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にいがた経済新聞 編集後記・記者コラム

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にいがた経済新聞に掲載した編集後記やコラム記事です。
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記事一覧

【記者コラム】フジテレビ問題が対岸の火事ではない理由

この冬一番の強い寒気で新潟が記録的な大雪、石破茂首相と米国トランプ大統領が初会談、そのトランプは米国がパレスチナ自治区ガザを所有する構想をぶち上げ・・・ ここ数日、注目度の高いニュースが続いたのだが、やはり2025年上半期で「フジテレビ問題」を超えるトピックは、現段階でないと言えるだろう。 フジテレビの幹部社員がタレントに、自社の女性社員を「上納」したのでは、という疑惑について、異例の10時間を超える記者会見。その後にこの事件をスクープした週刊文春が訂正記事。「トラブル発

【記者コラム】インバウンドとアウトバウンド

新潟県妙高エリアで目下の話題は、なんといってもシンガポールの不動産投資ファンド「ペイシャンス・キャピタル・グループ」の大規模開発だ。このグループはこれまでに、斑尾高原スキー場や妙高杉ノ原スキー場、斑尾高原のホテル、野尻湖畔のホテル跡地も取得しているという。これまで取得した土地は約350haになり、投資額は最大700億円規模の見込みだという。 上記の大規模開発はもちろんのこと、目下のウインターシーズンには妙高市のロッテアライリゾートや妙高市の赤倉温泉にも多くのインバウンドが訪

【記者コラム】もう1年前の話

年頭のコラムに何を書こうかと迷った。思いついたのが、2024年の年頭にネットに取り上げられていた「知っておきたい2024年ビジネストレンドワード」的なものを振り返ろうという内容だ。 さて、ちょうど1年前はどんな言葉がトレンドワードに挙げられていたのか。「2024年問題」「オーバーツーリズム」「インクルーシブ」「生成AI」「サステナビリティ変革」「リスキリング」「データドリブン」・・・ 2024年問題については、物流業界の人手不足はもう何年も前から恒常的になっており、企業側

【記者コラム】「架け橋」

上越教育大学(新潟県上越市)に2022年から外国人研究者として在籍していた重慶外国語学院教授の高鵬飛(ガオ・ポンフェ)さんが今月12月7日に中国に帰国した。 新潟県柏崎市の文芸同人誌「北方文学(ほっぽうぶんがく)」の旧知の柴野毅実編集長から私に紹介メールが届いたことがきっかけで、弊社にいがた経済新聞サイトに高さんの日本語による小川未明の文芸評論を今年5月に計6回に渡り掲載した。 高さんは中国の大学で日本語を専攻、卒業後は中国で日本の近代文学を教えるハルビン理工大学の教授を

【記者コラム】新潟フードテックタウン構想に胸躍る

久々に、新潟の経済界に胸躍るニュースだと思う。 食品のサブスクリプションサービスを提供するオイシックス・ラ・大地株式会社(東京都品川区)と、新潟を中心に教育事業と医療・福祉・介護事業を中核に幅広い事業を展開するNSGグループ(新潟県新潟市)が、食文化や食産業が豊かな都市”新潟”が、世界有数のフードテックタウンとなり、フード領域のスタートアップが次々に創出する環境の実現を目指し、2025年以降にコンソーシアムやVC(ベンチャーキャピタル)を設立することになった。 オイシック

【記者コラム】3カ月前のSNSを見てみた

何を話題にしようかと思ったが、やはり斎藤元彦氏が再選を果たした兵庫県の出直し知事選に触れずにはおけまい。 詳細については割愛するが、流れは多くの読者がご存じだろう。ふたを開けたらほぼゼロ打ち(開票率0%で当確)の10万票差をつけて斎藤氏が圧勝。新潟にいて、この間に兵庫県で何が起こっていたのかは肌感覚ではわからないが、県議会全会一致で不信任とされ失職した知事が圧勝で再選を果たす状況というのは、やはり既存の選挙に対する考え方では割り出せなかった。 ワイドショーの司会者は結果を

【記者コラム】亡国の総選挙、勝っても負けても大増税へ?

本日10月27日は第50回衆議院議員選挙の投開票が行われる。巷では「政権選択選挙」と言われ、自公連立政権が過半数(233議席)を維持できないのではないかと目されているが、ふたを開けて果たしてどうなるか。自公が大敗し石破内閣退陣という事態になれば、戦後最短命内閣となるかもしれない。過半数を少し下回るくらいなら、日本維新の会や国民民主などを連立に入れて政権の体裁を保つかもしれない。いずれにしても「第三極」がクローズアップされるが、どの党も選挙戦を通じて存在感を示すところまではどう

【記者コラム】ペットボトルの水

今年5月の連休明けに、新潟市中央区の開志専門職大学で約50人の1年生を前に特別講義をする機会があった。大学側からオファーをいただき、社内で調整した結果、私が担当することになった。講演内容はメモの取り方や、文章の書き方ということで、私の記者経験が少しでも学生の参考になればと思い、オファーをお受けすることにした。 実は、私は昨年3月に上越市倫理法人会でもネット新聞の取り巻く状況について講演をさせていただいたことがある。その経験もあり、今回の大学講義もお受けしたのだが、結果的に大

【記者コラム】言い分と言いなり

今年2月ころ、新潟県上越市の飲食街・仲町に呑みに行った帰り、高田駅前のタクシーセンターの年配の方と話していると、石川県の能登半島地震に上越市本社のタクシー会社所有のタクシーが呼ばれていて、上越市内のタクシー台数が減っているとのこと。 なんでも、地震保険から委託された調査員がタクシーを貸し切って地震の調査をしているというのだ。その会社は上越タクシー最大手。石川県だけではタクシーの台数が足りず、上越市まで要請がきたという。ある意味、社会貢献でもあり、あまり表に出ていない情報とい

【記者コラム】メディアのデジタル改革とニューヨークタイムズ

新聞の発行部数が減少している、というのは昨今あちこちで話題になっている。一方で、デジタル版が各新聞社の「救世主」になり得るかといえば、現状では「紙」の部数減をフォローしきるまではほど遠いようだ。 日本の新聞社の有料オンラインサービス「唯一の成功事例」と言われる日経電子版ですら、2020年以降デジタル版の有料会員数は完全に伸び悩んでいて、「紙」と電子版の合計購読数は減少の一途。他社の苦戦は推して知るべしである。こうなると「新聞」という形態そのものが、デジタル化に向いていないの

【記者コラム】新潟の暑い夏と糀(こうじ)

俳句で「甘酒」は夏の季語、これをご存じの読者はどれほどいるか。江戸時代、夏の暑い盛りになると町に甘酒売りが姿を見せることから、この姿が夏の風物詩ということになっているのだ。 ここで言う甘酒は酒粕から作ったものではなく、清酒の原料でもある米糀を加熱し糖化させたもの。ケミカルなところがない自然な甘味の糀甘酒は、冷やして飲んでも美味い。ノンアルコールの自然食品なので、身体にはすこぶる優しいし、もちろん運転などにも差し支えない。 江戸時代、夏に甘酒売りが出たのも、糀の甘酒が疲労回

【記者コラム】 変化する犯罪者たちの背景

新潟県警によると、2024年5月末の新潟県内での特殊詐欺被害は、被害件数が71件で前年同期比で1件減少した。また、被害額の合計は2億5,961万円で、前年同期比で1億5,909万円増加した。 上記の数字は、2024年5月末の数字なので、2024年7月現在の被害件数・被害額はともに増加している。 特殊詐欺と一言でいっても、種類は様々である。「オレオレ詐欺」、「架空料金請求詐欺」、「還付金詐欺」、「SNS型投資詐欺」、「ロマンス詐欺」など手口を挙げればキリがないほどに多種多様

【記者コラム】高校生との出会いが教えてくれたこと

7月10日、十日町総合高等学校の講堂に集まった120人の2年生たちの前に、弊社の伊藤記者が登壇しました。テーマは「取材のしかた」。生徒たちの真剣なまなざしに、伊藤記者も気持ちが引き締まりました。 この講演は、総合探求学習の一環として依頼されたもので、夏休み期間中に企業へのインターンシップを行い、その際にインタビュー取材をし、夏休み後にレポートにまとめて発表するという課題が背景にありました。こうした生徒たちの学びをサポートするため、「取材のしかた」と「レポートのまとめ方」をプ

【記者コラム】怒りのアントレプレナー

今週、新潟大学のとある授業を取材した。アントレプレナーシップ関連の授業で、その日は県内ベンチャーの社長を招いての講義だった。ゲストは、マイクロブルワリー・沼垂ビールの高野善松社長。現在、レトロなまちとして人気が再燃した沼垂の、立役者の一人でもある。 高野社長は講義の中で「起業を決めたときの想いや動機、その時の不条理や悔しさ、問題意識がベンチャーを立ち上げるエネルギーとなる。実は、それが一番大事」だと熱弁した。こうした話を改めて聞き、思ったことがある。 起業を志す学生に話を