荷方邦夫

金沢に住む心理学の研究者、エッセイ・心理学やデザインについての記事・食べもの関連など雑多に公開。

荷方邦夫

金沢に住む心理学の研究者、エッセイ・心理学やデザインについての記事・食べもの関連など雑多に公開。

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最近の記事

コンサート記録 「ミニ・キーボードによる新しい音楽の世界」(2023.08.11:金沢ふるさと偉人館)

 よく知る田中吉史先生が主宰する「北陸の新しい音楽」による演奏会が行われた。すべて初演の作品発表会でもある。かねがね活動に興味を持っていたので拝聴。  トイピアノやポータブルキーボードなど、「小さな鍵盤楽器」のバリエーションも多い、YAMAHAのポータサウンドやCASIOのSAシリーズなど、良い音源をもつものも多く、おもちゃ以外の活用も少なくない。現代の現代音楽家がこれをどうするのか楽しみであった。40人の定員だが、会場には100人くらいいそうな感じ。北陸だって現代表現への関

    • 「ベタな」デザインはウケる? 【デザインの心理学(2)】

       良いデザインとは何かと聞かれると「シンプル・イズ・ベスト」という答えが返ってくることは少なくない。わかりやすさとか、見たり使ったりする時にすんなり受け入れられることはデザインの中で必須と言われることも多い。その見方からすれば、「ベタ」なことはデザインの中で重要な要素であるように思われる。  「ベタ」であること。この正体として思いつくのは「流暢性」とよばれる性質である。処理流暢性ともよばれ、知覚や記憶、言語などの認知的処理がスムーズに進むことを指している。美的感情の研究で有名

      • 手で感じるデザイン 【デザインの心理学(1)】

         デザインといえば、とかく「見た目」についての話が多い。もちろんデザインの実際を考えればどうしてもそうならざるを得ないのだが、できれば視覚以外の話もしてみたい。今回は、デザインに関わる「手」の話。触覚によってわれわれが受ける印象についての研究についてである。 クリップボードという製品がある。街角でアンケートに答えたりするとき、アンケート用紙の下敷きとなり、クリップで用紙を挟んでいるあれである。アッカーマンら(Ackerman, et al., 2010,)は街中を歩く人に声

        • 中学浪人を経験した教育研究者の個人的回想(5) ー中学浪人のその後ー

           大学で教えていると,「実は私も中学浪人したことがあるんです」という学生がごく僅かながらいる。今でも少ないながらいるのだが,彼らをみると,割合明るく「仲間」として声をかけてくれることが多い。その意味では,中浪という経験は決してネガティブなものでもないな。と思う。  かくして私は高校生となった。入学してすぐの頃は「1歳上」としてナメられたくないという思いもあったし,知った後輩もいたし,1年間の「気合いの入ったクラス」からの気負いもあったし,まあ肩で風を切って歩いた。これもじき

        • コンサート記録 「ミニ・キーボードによる新しい音楽の世界」(2023.08.11:金沢ふるさと偉人館)

        • 「ベタな」デザインはウケる? 【デザインの心理学(2)】

        • 手で感じるデザイン 【デザインの心理学(1)】

        • 中学浪人を経験した教育研究者の個人的回想(5) ー中学浪人のその後ー

        マガジン

        • デザインの心理学
          2本
        • 受験エッセイ
          5本

        記事

          中学浪人を経験した教育研究者の個人的回想(4) ーひたすら問題を解き、高校入試を受けるー

            熊本の夏は暑い、何しろ6月から9月の半ば過ぎまで熱帯夜が続き、10月初旬の運動会さえ30度を超える。しかし冬は驚くほど寒い。要は京都によく似た気候で、朝は-2〜3度まで平気で下がる。  「夏の暖房、冬の冷房完備」の松楠塾はもちろん寒く、室内のバケツの水が凍ってしまう。おまけに「南国」熊本の学校は小学校でも中学校でも暖房がない(昭和55年頃から経費節減もかねて撤去された、子供には選挙権もないし、ひどいもんだ)。鉄筋の学校ならいざ知らず、木造モルタルの塾は冷える。問題を解く

          中学浪人を経験した教育研究者の個人的回想(4) ーひたすら問題を解き、高校入試を受けるー

          中学浪人を経験した教育研究者の個人的回想(3) ー中学浪人生の日常生活ー

          前回(第2回)のエントリは https://note.com/nikata920/n/n7a7f227d69f2 第1回は https://note.com/nikata920/n/n7b898ebe83b6  高校生でもなく、さりとて中学生でもない中学浪人。15・6歳の若い子はどういう一年間を過ごすのか。  4月といえばまだまだお互い探りながら進んでいたし,勉強のやり方のペースも模索しながらということもあって,それはそれはあっという間にすぎてしまう。本格的な浪人は5月から

          中学浪人を経験した教育研究者の個人的回想(3) ー中学浪人生の日常生活ー

          中学浪人を経験した教育研究者の個人的回想(2) ー全日制高校受験予備校の指導とはー

           前回のエントリはhttps://note.com/nikata920/n/n7b898ebe83b6  とにかく、「中学浪人」として1年間、予備校に通うことになった。平成元年高校入試の当時、熊本の高校の受験教科は公立でも私立でも5教科中心。通うことになった松楠塾、教科担当の先生は5人。  A(社会)我が1組担任。なぜか東大物理学科卒。  M(数学)隣の2組担任、慶応卒、ニックネームは○デラン。スを付ければ分かりやすい。  M(理科)○デランとは違い、こちらは白髪。早稲田卒

          中学浪人を経験した教育研究者の個人的回想(2) ー全日制高校受験予備校の指導とはー

          中学浪人を経験した教育研究者の個人的回想(1)

           このnoteは、ちょうど平成に入る35年ほど前に、高校受験に失敗して一年間浪人生を送った筆者が、改めてその記録を残すものである。元になっている記事があり、筆者のブログのエントリ(http://nikata.cocolog-nifty.com/diary/)の「中浪なれど波高し」を再録・再構成したものである。基本的に個人的回想だが、noteに再録するにあたり、若干の加筆・修正を行うことにした。  昭和47年生まれの荷方は、高校生以降48年生まれとして青春を送っている。なぜか

          中学浪人を経験した教育研究者の個人的回想(1)