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小説のようなもの

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2022年10月の記事一覧

怖いもの知らず

すっごいわかる。
怖いんやろ?
わかるわー
あれやろ、なんかこう、ぼんやりと
そこに幽霊でもいそうな感じやろ?
そうそう。そのまんまや。
お化け屋敷と一緒や。
あんな。わかるぅ言うてるのきっとオレだけじゃないで。
ほぼみんな思っとる。
なんでって、そりゃあ、怖いもの知らずなんて言葉があるってことはさ、大体の人怖がってるってことやん。
怖いもの知らずがレアってことやん。激レア。
全然おらんのよ、きっ

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呉服

50%Offに騙された。
私の心が騙された。
高いけど在庫切れのあっちが欲しかったんだけど、こっちのほうがオシャレな感じするし絶対いいと思った。
いや、思わされた。
いや、わかってる。私の心が弱いのだ。ちょっと欲張ってしまった。
あっちの半分で買えるんだもの。
いや、これはケチか。
私はケチなのか。
いや、でも1つでいいのに2つ買ったから欲張りなんだ。
最近お団子ばかり買ってるから。そうに違いない

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オモチロイ

オモチロイはオモチロイのです。
ちいさいのとキレイなのと一緒になってキレイなのです。

ぼくだってヨウチだけど、オモチロイのです。

オモチロイのはいいことです。

ぼくもおおきくなったらオモチロイ人になりたいです。

朝が来た

「んん...」
朝かなんだかよくわからないけれど、どうやら朝のようで。

目を開けたいと思ったのか思ってないのか、1秒かけて目が開く。

スズメが隣の家の松ではない華奢な木に5羽か10羽かそこらで団らん。

あぁ、音が聞こえる。これは鳥だ。いつもの、ちゅんちゅんだ。うん。んん...

んん...

スマホを持ってしまったから寝返りするのも億劫で、目線だけ天井の角に寝返りしておく。

「さぁ、朝だよ

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僕は犬である

僕は犬である。ぽさ、という。

ご飯をくれたら喜んで食べる。
おやつは最高だ。

蝶々が飛んでれば身体が勝手に追いかける。
すごく楽しいんだ。

昔はそうだった。

だけど、最近僕の親の機嫌が悪いんだ。
前は勝手におやつ食べても笑ってくれたのに怒る。
散歩を期待して尻尾振るのに無視する。
僕が話しかけても顔すら向けてくれない。

きっと疲れているんだ。

そんな時期が何年も続いた。

時間が過ぎて

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今朝

#小説  

手足が寒い。
歩いても歩いても寒い。

30分は歩いた。
公園の赤塗りがはげたアスファルトの歩道をぐるぐると。
頭の中のぐるぐるに合わせて酔っていたんじゃないか。
薄着で鼻水が出てきてる。

なんとなく良さそうだから。おおよそ消極的な理由で走ってそうなランナー。
パーカーのフードを頭に被り、腿は使わず惰性でつんのめってる。
フードに合わせてテキトーに新調した風の安っちいシューズ。
動き

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帰り

「はぁ…」
何やってんだろ。
だるいという気持ちとは反対に、左足は貧乏ゆすりする。

不満を貧乏ゆすりで解消するだけの日々という感じ。
ため息をついて、電車の窓に魂に水分を含ませて、そのまま忘れてきたみたい。

今日も曇りか。星も見えない。
まるで晴れの日が少ないかのように私のネガティヴ号は世界を煙で灰色にしていく。

「ん…」

実家に居たよく居る薄い茶色の芝犬よりも口数が少ない。
あの子、元気

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