写真整理 XVIII 〜懐かしの台湾写真〜
どうも西尾です。
昨日は天気予報では晴れの予報でしたが、雲が多く思いのほか寒い1日でした。
今日は未だマシかなと思っております。
写真整理 XVIII
〜懐かしの台湾写真〜
私の乗る特急自強号は暗闇の中をひたすらに走り続ける。
車内を見渡すと寝ている人がいてるのだろうか。
鼾が聞こえてくる。
美味しそうな匂いもしてくるので夜食に何かを食べている人もいてるのだろう。
私は車窓に目をやるも車内の明かりが反射して外の様子は窺えず。
時刻を確認すると既に午前0時を回っていた。
私も眠りにつくことにした。
座っている座席のリクライニングを少し倒して眠る。
眠ると言っても声をかけられたりすると直ぐに移れるようにしなければいけない。
そう思い、少し目を閉じては目を開けて、また少し目を閉じる、という具合に眠る素振りをしていた。
しかし、そんなことをしていると返って逆効果となってしまい、完全に目蓋が閉じてしまい、ついには眠ってしまった。
どれくらい眠ったのかは分からない。
気づいた時には花蓮の駅に着いていた。
花蓮に着いたことを知らせるアナウンスが流れてきた。
ホームには若干の乗客が見える。
ああ、ついこの前まで滞在していた花蓮、直ぐそこにイタリア人たちがいてるのだなと思うと彼らにもう一度会いたくなった。
しかし私は台北に戻る途中であって、彼らに会えないことへの寂しさが込み上げてきた。
電車はまたゆっくりと花蓮を出発した。
私は窓ガラスに額をつっくけて花蓮の街の様子を目に焼き付けようと必死だった。
夜中の花蓮は既に眠っていた。
街灯の灯りだけが灯っている。
私は台北で朝を迎える、花蓮では花蓮の朝を迎える。
皆にそれぞれの朝があるのだ。
私は自分に言い聞かせた。
電車の速度は徐々に速くなっていった。
既に車窓の景色も分からない。
漆黒の世界であった。
私はまたもや眠ってしまった。
そして次に目を覚ましたのは宜蘭駅に着いてからだった。
目を覚ましたというより、起こされたと言った方が正しい。
というのも私の座っている座席を予約している人が乗り込んできたのだ。
私は直ぐに飛び起き座席を後にした。
一旦デッキに出て、再度車内を見渡すと座席の6、7割程が埋まっていた。
台東で乗車した時は疎らであったが途中の花蓮と宜蘭で乗客が乗り込んできた。
私は無座であるため座席を予約している人が優先される。
当たり前のことであった。
私は空いている座席は無いか見渡した。
できれば窓側の席がいいなと思い、車内を見渡すと前方に空いている席があったのでそこへ座り直す。
台東や花蓮を出発した直後は旅を思い返して寂しさが込み上げてきたが、今となっては台北まで1分でも長く眠りたいという睡眠欲が勝ってしまう。
座席も確保しこれで眠れると思い、ものの数分もしないうちにまた眠りについてしまった。
次に目が覚めた時には台北への到着アナウンスが流れてくる。
既に電車も市街地を走っていた。
外はまだまだ暗かったが街灯の灯りの他にお店の煌びやかな看板が灯っていた。
コンビニや24時間営業のお店も目に入る。
やはり台湾の中心都市というだけはある。
そんなことを考えているうちに電車は台北駅に着いてしまった。
時刻を確認すると午前4時を回っていた。
電車から降りるとホームにはスーツケースを抱えた人などでごった返した。
思いのほか乗客は多かったようである。
私はスーツケースを抱えた人たちに先にエスカレーターに乗ってもらい、最後の方で改札口を出た。
改札口を出てみると駅のターミナルビルも未だ営業開始前でひっそりと静まり返っている。
ときおり納品業者の人の作業音が響き渡った。
あれだけいた電車の乗客達は既に姿を消していた。
皆、自宅が近所なのか、迎えの車が来ていたのか、タクシーで帰ったのかは分からない。
気が付くと私はだだっ広いビルの中で一人立ち尽くしていた。
とりあえず外に出てみることにした。
外はまだまだだ暗かった。
先程まで雨が降っていたのか地面が濡れていた。
オレンジ色の街灯の灯りは幻想的で暗闇に浮かぶ宝石のように輝いて見えた。
台北に戻ってきた実感が湧いてきたかと言えば、そのようなことは無かった。
何せ辺りを見渡しても真っ暗闇でお店も開いていないのである。
どうしようかと思い再度ターミナルビルへ戻る。
空港へのバスの発着時刻を確認すると午前6時から便があった。
バスの出発は例のシェラトンホテル近くのバス停からである。
何の因果かわからないが旅の最後はシェラトンホテルであった。
時刻を確認すると午前5時を少し回っていた。
ターミナルビルも若干人の動きが見られるようになってきた。
外はまだまだ暗闇に包まれていたが、私もシェラトンホテルに向かうことにした。
ホテルなのでロビーで休憩することができるはずである。
台北駅からシェラトンホテルまでは通い慣れた道だった。
大通りを歩く。
流石にこの時間は歩く人も疎らで車やバイクもそれほど走っていない。
ビルの1階にはサンドイッチの洗礼を受けたセブンイレブンが営業していた。
大通りを進むと地下通路を通る。
この地下通路には毛布に包まったホームレスの人が寝ているはずだったが見当たらなかった。
どこか別の場所に寝床を移したのか、どこへ行ってしまったのか無性にその人のことが気になってしまった。
地下通路から地上に上がり日本統治時代に建てられた建物の前を通る。
その荘厳な姿は暗くても分かった。
通りをさらに歩くと右手に台北のシェラトンホテルの建物が見えてきた。
いつもは途中で左に曲がって路地裏を進みTAIPEI HOSTELへ通っていたが、今日は違う。
TAIPEI HOSTELの受付のタンクトップと短パンのお姉さんではなくシェラトンホテルの受付のお姉さんだ。
最も、宿泊するわけではないので受付に行くことは無かった。
途中で大通りの横断歩道を渡ると、そこには憧れのシェラトンホテルが堂々とした威厳を放っており、私を萎縮させた。
私もその堂々とした威厳に萎縮してばかりではおれず、先ずはバス停の位置を確認した。
バスまでは30分以上時間があったのでロビーで待たせてもらうことにした。
シェラトンホテルのロビーに入った瞬間から格の違いを感じさせられた。
匂いが違う。
ロビーを進むたびに足の裏から伝わってくる絨毯の柔らかさ、ロビーに響き渡る英語や中国を流暢に話している声、ドアマンの対応、椅子のやわらかさ、天井に吊るされた煌びやかな照明、そのどれもが私に衝撃を与えた。
私はまるでプロのボクシング選手を相手に無謀にもリングに上がってきた挑戦者のようで、試合が始まってほんの数秒でジャブを打たれた気分であった。
今までの私が宿泊した宿とは真反対である。
そんなことをロビーで感じながら時間をつぶしていた。
午前6時も回りバスの出発時刻が近くなっていたので、バス停へと向かうと既に数人が列をなしていた。
朝陽も昇り始めて街を行く人や車、バイクの数も格段に増えていた。
バスが到着した。
バスは一般の路線バスであったが未だ座席が空いていたので座席に座った。
バスの車窓から台北の街を眺める。
台北の朝が始まろうとしていた。
花蓮や台東の朝とは違いやはりどこか忙しない朝のように思えた。
一般の路線バスであるため、停留所にも頻繁に停まりその度に乗客が乗り降りする。
これが台北の朝の日常かもしれないと思った。
別に特別なことではない日常の光景で、それは台北でも日本でもどこでも一緒である。
日常の光景を見れることが幸せに感じた。
路線バスは約1時間かけて空港に到着した。
空港に到着した時には雨が降っていた。
朝に見た朝陽が嘘のようである。
まるで私の台湾を離れることへの寂しさを代弁してくれているようであった。
空港のターミナルビルに入るとチャックインカウンターにも既に列が出来ており多くの人が並んでいた。
私も出発の案内表示を確認してチャックインカウンターに並んだ。
私が乗るのは往路と同じくジェットスター航空の関西国際空港行きである。
往路と異なる点は、この便はシンガポール発台北経由の関空行きであったため既に機内にはシンガポールからのお客さんが乗っていたことだった。
チャックインも済ませた私は少しの間だけターミナルビルを散策して、手荷物検査や出国審査を済ませた。
搭乗口へ向かう前にお土産物屋さんでお土産を購入した。
この時に初めてパイナップルケーキというものを購入したが、これにはハマってしまい大好きになった。
搭乗口で待っていると搭乗する予定の飛行機が到着した。
ボーディングブリッジが接続され台北で降機する乗客が降りてきた。
飛行機の周りでは荷物を降ろしたり、燃料を補給したりする人や車が忙しなく働いている。
準備が整い私たち搭乗する乗客の案内も始まった。
ボーディングブリッジを渡り機内に入ると既にシンガポールからの乗客が座っていた。
乗客の肌の色や服装、匂い、話し声から、まるで東南アジアに瞬間移動をしたかのような感覚になった。
私は狭い機内を後方へと進み3人がけ座席の窓際に着席した。
隣も前も後ろも人が座っており、往路とは大違いであった。
外を見ると雨の中で出発に備えて準備をしていた。
長いようで短かった台湾への一人旅。
薄いようで濃い内容が詰まった旅。
人の温かみに包まれた旅。
行き当たりばったりの無計画で進んだが最終何とかなった旅であった。
私の搭乗した飛行機は扉が閉まりプッシュバックを開始した。
鈍い重低音が響き渡り、エンジンが動き出したことが分かった。
窓を見ると地上の係員がこちらに手を振ってくれた。
これがまた日本の空港で見るような感じではなく意外とあっさりとした感じで面白い。
飛行機は誘導路を進み滑走路の手前で待機している。
何便か着陸した後に出発のアナウンスが入った。
滑走路に入るとエンジンが大きな唸り声を上げて加速を始める。
強い振動が伝わってくると同時に機体は地上を離れた。
雨の中でグングン上昇を続ける。
私は窓に張り付いて地上を見下ろし、台湾への最後の別れを述べた。
ありがとう台湾、また会う日まで。
直ぐに雲の中へ入ってしまった。
雲の中を少しの間飛び続けると雲から出て水平飛行へと移った。
私はこれにて帰国の途についた。
水平線は遥か遠くまで続いていた。
完。
以上になります。
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