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【就活生へ】君死にたもうことなかれ【小噺】

ちょっとした小噺である。

古くはマンモス狩りの成果、時に冠位十二階、後に士農工商とかお城からどれくらい近くに住んでいるか。
そして現代では(主に)学歴で、常に人類は先入観を持つための物差しを脇に差して過ごしてきているのだ。

幸い私自身も、早稲田大学政治経済学部経済学科 学籍番号1A15アアアア-1卒という、世間様から見ればそれはそれはでっかい看板を背負わせていただいている。そして存分にではないがそれをブンブン振り回してきた。
その最たる例が、大学4年生にとって避けては通れぬ「就職活動」、俗に言う"シュウカツ"だった。

最終的には、ありがたいことに東証一部上場の日経コンサル企業に新卒で就職できたのであったが、私の就職活動はお世辞にも頑張っていたとは言えなかった。

・エントリーシートは常に締切1時間前に書き始め、間に合わなさそうなら諦める
・面接予定日の朝目が覚めて、「こんな天気がいいのにスーツを着て面接に行くのはなんか違う!」とドタキャンをして公園でピクニック
・面接にて、最後に「これから卒業まで何をしたいですか?」と聞かれた際には、「料理のレパートリー増やしたいっすね!あとバンド頑張りたい!」と言い放つ(落ちました)

・・・とんでもない就活生である。自分の息子がこれなら笑ってしまう。
内定が出て就職した会社の役員面接では、学生6名VS役員2名の集団面接にも関わらず一人だけ変化球を投げられた。
自身の強みを聞かれた際、「素直さです!」と言っていた私に対して、
面接官は「もし月が人工衛星って言われたら君は信じるの?どうするの?」と質問してきたのだ。
意味がわからない。

6名の学生が順番に質疑応答をしていて、最終6人目だった私はその時点で約40分ニコニコしているだけの地蔵だった。
そんな私に対して、変化球を投げてきた面接官に向かってこちらが投げられる球は質問か匙しか考えられない。
賽は投げられたのだ!心も決まったのだ!

匙を投げることにした。

前述の、「もし月が人工衛星って言われたら君は信じるの?どうするの?」と言う質問に、私は「ええ!そうなんですか!?って言います。でももう少し技術が進んだらその内自分で見に行きたいと思います!」と返した。
結果、面接官とその他の学生5名の爆笑を誘うことができた。

その後、私に残ったのは笑いを取った手応えと最終面接への切符だった。
役員面接の手応えはなかったのであった。

振り返ると、就職活動を通して面接において最も意識していたことは、
「どれだけ面接官を笑わせるか」であった。
これは親にも当時の彼女にも言えなかった。後輩から「面接の時何に気をつけてました?」と聞かれた時には「笑顔でいることと質問をちゃんとすることかな!」とそれっぽい答えをした。
思えば役員面接が終わった時点で、入社までの道のりは決まっていたのかもしれない。

最後に、結局私が採用されたのはでっかい看板のおかげなのか、面白かったからなのか、はたまたシンプルに就活生として魅力的に映ったのか、それはわからない。
でもこれから就活を頑張る学生に向けてこれだけは言いたい。
「笑わせることは大事である。でも相手は選ぶべきである」
私の就職活動では、内定をもらった会社よりも落ちた会社の方が多かった。
見境なくストイックに笑いを取りに行った結果である。
参考にならない可能性は多分にある。むしろ参考になるところの方が少ないとも思う。でもこんなポンコツ就活生でも、ちゃんと就職し、働くことができたのだ。少しでも勇気や元気を得て、頑張ってもらえると嬉しい。

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