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すべてが誤差の範囲

母は49歳、父は78歳、祖父母は76歳で亡くなっていて。義母は90歳だったけど、10年以上介護生活だった。一緒に暮らした元気な80歳以上を知らないので、現在76歳の夫が年を重ねていくのを祈るような感じで見ている。

テレビや新聞等で元気な80歳以上の方々の様子を紹介されると、うれしくなる。まだまだ大丈夫だと。

元気な89歳のお話しです。

じい散歩   藤野千絵

新平は89歳。毎朝45分間の体操をし、朝食はヨーグルトきなこ、すりごま、干しぶどう。梅干し、炒った米ぬか、はちみつ。エピネと胡蝶蘭の手入れをしたら、じい散歩に出かけます。

同郷の妻栄子は、88歳。まるまるとした身体で少し現実と違う世界にいるときもあり、新平が散歩に行くたび浮気を疑います。

彼らの長男は、高校中退後、ずっと引きこもり。次男は自称・長女。末っ子は事業に失敗して借金まみれ。

新平家族の日常が、ユーモラスに飄々と描かれてます。

妻に対して、淡々としているのだけど長年連れ添った深い愛情が感じられ、お茶目なところも、何をやっても憎めない感じがします。自分の父親がこうだったら、おもしろいけど大変。

「今なら、なんでも許せそうな気がする。時間ってすごいね。」という50歳の次男(長女)に対しての新平の心持ちが印象的。

89歳ともなると、実際そこに人がいるのもいないのも、思い出しているのも、妄想も幽霊も、なつかしければそれでいい。すべてが誤差の範囲のように思えて不思議だ。

妻が認知症でも、子どもたちが「バカ」「オトコオンナ」「デブ」でも
「誤差の範囲」と思えるのもやはり、生きてきた時間だ。

若いときは、誤差が許せなかったこともあるけど許容範囲が広がっていくことも年を重ねることのいいことのひとつかもしれない。

新平の散歩コースも楽しめます。自宅の椎名町から池袋までの喫茶店、建築物、すべて実在していて馴染みがあるところです。三原堂、タカセ、ロサ会館…。

散歩ができるということは健康で時間があってしあわせなこと。
物事を「誤差の範囲」と捉えることができるような心持ちで
散歩したい。