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書籍『楽しいの作り方』 #07 DEPOPICで学んだ遊びの本質

#06では、遊びの"コンテンツ"ではなく"環境"を作ったほうがいいのではないか?と気付いた瞬間のエピソードを書きました。

詳しくはコチラ↓

#07 ではその翌週に起こった決定的な出来事のお話をします。それは僕自身が企画・運営した『遊びの祭典DEPOPIC』での学びです。

佐賀県鳥栖市の陸上競技場を丸ごと貸し切って開催したこのイベントは、地方におけるスポーツイベントの正解を作ろう!と思い、スポーツの語源であるラテン語Deportare(デポルターレ)とピクニックを掛け合わせた造語DEPOPIC(デポピック)と名付け大々的に開催しました。

来場者約2500人、出演&協力者約120人と盛り上がったこのイベントでは、陸上競技場内でアルティメットなどのスポーツ体験会を時間ごとに入れ替えて開催したり、囲われた枠の中で1対1で鬼ごっこを行うチェイスタグというスポーツの簡易版「鬼ごっこジム」をしたり、キックターゲットやストラックアウトなどスポーツの簡単な体験ブースがあったり、様々な”コンテンツ”を用意しました。

#06 までで解説していた通り、当日はそれらの体験ブースにお客さんが殺到して、長い列を作っていました。そのお客さんたちは20、30分炎天下の中、広大な陸上競技場内で立ち尽くして待っていました。そうしてようやく自分の番が来て、4,5球や数十秒体験をして去っていきます。もちろんそんな長蛇の列なので保護者である大人がプレイする隙はありません。

スポーツ体験ブースに長蛇の列

そんな中、ふと横に目をやると、グラウンド内で友達とサッカーボールでパスをし合う子供がいたり、陸上トラックで親子でかこっこ競争する家族がいたり、外のパークエリアでモルックを楽しむ大人たちや芝生広場でコーヒーを飲みながらのんびり過ごす人たちがいました。

芝生広場で遊ぶ大人と子供

『あそびの祭典』と銘打ったこのイベント会場内でどちらが”遊び”の本質に近いのか?僕自身がこのイベントを企画していた時に思い描いていた画にごちらが近いのか?

また、イベント終了後に関係者や参加者からメチャクチャ好評だったのが、競技場の外の芝生広場に用意したミュージックブースとアートブースでした。

ミュージックブースは、ギターやドラム、木琴などの楽器をバラまいて、あとは参加者に自由に打ち鳴らしてもらうという”環境”でした

DEPOPICミュージックブース

たまにはギタリストの方がその辺の人に声を掛けて、同じリズムでドラムやカホンを叩いてもらって即興でセッションをしたりもしてました。

アートブースは、あらかじめ作っておいた藤棚のような建造物にみんなで風船を膨らませて飾っていき、カラフルな日よけを作るというインスタレーションアート”環境”をつくりました。

DEPOPICアートブース

そして、さらにアートブースでは出店者が用意してたエコバックに自分で絵を描いてオリジナルバッグを作るという体験コンテンツが勝手に生まれて行われてました。

アートブースでエコバックに自由に絵を描いていく

このエコバックお絵描きは、イベント前に事前に用意したわけでもなく、元々そんな想定をしていたわけでもなかったんです。たまたまその場に居合わせたメンツがその場にあった道具でその場の環境で考えて実行した。まさに”遊び”だったんです。

こんな”コンテンツ”が生まれたのは、ひとえにこの”環境”があったからこそです。たまたま大量のエコバックがあり、ポスカがあり、アートブースに絵を描けるような台がたまたまあった。そしてこれらのコンテンツの発想が出来る出店者とアートディレクターがその場に居た。

自由に絵を描く子供をそっと見守るアートディレクターKUREHA

こんなミュージックブースとアートブースがこのイベントにおいて、とても価値の高いものになり、多くの方から大好評で、まさに企画段階で思い描いていた『遊びの画』を体現する場となっていました。

このDEPOPICの経験から、僕はこれらオープン型のイベントにおける賑わいの作り方、楽しいの作り方を自分なりに考え直すようになりました。そしてコンテンツと環境の違いやその効果などについても考え、実践し、あらゆるシーンでも考え始めて、遂にはこのような一冊の本を出版するまでに至りました。

遊びの定義は様々ですが、多くの場合は「主体性(自ら進んでやること)」「不確実性(不確定要素があり不安定であること)」などがあるものだと論じられることが多いです。

つまり「用意された”遊ばせて”もらえるコンテンツ」は遊びとしては伸びしろが少ないのかもしれません。もちろんそれらが遊びじゃないとは言いません。現に行列が出来るほど人気なんです。勘違いして欲しくないのはそれ自体は悪ではないんです。

ただし、会場内に多くの遊びを生み出し続けられて、笑顔の来場者をより増やせるのはやはり、コンテンツより環境ということだろうと思います。遊びの場というのは、自発的な探求と楽しみを促す環境でなければならないということです。

マルシェなどのオープン型イベントを主催する人は、これらのことを理解した上で企画・設計をしていく方がより「楽しい」を作ることが出来ると思います。

くれぐれも気を付けて欲しいのは前述したとおり、あくまで体験ブースなどのコンテンツは悪ではないということです。全く必要がないわけではないんです。それぞれの役割があるという話です。

じゃあ体験コンテンツの役割、遊び場という環境の役割は何なのか?それについて#08 以降でお話していきます。

ここも非常に分かり易い具体例がありましたのでそれを紹介しながら進めます。

『DEPOPIC』終了後、すぐに今回の気付きについて触れていたnoteはこちら↓

https://note.com/nobito_hikaru/n/n16ac9df30bef

『DEPOPIC 2022』の開催の様子はこちら↓


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原田 光
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