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欧風家庭料理《ズッキーニの肉詰め》のつくりかた

ころんと丸く、可愛らしい形をしたズッキーニがあります。その名も、「丸ズッキーニ」(見たまま)。最近はたまに店頭でも見かけるようになって、形が面白いので野菜好きな方なら思わず手が伸びるかもしれません。

この丸ズッキーニ、品種にもよりますが、ふつうのズッキーニよりも果肉がやややわらかく、皮が薄いものが多いようです。なので今回のように、特徴的な形をいかして詰め物をして焼き上げるのが定番だとか。


ヨーロッパ的「肉詰め」の作り方

ところで野菜の肉詰めというと、欧風料理ではちょっと不思議な作り方をすることがあります。

中に詰める「肉だね」を、わざわざ一度、しっかりと炒めておくのです。

この作り方を知った時、最初は少し疑念が生じました。日本人の感覚からすると、「肉だね」はハンバーグのように粘りけが出るまでしっかりとこねて、それから野菜に詰めて焼き上げるほうが、ジューシーに美味しく仕上がるようなイメージがあったからです。

「一度炒めてから焼くなんて、仕上がりがパサパサになってしまうのでは…?」

「手間だってかかるのに、なぜわざわざ炒めておくのだろう?」

しかしそんな疑問は、実際に料理をひと口食べてみると、一瞬にしてかき消されました。驚くほどに、美味しかったからです。

今回は、そんな美味しい【ヨーロッパ的肉詰め】を、丸ズッキーニを例に作ってみたいと思います。

もしかすると、古くからお肉を食べてきたヨーロッパという土地ならではの知恵だとか、生活に根ざした調理の仕方というものが、そこから少し見えてくるかもしれません。


材料

【2人分】
丸ズッキーニ 2個
あいびき肉 200g
玉ねぎ 1/2個
にんにく 1片
マッシュルーム 2個
もち麦(茹で または 蒸し) 40g
トマト 1個
オリーブオイル 大さじ1/2
シュレッドチーズ 適量
[A] パン粉、牛乳 各大さじ2
[B] トマトケチャップ 小さじ2、オレガノ 少々 


レシピの流れ

作り方① 野菜を切る
作り方② なかに詰める材料を炒める
作り方③ ズッキーニに詰めて焼き上げる


 作り方① 野菜を切る

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まずは、今回のメイン野菜である丸ズッキーニから。

上部を包丁で切り取り、中身をスプーンでくり抜いて、取り出した果肉はみじん切りにします。ヘタの部分はあとで蓋にするのでくれぐれも捨てずに。

そして、玉ねぎ、マッシュルーム(または 椎茸でもOK)、にんにくもみじん切りに。トマトだけは、付け合わせにするので厚切りにしておきます。

のちほど使うパン粉と牛乳も、ここで合わせてやわらかくしておきます。


 作り方② なかに詰める材料を炒める

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続いて、今回の最大のポイント、なかに詰める具材を炒めます

といっても、やり方はそう難しくありません。オリーブオイルでにんにくと玉ねぎを炒めたら、あいびき肉、くりぬいておいたズッキーニの果肉、マッシュルーム、もち麦という順番で、具材を次々に加えていきます。

きつめに塩・こしょう(分量外)をして、肉の色が変わるまで、わりと強火で香ばしく炒めたら、トマトケチャップとオレガノで味つけ。

これでもうできあがり。

なお、もち麦というのは、完全に私の個人的好みで入れている具材ですが、あの独特のぷちぷち感がひき肉にはとてもよく合います。

なければ押し麦などでも代用可能です。押し麦とひき肉は、北欧料理などでも見かける組み合わせですが、ひき肉の脂を適度に吸ってくれたり、食感がよくなるなどのうれしい効果もあります。


 作り方③ ズッキーニに詰めて焼き上げる

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中身が炒めあがったら、ふやかしておいたパン粉と牛乳を、ここではじめて混ぜ入れます。

これが、ヨーロッパ的肉詰め最大のポイント。つまり、パン粉と牛乳だけが生のままの状態なので、これからオーブンで焼いても水分やふっくら感がしっかりと生み出されることになるからです。

できたら、それを丸ズッキーニのなかに詰めていきます。オーブンで焼くと少しかさが減るので、なるべくぎゅうぎゅう、山盛りに。

丸ズッキーニの大きさによっては、ここでフィリングが少し余りますが、あとで一緒に焼いてしまえばいいのでひとまず気にしなくて大丈夫。最後に、切り取っておいたズッキーニの上部を蓋としてのせて、180度に予熱したオーブンで15~20分ほど焼きます。


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時間がきたら、ズッキーニの蓋をはずしてシュレッドチーズをのせます。周りに付け合わせのトマトを並べ、その上に余ったフィリングを散らして、さらに10分ほど焼けばできあがりです。


肉と野菜、それぞれを引き立たせる工夫

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こうして完成した、丸ズッキーニの肉詰め。

食べてみると、うつわとなる丸ズッキーニはほとばしるようにジューシー、野菜本来の味わいがしっかりと感じられる美味しさ。

そしてなかに詰めたひき肉は、香ばしくてしっかりとお肉感があり、とてもパンチがあってこちらもジューシー(しかも、チーズまでのっている)。

日本のピーマンの肉詰めのように、野菜のなかで蒸し焼きにされた肉だねのふんわりした美味しさや一体感もたまらないものがありますが、こちらには、うつわとなる野菜と中身のひき肉がそれぞれに完成された美味しさを持っていて、それが重なり合ってさらに深い味わいへと至る、そんな魅力があります。


ヨーロッパの食文化と肉詰め料理

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ところでよくよく考えてみると、すでに調理のされているお肉を野菜に詰めて焼くだけというのは、ヨーロッパの食生活にとってはごく自然なことだったのかもしれません。

「前日に作った肉料理が少し残ってしまった」、「多めに作って焼いておいた肉が余っていた」なんていうこと、お肉をよく食べる(しかもかなりの量を作って)毎日のなかではいかにもありそうなことですよね。それを考えると、今回のような料理の作り方にも、どこかうなずけるものがあります。

それに、日本でも人気のパスタ「ボロネーゼ」などもそうですが、ひき肉を香ばしく焼きあげたものって絶品なのですよね。そうしたお肉の扱いを見ると、やはりヨーロッパの人はひき肉の美味しい食べ方をよく知っているな、というのをしみじみ感じます。

いつもの作り方とは少しちがうけれど、とても美味しいヨーロッパのこんな肉詰め料理。

今の時期なら、丸ズッキーニでなくても、ふつうのズッキーニやトマト、なすなど、さまざまな夏野菜で美味しく作れると思います。ほとばしる野菜の美味しさと、お肉ならではの旨みと香ばしさ。夏の夜のディナーにピッタリの、幸せなひと皿です。


▼詳しいレシピはこちら。



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庭乃桃 にわの・もも | 料理・食文化研究家、文筆家
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