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「新規事業を成功させる PMFの教科書」を読んで

「PMFの教科書」という本を読んだのでその所感とメモ。

PMF(Product Market Fit)とは

比喩として、「PMFが見つかる前は、大きな岩を押しながら山を登っている状況」で「見つけた後は山頂を越えて大きな岩が転がるのを追いかけている状況」というのはイメージしやすい。

また、PMFしているかどうかは、はっきりとわかり、PMFしているかどうかに疑問を持っている時点では、PMFしていないらしい。

PMFしそうかどうかを事前に察知できるようなシグナルもあるが、突然PMFすることもあるそうだ。うーん、結局PMFしてみないとはっきりとした理解はできなそうだ。

PMFせずに失敗する理由

新規事業の各フェーズにおける成功確率が記載されていた。特に、

  • 新規立ち上げに至る事業45%

  • 単年黒字化に至る事業17%

というのは、思っていたよりも高い数字だった。45%も事業化するのだな。

そのうち、失敗理由も12パターン紹介されていた。特に気になったものとして、顧客ニーズを検証せずリリースしてしまうパターン。

スタートアップの撤退理由の多数を占めるのが「市場が存在しなかった」ということらしい。自分たちが作りたいものを、プロダクトアウトの発想でリリースしているパターンだろう。

「必要のないことに時間を使ってしまう」というのも、ありがちで理解できる。ミッション、ビジョン、バリューや組織作り、社内人員とのコンセンサス形成などに時間を取られて、肝心のプロダクト開発や検証がなかなか進まないことがある。

「見せかけのPMFに騙されてしまう」もやりがちだ。社内に業界に対して影響力の強いメンバーが存在したり、営業スキルの高いメンバーによって、サービスリリース直後にポツポツ売れてしまったり、カスタマーからの反響が得られたりすることがある。

そこで、「いける!」と勘違いしてアクセルを踏んでしまい、結果、それほどスケールしなかったというパターンを見てきた。

SNSでの言及数や、プレスリリースの掲載数など「虚栄の指標」を追いすぎてしまうのも同じようなミスだろう。それらが、KPIになっていることもある。

PMFまでの道のり

ジャーニーフィットの話は、この手の本のなかではよくあるものだし、社内でもよく使われる考えではあるので、なじみはある。

でも、実際にそれを実践しているかと考えると、徹底されてはいないなと思う。それぞれをしっかりと検証しないまま、次のフェーズに移ったり、目指してしまっている場合が多い。

ユーザーの課題が存在するか?を検証しないまま、課題解決を考えてしまうパターンは多い気がする。

バリュープロポジション

バリュープロポジションとは?

  • 自社が提供できて

  • 競合他社が提供できない

  • 顧客が求める独自の価値

ということらしい。

「ユーザーが求めているものと、自社の強みは一致しているか?」
「他社が提供できない、自社独自の強みを提供できているか?」という点を考えると良い。

バリュープロポジションを考える順番としては、

  1. 顧客が望んでいる価値

  2. 自社が提供できる価値

  3. 競合が提供できない価値

の順が望ましいとのこと。まずは、ユーザーのニーズが最優先ということだ。先に書いたように、スタートアップの撤退理由が「市場が存在しなかった」ということを考えても、その優先度にも納得できる。

それらを考える際も、自分たちの作りたいという思いや、既存のアセットに引っ張られないように気を付けること。それに、自分たちのキャパシティを越えてしまい、結果的に価値提供できていない状態にならないように気を付ける必要がある。

誰がビジネスを立ち上げるべきか?

新規事業を誰が旗振り役になって進めていくのかは、よく議論される点だと思う。本書の中では、「ビジネスの経験が10年程度あり」「その人が経験がある産業で」立ち上げるべき、と強調されている。

その事業に対して、もっとも解像度高く携わることができる人、ということだろう。そうなると、社長本人や経験豊富な経営メンバーになることが多いのかもしれない。

解像度を高めるための方法も紹介されている。

  • 自分で自社サービスを使ったり、競合他社のサービスに触れる

  • 見込み客やユーザーにインタビューやアンケートを取る

  • その道のエキスパートを仲間にする

  • ペルソナやカスタマージャーニーを作る

といった、ある意味、当たり前のことが書いてる。が、当たり前のことがやれてないことが多いということだろう。自社サービスをぜんぜん使っていない社内メンバーや、身銭を切って他社プロダクトを触っていないこともしばしばある。客の立場に立てていない、というのはよくありそうで、耳が痛いところだ。

「解像度向上に責任を持つ人や部署を置く」というのは、おもしろいなと思った。実際、自分の場合、少ないメンバーで兼任しながらプロジェクトを進めるケースが多く、そういう人を専任で用意機会はなかった。CSやCXのような部門で、それをになってもよさそうだ。

PMFを測る指標

NPSは使ったことがあるが、ショーン・エリステストは使ってこなかった。試してみてもよさそうだ。「このプロダクトが使えなくなったらどう感じるか?」とユーザーに聞いて「とても残念」~「無回答」の4段階で答えてもらうというもの。とても残念が40%を越えたらPMFしていると判断できるらしい。

とはいえ、PMFしているかどうかは、指標で測らずともハッキリと実感できるのではなかったのか?

NPSについては、「日本でやると数値が低くなりがち」という話も聞いたことがある。PMFを目指すにあたって、必ずしも指標を追う必要はない気もするが、何かしら目安や目標があったほうが安心するのも確かだ。

PMFは1度で終わりではない

1回PMFすれば安泰というわけではなく、ビジネス状況の変化に合わせて、繰り返しPMFを目指していく必要があるそうだ。1度のPMFでも難しく感じているが、それを繰り返し行うとなるとなかなかハードルが高そうだ。

方向性として

  1. 既存セグメントで新規獲得する

  2. 既存セグメントにアップセルする

  3. 新しいセグメントに広げる

  4. クロスセルする

というものが挙げられる。

既存セグメントは、すでにある程度実績もあって全体像も見えているわけだから、投資効果が見えやすい。受注までのプロセスを改善することで、取りこぼしていた客層を狙う。

新規セグメントは、「イノベーター理論」でいうイノベーター層に訴求していたものをアーリーアダプター層にシフトするなど、ユーザー感度で切り分けてもいいし、「業界を変える」「地域を変える」などの切り口でもいい。

状況にもよるが、アップセル・クロスセルを狙うのは、そのあとになるように思う。ユーザー数やセグメントが広がる前に、価格を上げたり、機能を拡充していくのは、ユーザー層が固定化したり、不必要な機能をつくってしまって運用負債が増えてしまう恐れがある。

以上

長くなったので、今回はいったんここまで。これに続く、本書の9章は具体的な会社の事例をもとに説明されていて、興味深そうだ。また別途まとめたい。


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