色彩が未来を導いてくれる
スコットランドのグラスゴーのサッカーチーム、『セルティック』は中村俊輔選手が所属していたこともあり現在も古橋亨梧選手ら日本人選手が多く活躍していますがカトリック教徒が多い、というのは知らなかったです。プロテスタント教徒が多いのが、『レンジャーズ』でこの2つのチームのファンの間では対立が激しいようです。
グラスゴー大学は、『ハリー・ポッター』のホグワーツのモデルといわれていて、ニッカウヰスキーの竹鶴政孝さんが留学していたところでもあります。
グラスゴー効果(Glasgow effect)という言葉もあり、他のヨーロッパやイギリスの都市と比べて、グラスゴーの平均寿命が異常に短い現象のことで、考えられる原因として、飲酒習慣、人口過密、過剰な都市化、貧困などといわれています。
グラスゴーが舞台の小説なので調べてみました。この物語でもサッカーチームと、カトリックとプロテスタントの対立も描かれていて宗教、社会問題等スコットランドの特異性も描かれています。
シャギー・ベイン ダグラス・スチュアート
アルコール依存症と貧困、ヤングケアラーと憂鬱で重たいのに凛とした美しさがある不思議な物語だ。どろどろとした汚れた場所で、もがき生きている姿が迫ってくる。彼らのいく方向がどうかこれ以上ひどくならないように、明るい光がさすようにと祈るような気持ちで入り込んでいく。
この陰湿な物語の中の美しさのひとつが色彩だ。色の描写がぽつり、ぽつりと効果的に現れる。
美しいのに不吉で惨めだ。不吉で惨めなのに美しい。
もうひとつの美しさは、愛だ。彼らの中には家族の愛が残っている。アグネスは子どもたちに愛情があり、アルコールの入っていないときはアイロンをかけたり、アイスクリームを買ってくれたりするし、シャギーも母親が好きだし、兄のリークと姉のキャサリン、シャギーの異父兄弟の仲でも愛情や共感がある。
「ぎりぎりのところで母親失格でない、毒親ではない(訳者あとがきより)」
ここも愛と強さを感じて好き。アグネスの男と酒に対する執着は愛なのか、とも思うけど、それはシャギーも同じかも。どちらにしても美しさがあるけど。
作者の自伝的小説というならば、シャギーはデザイナーとして活躍しブッカー賞を受賞し、「すばらしく生きている」ということでそれがうれしい。この小説にはきっと希望がひろがっていると思える。
色が未来を導いてくれる。
はじめての企画#本代サポートします に参加してくださったMrs.chocolateさんが購入された本です。チョコさんからこの本を譲っていただきました。
わたしにもブルーハーツの『リンダリンダ』が聴こえてきました。
ありがとうございました。