統計的な推測 勉強法 各論
対象読者
確率分布と統計的な推測をこれから学ぶという方や苦手でこれから克服していきたいという方が今回の対象です。
実際に勉強した経験、教えた経験を元にどう勉強すれば、この統計的な推測の単元を上手に勉強できるかについて触れていきます。
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単元の概要
統計的な推測と聞くと推定、検定がメインに思えるかもしれませんが、実際は推定、検定をするための道具(確率論)集めがメインになっています。
大まかに前半の確率分布、後半の統計的な推測の範囲に分かれ、今言った道具集めが確率分布、推定、検定の話が統計的な推測になります。目次などを見てもらうと分かると思いますが、明らかに確率分布の方が内容が重いです。そしてこの前半は内容的にも理解するのが大変な部分でもあります。つまり、この前半部の確率分布をいかにスムーズに学習できるかがこの単元の攻略のポイントになります。
この単元は他の単元に比べ必要な前提知識や用語が多いです。それゆえ、知識不足や用語の数に呑まれて理解できない状態に陥りやすいです。考え方や用語が頭に馴染むまでの最初がきつく挫折する原因になってしまっています。特に前半の確率分布の所はその色が強いです。
理論的な部分(特に前半)にハードルがあるので大変ですが、出題される問題自体は単純なものが多いですのでそこまで心配いりません。特に共通テストレベルであればかなり簡単です(教科書レベルとのギャップが小さい)。よって、この単元では繰り返しになりますが前半の確率分布の所をいかに凌ぐかが学習の肝になってきます。
一通り概要を説明をし終えたので、次は具体的にどう勉強すればいいのか、前半をどう凌ぐかにスポットを当てつつ勉強の仕方に触れていきます。
具体的な勉強の仕方
*解けている人、分かっている人に教わる
→基本は参考書や本で独学しないほうがいいです。本だけでやろうとしてしまうと、全体像や押さえるべき勘所、知識の使い方、重点の置き方、正しい理解の仕方、式の正しい見方などが上手くできないことが多いです(今現在肝心な事を説明していない、教科書を焼き直したような説明不足な参考書が多い)。それに、仮にできたとしても1人でしてしまうと、一から理解や体系を組み上げていかないといけないので、どうしてもかなりの時間をくってしまいます。時間がかかってしまうとこの単元の良さが薄れてしまいますし、挫折する原因にもなってしまいますので、あまり独学は得策とは言えません。
独学ではなく、すでに解けている人・分かっている人に教わることで、これらの問題点が解決され、統計的な推測の強みである短時間で高得点という特性を生かしやすくなります。できるだけ人から教わるようしてください。
※ただし、これは全員が全員できるものではないと思うので、今回は人に直接学ぶ機会が取れない、独学しないといけない状況に置かれている人向けを、メインに書いていきたいと思います。
*余裕があれば学習は数学の最後付近に
→他の単元の考え方を転用できる、転用しないといけない場面が多いです。可能であれば数Ⅲの極限と積分に慣れ親しんでから取り組んでもらったほうがいいです。難しい問題は解けなくてもいいので極限や積分の考え方、概念に慣れておくと、統計的な推測を学んでいく時に、直感的に理解しやすかったり、同じような概念が出てきて考え方を転用でき理解の手助けになることが多いです。
ここまで言うとめちゃくちゃ大変じゃんっ!って思うかもしれませんが、丸々使うのはデータの分析だけで、他の単元の確率、数列、極限、積分、式と証明などは、それぞれのほんの一部分を使うだけですので、そこまで心配はいりません。したがってあとでも触れますが、データの分析だけしっかりと学習をし、残りは不足を感じたらその都度復習するというスタイルがいいと思います。
※科目の性質が数ⅢCに近く、先に学習の仕方を学んでおいてほしいという面もあります。
※参考書が未発達か部分があり、今からどんどん発達し学習しやすい参考書が出てくることが予想されます。後に出てくるであろう学習しやすい参考書を使った方が、勉強も捗るといった面からも、統計的な推測の学習を後回しにした方がいいと思っています。
*データの分析を厚めに学習しておく
→データの分析で変量の変換や仮説検定が出てくると思います。変量の変換や仮説検定は数学Bでも、出てくるのでそこで教えればいいという考え方もありますが、個人的にはどちらも一旦数1でしっかり学習しておくことを強くすすめます。特に変量の変換に関しては、教科書に載っている平均、分散、標準偏差、共分散、相関係数だけでなく、標準化と偏差値についても学習しておいて欲しいです。統計的な推測の理解のしやすさにかなり差が出てきます。データの分析は学校でも適当に流されることが多く、なかなか定着していないことも多いので、統計的な推測の単元に入る前に一度腰を据えてしっかり学習しておいてほしいです。
教科書によっては回帰直線を扱っていると思いますが、そこは直接は使わないので自分の志望校でデータの分析の出題歴がない方は取り組まなくてもかまいません。
※データ分析の仮説検定は、最近だと穴埋めばかりさせて適当に流している学校が特におおいと思います。曖昧な理解だと挫折する原因になるので一度はしっかり勉強しておいてください。
*用語を噛み砕きながらしっかり覚える
→他の単元に比べ、統計的な推測では用語が圧倒的に多く、言葉だけ見ると誤解しがちな用語も多いです。問題文や説明に普通に出てくるので、理解して正確に覚えておかないと説明を聞いたり読んだりした時に何を言っているのか分からなくなってしまいます。物によっては問題で定義や言葉の意味が直接問われることもあります。これらのことから意識的に用語を理解して覚えようとしないと問題を解く時にも、説明を聞く時にも支障が出てきてしまいます。用語を覚えていくことで説明が理解しやすくなりますし、理解が深まる側面もあるのでしっかり覚えましょう。意味から用語ではなく、用語から意味が出るようにしてください。この側面は物理、化学に近いです。物理や化学でよくすることですが、最初のうちは用語を見るたびに意味をいう癖をつけておくようにすると、すぐに頭に定着します。
※個人的には用語をしっかり覚えて自分で使いこなせるようになったなと思う段階で一段、問題を解けるようになってきてから一段、証明を書けるようになってからまた一段、完全に人に説明できるよっになった段階でまたまた一段上がった感じがしました。用語を覚えることは理解を捗らせる上で非常に大切です。
*式の見方を工夫する、意味を考える
→式をそのまま覚えるのではなく、構造や意味を意識したり、言葉に置き換えたりしして覚えるようにしてください。式をただ眺めていてもなかなか頭に入りません。問題演習をこなしていくうちに自然と覚えられる(それこそ正規分布の確率密度関数は覚えなくていい物の代表例ですが何回か見るうちに勝手に覚えます)でしょうが、今話したことを意識するかしないかでは定着のスピードと知識の持続率にかなり差が出てきます。まともに考えずに覚えるとすぐに忘れます。式の見方を考える、構造的に考える、式から日本語への翻訳はいくつかある数学の基本思想の内の一つで、数学の力そのものの力をを鍛える練習にもなりますので、ぜひ勉強をする際は意識してほしいです。
*証明は「一旦」飛ばす
→証明は高校範囲ではできなかったり、仮にできたとしてもかなりハードなものが含まれているので、初学で通しで勉強していく時は一旦飛ばすことをオススメします。数学に苦手意識がない方は飛ばさずにそのまま取り組んでもらっても大丈夫です。学んだ知識の復習や、数学の思考法を使う練習ができ、数学の力を高めることができますし、直接証明が問われたり、証明の中で使う考え方や変形が問題で問われたりすることもあるので、取り組む意味はかなりあります。余力がある方は是非取り組んで見てください。
※できた方がいい証明と、できなくてもいい証明があるのでそこが独学だと判断しにくいと思います。
※証明に取り組む時は必ずポイントや思考法を意識してください。ただ写経したり、操作をおったりするだけだとあまり意味がありません。
*問題演習に軸足を置いておく
→この統計的な推測の単元は理論的な部分では難しいことが多いですが、問題はシンプルなものが多いです。理論的な所は、場所によってはかなり沼なので、自分が何をできるようになればいいのかというゴールを明確にして間違った方向に進まないためにも他の単元を学習する時より、意識的に問題演習を大事にして欲しいです。理解に重きを置きすぎて挫折するのがありがちなパターンです。そうならないためにも問題演習を大切にしてください。問題を解くことでしか見えてこない部分があります。問題という具体例を通して自分の荒い所が見つかり理解が深まったり、出題のされ方の濃淡も理解できるので本当にいいことばかりです。
※数学が得意な人はいきなり共通テストの実戦問題集に取り組むのもありです。解いてみると内容の出題頻度の差や出題の仕方が分かり、勉強の指針を立てやすくなります。
※正直わかっている人に実戦問題集を使って教わるのが、問題を解けるようになることだけを考えるなら最速の道です。
*分からない所は調べる
→参考書を読んでも、問題を解いても理解しきれない所が出てくると思います。そういった所はどこまで理解できていて、どこからは理解できていないのか明確にして一旦飛ばしてしまうというのも一つの手です。ただ、それをする前にまずは自発的に調べてください。調べる対象は、教科書、参考書、YouTube、ネット、一般書、検定の対策本、大学の教科書なんでもいいです。最近追加されてた情報でも言える話ですが、実際に使われている例や他の説明を読むと、理解できないと思っていたことも案外すんなりと理解できたりします。使う道具をわざわざ制限する必要はないので、色んなものを使って是非調べてください。
*説明を聞いて曖昧な所が出てきたら必ず復習
→単元に入る時にも他の単元の前提知識がそれなりに必要ですが、当たり前ですが後ろに行けば行くほど単元の中の知識(すでに学んだこと)も前提になっていき、前の内容が曖昧だと理解に支障をきたしてきます。戻ることはなかなか勇気が必要なことですが、それが近道になることも多いので曖昧な所がでてきたら必ず戻って復習するようにしてください。
最初にも述べましたが前半のの確率分布をいかに乗り切るかが勝負になります。
これかのことを意識しながら上手に切り抜けてください。
問題集参考書について
正直今現在高校生向けのまともな参考書はほぼありません(指導者向けのものはあります)。肝心な説明が全然かいてないです。教科書を焼き直したようなものばかりで説明もほとんど説明になっていないので、初学の人が読むと式をただいじくり回しているだけに見えたり、起きていること、していることの実感が持てなかったりし、あまり面白く感じないと思います。これがこの単元を学習した人がよく抱く少ない公式を覚えるだけという状況に繋がっていると思います。
だからこそ最初に言ったように可能であれば人に教わって欲しいです。
一応現段階でオススメのものをあげておきます。
この二冊が終わったら、これらの本を軸にしつつどんどん問題を解いてください。
内容を定着させるために同じようなテーマの問題を沢山解いた方がいいので複数冊買うのも全然ありです(数学はテーマ毎に勉強するのが鉄則)。
ついでにオススメの授業についても触れておきます。初学の方には、つっきー先生のものや、たにぐち先生のものがオススメです。一通り学習してきた方には小山先生の統計的な推測の攻略がオススメです。
この単元でも小山先生の良さは遺憾なく発揮されています。先生が式や状況をどう解釈しているのか、どう頭の中を整理しておけばいいのか、知識の使い方、着想の仕方、解く時の注意点、言語しにくいことの明文化など、1人ではしにくいことについて手厚く扱ってくれています。関連する他の単元の定石をさらえるのもいいです。そして扱っている問題のレベルも教科書より上のレベルなので、今市販では薄い層のレベルで痒いところに手が届く内容になっています。二次試験で出題される可能性がある方は是非受けてほしいです。
小山先生のよさについてはこちらの記事でくわしく扱っています。
教える側の方々へ
できるだけ前の方の内容を説明する時に後ろの内容で関係があるものを軽く紹介した方がいいと思います。伏線をはっておく感覚です。具体的にいうと関連する用語や使用場面についてです。そうすることで、難しい概念に触れる際馴染みがある分かなり理解しやすくなります。
難しい用語や誤解しやすい用語があるので、一度出てきたものも繰り返し何度も丁寧に説明したほうが良いと思います。この単元は前の内容を後で使うことが多いですし、用語の理解が特に大事ですので、これを意識的にしておくだけでかなり生徒さんの理解の手助けになると思います。
多くの先生方が分野の導入を概念説明や公式の証明から入ると思いますが、この分野に関してはこの2つがどちらも難しいので、これらを軽めにして問題演習をメインで進めることをオススメします。するとしても公式の証明は教科書に載っている方法、載っている物ぐらいで抑えておくほうが多くの方がついていきやすいと思います。
与太話
手探りで勉強した所も多く、まともに説明できるレベルまでかなり時間がかかってしまいました(4ヶ月近く 2023年の6月〜9月)。統計の教科書やYouTubeやサイト、参考書、一般向けの本、大学の教科書などをも見てなかなか苦労しました。
みなさんはこの記事を参考にしながら、ここまでかからないように上手に学習を進めてください。
お読みいただきありがとうございました。受験生の参考になれば幸いです。ハートをおしてくださると励みになります。
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