること
事業戦略構築の最上流からデザインが関与すること
の2点を挙げている。
デザイン経営の具体的取組例
![](https://assets.st-note.com/img/1665327443724-L5h3XbWLta.png)
抽象的なところが多いこの資料内で取り組みの具体例が出てきて比較的明確に情報が書かれているのがこのページです。
表現は色々な捉え方ができる資料のため、この資料を参考にどう具体的な営みに落とし込むかはデザイナーを翻訳者として挟んでおくのがいいでしょう。
まとめ
ここまで、さまざまな視点からデザインと経営についてまとめてきたわけですが、デザイン経営も結局は課題解決手法の1つだと思うのです。
問いをたてて、解決のために必要なところへ経営資源を投下していく際に、デザイン資源も活用することが選択肢の1つになる時代が到来している(のかもしれない)。