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リカバリーカバヒコ
青山美智子さんの「リカバリーカバヒコ」を読んだ。
本屋大賞にノミネートされた作品だ。
アドヴァンスヒルというマンションに住む人たちを中心にした
連作短編である。
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公園によくある、またがるだけの動物の像。
そのカバヒコをなでるとご利益があると言う。
自分の悪いところを撫でるのである。
お賓頭盧様という羅漢さんがよく寺にあって、皆が撫でている。
今はそこら中のそのての像をみんなで撫でていると思う。
「ダメなところをリカバリーしてくれるんだよ。カバだけに」と言って
教えてくれるのは、公園のそばのクリーニング屋のおばあさんだ。
そのおばあさんは、預かった洋服の取れかかったボタンをつけてくれたりする。そして悩んでいる人の気配を感じて教えてくれるのである。
どこそこのお寺にあるお賓頭盧様が なんて言っても人は警戒するだけである。宗教の話の続きには金の話がある時代であるし。
けれど そこの公園のカバがね と言われたら、ちょっと寄ってみようと思うかもしれない。
悩んでいる者は、良くなりますように と祈れないこともあるのだ。
自分の悩みの中でぐるぐるしている人には
祈ることでさえ一大決心だったりする。
祈りの中に、悩みのぐるぐるを突破するちいさな糸口ができるのである。
内から外への思考の糸口。
何が嫌だったんだっけ、 で、どうしたいんだっけ
それから突破するために必要な人と出会うことができる。
運動が苦手な小学生がいたり
ママ友の中からはじかれてしまった人がいたり
恋愛面と仕事の人間関係とが合わさってストレスになってしまった人がいたり
それらの人をカバヒコへと導くおばあさんの物語もある。
そんな人たちが少し本気でリカバリーしたいと祈り、その結果
誰かと話すきっかけを得る。
それはシンクロニシティというやつである。意味のある偶然だ。
カウンセリングの現場では、そんな都合の良い と言いたくなるような
できごとも起こることがあるのだそうだ。
そこまで都合よすぎないギリギリの感じで書いている作者は素晴らしい。
悩みが解決した人たちの前を向く姿を見たいのが読者である。
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