教科書もない所からの猛勉強(18)
☆過去の話を少しずつ書いています
17歳の私は大検を受ける決意をし定時制高校を退学します。私には大学に入った知人などがおらず、自分で考えて行動するしかありません。大学のことを知っている人を探す過程で沢山の人に相談しました。その時ほとんどの人にこう言われました。
「絶対無理や。中学も行ってないのに大検が受かるはずない。めちゃくちゃ難しいねんぞ。おまえが受かるはずないやん。」
こうも言われました。
「大学行くなんて絶対無理。学校で働くのなんてあり得んやろ。」
何十人に言われました。散々言われましたが私は全くブレなかったです。なぜなら、自分の心の中は自分にしかわかりません。自分の決意も自分だけがわかっていれば良いと思っているからです。周りから動かされて動いた気持ちじゃありません。自分が動きたいから動いた気持ちです。だからその気持ちを止めるのも自分だけです。
そんな中、昔からずっと一緒に居た友人達だけは私を応援してくれました。ほとんどが私と同じ中卒です。
「セミ採り名人なら絶対なれるよ。協力するから。」
彼らは全員そう言ってくれました。ここで非行の道にまた足を引っ張るような流れを想像しますが、誰1人そんなことをする人間は居ませんでした。なぜ彼らは私のことを自信を持っていけると言ってくれたのだろう。有難い限りです。
そして、その友人達に私は1つお願いをしました。
「自分の力で合格する。でも、実は教科書とか勉強する道具が何もないねん。何人かに聞いていくつかは集まったけど全然足りひんねん。みんなの友だちとかに聞いてもう使っていない教科書をもらって来てくれんやろうか?」
すると友人達は
「ええよ。すぐ集めるわ。」
っと二つ返事で色々な人に声をかけてくれました。そして、一週間で30冊ほどの中学校と高校の教科書が集まります。ある友人は彼女の妹まで声をかけて教科書をもらって来てくれました。この時代は大検が出来たばかりで参考書などもほとんど出ていませんでした。インターネットもほとんどなく勉強をするための物が今の時代のように簡単に手に入らなかったのです。大学を卒業している知り合いは居なくとも私のためにすぐに教科書を集めてくれる強い味方が沢山居ました。友人達に本当に感謝しています。
そこからは毎日猛勉強です。1日10時間は勉強をしていました。なぜなら、教科書をみんなから受け取ってから1か月後に大検の試験が迫っていたからです。教科数が多過ぎてみんなからもらった教科書を必死に次々と何往復も勉強しました。その中で社会は勉強をしませんでした。わざと落としたのですが、大検の後に大学受験があるので2回目の大検で受かるように計画を立てたのです。2回目の大検で社会が受からなかったらそもそもその後の大学など受からないと思ったからです。なので、本番前の腕試しにとっておくのも兼ねて社会をわざと落としました。教科数が多過ぎて時間的なものもあります。家庭科なども入っていましたからね。慣れない言葉だらけである意味家庭科が1番難しかったです。私の持ち時間は大検と大学受験を含めて半年ほどでした。図にしますと、
5月に教科書を手に入れる
6月に大検(1回目)
12月に大検(2回目)
1月から大学受験
このペースでやらなくてはいけませんでした。1日10時間勉強をする必要があります。
そして、1回目の大検は作戦通り社会以外は全て合格しました。2回目で社会も合格します。
今でもどこかに当時の大検の受験票がありますが、その写真がえらいことになっています。イヤホンを付けたままリュックを背負い首にはタオルがかかって写っています。私は写真の撮り方など何も知らなかったのです。仕事はテキヤや水商売や知り合いの鉄工所だったので、履歴書の写真も撮ったことが無かったのです。受付の人がびっくりしていたのを今でも覚えています。
そして、その後大学受験をします。いくつか受けて無理だと判断したので仮面浪人を決意します。確実に受かるであろう大学を受けてそこに通うことにしました。大学の壁の大きさを身を持って知りましたが、仮面浪人をして2年あれば戦えると気持ちをすぐに切り替えました。